MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『ジュリアン坊や』

ベッドパッドを買ってしまった。
CMの、あまりに良さげな表現に
グッときてしまったのだ。

「このベッドパッドには、
 細いチューブが張り巡らされております。
 そのチューブ内を、水が循環しているのです。

 夏の暑くて寝苦しい夜も、
 ベッドパッドは優しく貴方を
 クールダウンさせてくれることでしょう。

 更に、チューブ内を流れる水の水温は、
 お好みの温度に調節できるのです。
 夏はひんやりと冷たく、冬はほんわりと温かく、
 貴方を快適な温度で深い眠りに誘ってくれるのです」

真夏の暑い夜は、
仕方ないから冷房を入れて寝ている。
だが、なかなか快適な温度に調節するのは難しい。
布団をはねのけて眠っていると、
すっかり冷えてしまったりもしょっちゅうだ。

そこへいくと、このベッドパッドなら
常に一定のひんやりを保てるではないか。
こりゃ、素晴らしい、今年の夏はこのベッドパッドで
グゥグゥ安眠間違いなしだ。

説明書をふむふむと読み、ベッドに設置して眠った。

ベッドパッド内にめぐらされたチューブの中を
水が循環している。
その循環のためのポンプがある。

ベッドパッドの電源をオンにし、
部屋の電気はオフにして横になる。
ポンプの動作音が少し気になるのだが、
それよりベッドパッド内の水音が気になる。

寝ていて、下から水音が聞こえるという経験は
今までしたことがない。
だから、ついつい耳をすまして
水音を積極的に聴きにいってしまうではないか。

雨の音のような、
どこかで水漏れが起きているような。

それでも、知らないうちに寝入ってしまった。
確かに、ベッド自体がひんやりしていて快適で、
安眠できたような気がする。

だが、夢をいっぱい見たようだ。
それがやはり、雨が降っているのに
傘がなく濡れてしまった夢だったり、
川の中を潜っている夢だったり。

翌日も夢を見た。
なぜか、おしっこしている夢。
あの水音、ちょろちょろ音が
おしっこを連想させるのだろうか。

夢の中で、私は幼い子供時代に戻っている。
友達と近くの小川で遊び呆け、
流れる川面に向かって皆で一斉放水をした。
3人の小便小僧たちはキャハハと笑いながら、
誰がいちばん遠くまで飛ばせるか
競争になったのだ。

夢の中で私はビリ、まるで遠くまで飛ばせなかった。
だが、それが幸いしたのかもしれない。
かろうじて、お漏らしをする前に目が覚めた。

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2015-04-26-SUN
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