MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『芸春』

皆様、新年明けましておめでとうございます。
えぇ〜、
あとは以下同文でご勘弁を願っておきます。

お正月なんてぇ申しますと、昔はご婦人方が着物、
それも一張羅の着物なんかをお召しになりましてね、
こう、しゃなりしゃなりと歩いて、
「明けましておめでとうございます」
なんてぇもんでしたが、
今はそんなご婦人にはめったに
会えないんでございますよ。

最近のご婦人は、いや、殿方もそうですが、
正月でも着物姿は珍しいもんになりましたね。
正月だって、もう、普段着のまんまでございますよ。

こないだなんか、自転車の前かごに
『防犯パトロール』というプレートを付けた自転車が、
車道を逆走しているんでございますよ。

そりゃもう、何を急いでるんだか、
猛スピードで逆走しているんでございますよ。
前後に小さなお子さんを乗っけたままで、
まるで自分の方が正しいとばかりに、
いつまでも逆走しているんでございますよ。

あたしゃぁ、思いましたね。
せめて『防犯パトロール』のプレートだけは
外した方が良いんじゃないかと。

若い人なんかは、スマホ見ながら自転車に乗ってまして。
時にはメールかなんかしながら
歩道を走っておりますなぁ。
器用なもんだなぁと驚くやら呆れるやら。
あたしゃぁ、曲芸の先生んところに
紹介したいと思いました。

器用と言やぁ、こないだ超能力者に会いましてね。
かなり年配の超能力者ですが、
こう、目隠しを何重にも巻いて、
それでスケッチブックに書かれた文字を
読むってぇわけです。

確かに、あたしが大きく書いた『羊』という漢字を、
別の紙に見事に書きましたねぇ。

で、あたしはもう1回、
今度は小さく小さく『老眼』と書いてみましたよ。
すると、老超能力者は今度も
懸命に透視をしようとしましたよ。

でも、なかなか透視できないようで、
スケッチブックを手に取り、
腕を伸ばして見ようと、いや、透視しようと‥‥。
どうやら、超能力者も年を取ると
小さい文字は透視できないようですなぁ。

捨てる神あれば拾う神あり、なんてぇ申しますが、
あたしの芸をとても贔屓にしてくださるお師匠さんが
いらっしゃいまして。
そのお師匠さんは、なんにつけても厳しいお方で、
芸事はもちろん、
立ち居振る舞いにも厳しい目を向けておられまして。

そのお師匠さんが、いつもあたしをパーティに
招いてくださる。
舞台に上げて一席やらせてくださるんですよ。
こりゃぁ、あたし自身も気づいていない、
あたしの芸の奥深さを
評価されているんではなかろうかと思ったりしまして。

ある日、お師匠さんの飼い犬のボンちゃんの話に
なりましてね。
あたしは、
「やっぱり、ボンてぇのは
 フランス語かなんかですかねぇ」
なんて聞くと、

「いいえ、ぼんやりのボン、ぼんくらのボンよぉ。
 この犬はね、本当におバカでね、
 なんにも芸は覚えないし、
 いつもぼんやりしているのよ。

 でもねぇ、それがまた可愛いのね。
 なんか、そのぼんやりしたところが、可愛いのよ。
 あたしはきっと、ぼんやり、ぼんくらに弱いのね。
 だから、ついつい助けてあげたくなっちゃうのよ」

どうりであたしも愛されているわけだと、
情けないやら、ありがたいやら。

2015年も、愛されるおバカでいようと思っております。
皆々様、本年も『ライフ・イズ・マジック』を
どうぞよろしくお願い申しあげまして、
お後と交代でございます。

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2015-01-04-SUN
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