MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『夢うつつの歌』

なぜだか、作詞家になった夢を見た。
夢の中で何曲もの作詞を依頼され、
私は必死になって歌詞を作り続けていた。
目が覚めても、それらの歌詞の断片を覚えていたので、
思い出すままに書き出してみた。


< 僕を作るひと >

愛しい人よ、いつもありがとう。
君は、僕のすべてを作り出してくれたよ。
いつも、いつだって、想うのは君のこと。
いつも通り、いつもの場所にいてくれて、
あの軽やかな声が聞こえてくるよ。
僕はいつも君のことを想いながら、
いつの日にか君を抱きしめるよ。

もし僕が君のために歌うのなら、
温かい歌を歌いたいよ。
だって、哀しかったり、寂しかったり。
人生はなかなか温まらないものだもの。


< 永遠 >

悲しい時、時間は過ぎてゆく。
辛い時も、時間は過ぎてゆく。
涙がこぼれ落ちる時、時は過ぎてゆく。
幸せに震えていても、時は過ぎてゆく。
そう、時はいつも過ぎてゆく。
僕らの時は、永遠に過ぎてゆくよ。


< 僕と君の世界 >

僕はずいぶんと世界を回ったものです。
世界を見てきて、
あなたに伝えたかったのです。
きれいな場所、哀しい光景、
あなたに伝えたかったのです。
あなたにも、あなたの見てきた世界を
僕に伝えてほしいと思うのです。

僕は世界を回り、
あなたのもとに帰ってきたいのです。
あなたの世界を、
僕は待ちたいのです。


< 真夜中のお前 >

元気でいるかい?
相変わらず、酒、呑んでるか。
この間、お前は電話くれたよな。
あいにく仕事中で、
お前の声を聞きそびれてしまったよ。

いつもお前は、
「別に、電話する気なんて、ないんだよ。
 まぁ、いいや。
 俺はさぁ、もう一度、
 あの日に戻りたいんだよ。
 まぁ、いいや。
 元気でやってるか?
 なら、まぁ、いいや。
 お前は、なんにも知りゃぁしない。
 なんにも覚えてない、薄情なやつだよ。
 まぁ、いいや、元気でいろよ」

確かに僕は、なんにも知らないままさ。
本当に、なにも覚えちゃいないよ。
だけど、お前の声を、いつも、待っているよ。


< ここではない、どこか >

『ここではない、どこか』
新聞に、そんな文字を見つけた。
時々、ここではない、どこかを探している僕がいる。
いやいや、ここが決してイヤなわけじゃないよ。
それどころか、とても好きな場所で、居心地のいい場所。
それでも、遠くのどこかに、
未だ知らない僕の場所があるような気がして。
どこかに、もうひとりの僕がいるような、気がして。
『ここではない、どこか』
僕はここにいて、ここではない、どこかに心を見送る。


< 愛を歌う >

愛を歌っていた人は、
いつしかいなくなった。
幸せを歌った人も、
もう歌声は聞こえない。
失った愛を歌った人は、
いつしか新たな愛を歌っている。
不幸を歌った人は、
いつの間にか幸福をハミングしている。
なにかを愛さなければ、
永遠に失うことはないと歌った人も、
今日は消えない愛の歌を歌う。


< 恋するマジシャン >

もしも奇跡のようなマジックができたなら、
僕は誰に見せようか。
造化のバラが一瞬に本物の一輪の薔薇になり、
どこまでも飛んでゆき、或る人の手元に届く。
それはそれは、美しいマジック。

僕はいつだってそんな気持ちでいるんだよ。
たとえ薔薇が造化になり、
しおれてしまうマジックでも。
もしも面白いマジックができたなら、
或る人に笑ってほしいと願うよ。
たとえ面白くなくてもね、
微笑んでほしいという気持ちは変わらない。


< 遠い痛み >

古い過ちを思い出しています。
「そんなの時効だぜ」
酔った男は、つまらなそうに言う。
それでも、苦い思いは、よみがえってくるのです。
「俺なんか、なにも思い出さない」
酔った男は、なんだか寂しそうに言う。

古い過ちは、僕の生きてきた人生の、
どこかに小さな痛みを残して。
その小さな痛みを癒そうと、今夜も酒を。


短いながらも、
一夜で8曲分の歌詞を書いてしまったらしい。
いつも質より量、粗製濫造の私だから
見てしまった夢なのだろうか。

もし、今夜の夢で作曲家になっていたら、
今度は8曲もメロディを紡がなければならない。
ゴーストライターに頼んだり、盗作したり‥‥。
あぁ、そんな悪夢は見たくない。
今夜は、とても楽な仕事の夢を見られますように。

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2014-04-27-SUN
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