MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『こんな日もあり』


< 押し間違い >

またまたパソコンの具合が悪くなった。
サポート会社に電話して
不具合を直さなければならない。

だが、サポート会社の電話は、
『ご希望の番号をお選びください。
 入会、あるいは退会についてのご相談は、1を。
 パソコンの設定についてのご相談は、2を。
 その他の場合はナントカでカントカを・・・』
などと、延々と音声案内を聞かなければならない。

更には、
『この通話は、今後のサービス向上のために
 録音をさせていただきます』
などと言うではないか。

面倒だなぁと嘆息しながら登録番号を押すと、
なんとオペレーターさんがいきなり出てくれた。
そうそう、音声案内なんて大嫌い、
普通に生の人間が対応してくれるに限る、
なんて喜んでいると、
『お電話、ありがとうございます。
 フリーズドライおみそ汁通販、
 担当の田中でございます。
 ご注文、承ります』

電話の登録ボタンの押し間違いなのであった。


< そりゃ寒いよ >

寒い朝、暖か素材の下着を着て出かけた。
ところが、ちっとも暖かくない。
暖かいどころか、妙にスースーする。

帰ってよく見てみると、
夏のクール素材の下着だった。
色は同じ黒、手触りも同じだ。
なんとかならないものだろうか。


< 泥酔 >

友人からメールが来た。
『僕の友人が結婚します。
 その披露宴のお祝いメッセージ映像に、
 小石さんのマジックをお願いしたいのです。
 新郎が小石さんのファンなんです。
 どうかお願いします』
僕は喜んでOKした。

お祝いマジックを収録する日が来た。
友人は若い女性を伴って現れた。
彼女はまだ大学3年生で、
友人の仕事を時々手伝っているとのことであった。

収録を終えて、友人と彼女とワインを飲んだ。
ちょっと酔っ払って、
2軒目はバーで飲み会となった。
別の友人も合流して、かなり飲んだ。
僕はすっかり泥酔し、よろよろと帰宅した。

翌日、昨夜の飲み会のことを何も思い出せず、
友人に電話をしてみると、
「小石さん、相当に酔ってましたねぇ。
 で、あの若い女の子が
 『芸人になりたい』て言うのを
 思い切り否定してしてましたよ。
 彼女、涙ぐんでましたよ」

えぇっ? 何も覚えてない。
なんと、僕としたことが酔っ払って
人の夢を否定するとは。
しかも、女の子は泣いていたというではないか。

酒の上での大失敗への天罰だろうか、
翌日はひどい二日酔いになった。
世の中のあらゆる不快感が一気に押し寄せ、
そこに自己嫌悪が加わって最悪の状況だった。

僕は、女の子にお詫びのメッセージを送信した。
24時間のうちにお祝いメッセージと
お詫びのメッセージを送ることになるとは。
お祝いメッセージだけで留めておきたかったと、
激しく後悔をした。


< パーティはどちら? >

友人主催のパーティに招かれ、
ホテルニューオータニに行った。

ホテル玄関でパーティ会場を尋ねると、
「はぁ、そのような催しは承っておりませんが」
なんてことを言う。
僕は常々、自分を疑わない性分ゆえ、
「そんなはずはないよ、良く調べてね」

念のため招待状を見ると、
ホテルはオークラだった。
時には自分を疑うべきかもと、
大いに反省をした。


< 新人 >

句会を取りまとめてくれているSさんが、
「小石さん、今回の句会には
 新人が参加してくれます。
 きっと盛り上がりますよ」

僕はすぐに、あれこれと妄想を巡らした。
何事にもセンスの良いSさんのこと、
さぞかし素敵な女性を句会に招いたことだろう。
ワインを優雅に飲みつつ、
マニキュアの輝く指先を頬にあてて句を詠む、
そんな女性の姿を思い描いていた。

当日、新人さんがやってきた。
口ひげを蓄えた、30代とおぼしき青年だった。

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2013-11-24-SUN
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