MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『古いニュース』


新聞がすぐに溜まってしまう。
そりゃそうだ、毎日、朝夕届くのだから。
数日読まないでいると、ソファーの横に
古い地層のように堆積していく。
一応整理していて、新しい新聞を下に送っている。
で、いちばん上がもっとも古い新聞となっている。

休みの日、私はソファーに横になり、
古い新聞から読みふける。
新聞を溜めて、古いのから読んでいくのは
悪くないと思っている。
新しい今日の新聞は、読まずに
新聞の層のいちばん下に送ってしまう。
そうして、何日か、
時には何十日か前の新聞を広げるのだ。

新しい新聞の事件や事故の記事を読むと、
まだ生々しく感じられる。
起きたばかりの事件や事故の記事で、
解決も解消もされていないものが多い。
ところが、古い新聞の古い記事は、
例えば恐ろしい事件や悲惨な事故でも、
読む頃にはたいていは終わっているか
解決しているのだ。

さて、今日はじっくりと
古いニュースを読むことにしよう。

あぁ、こんな事件、あったあった。
でも、この犯人は捕まったとテレビでやってた。
どれどれ、どんな犯人なのかな。
あぁ、この火事、悲惨だったなぁ。
確か、放火だとか、ふむふむ、やっぱりなぁ。
それにしても、犯人はずいぶんと老人じゃないの。
犯罪者も高齢化してるのかねぇ、ふむふむ。

なになに、女性手帳だってぇ。
なんだ、そりゃ。
正しい知識を学んでもらうという趣旨だって。
ところが、それが不評で配布を中止するのか。
どうにもねぇ、無駄なことするなぁ。
あいにく読んでないから分からないけれど、
そんなにいけない内容だったのかなぁ。

まずは女性だけっていうのが、変なのかな。
男性手帳も作ればいいのに。
そうそう、ついでに政治家手帳だって作ればいいんだよ。

『1 汚職はしないようにしましょう。
 2 本音を言わないようにしましょう。
 3 万が一、逮捕されるような事態になったら、
   ただちに入院しましょう』

なんて書かれてたりして。

マジシャン手帳というのも、あればいいな。

『1 詐欺とかスリとかの犯罪を
   犯さないようにしましょう。
 2 出番が終わったら、苦情が来る前に
   すみやかに現場を脱出しましょう
 3 失敗したら、まずは笑ってごまかしましょう』

てな内容だったりして。
あぁ、いかんいかん、どうも最近、妄想が激しい。

なんだってぇ、詐欺の被害が増えてるってか。
まったく、困ったもんだ。
そういえば、以前の記事に、
『まるで手品のような詐欺の手口』
と書かれてて、嫌な気持ちになったなぁ。
まぁ、分かりやすい例えなんだろうけれど、
手品師が読むと詐欺と同業のように言われてるようで困る。
野球の監督の手腕を讃えて『◯◯マジックで連戦連勝!』
みたいな使い方だと、マジシャンも嬉しいけれどなぁ。

おっ、そうだよ、こないだの競馬だよ。
惜しかったなぁ、もう1頭、3着を当ててればなぁ。
でも、ほどほどに当たったり外れたり、それがいいのかも。
もし大当たりばかりだったら、
今も競馬場で別の新聞読んでたりして。

以前、仕事で行ったボートレース場で、
船券を買ってみたことがあったなぁ。
ところが、買った船がスタート直後にエンジン停止。
どうなるのかと見つめてたら、
オールでこぎ始めたもんね。
もちろん、漕いでレースに参加するわけじゃなくて、
邪魔になるからコースの外まで退避するためなんだけれど。
ただ一艘、激しいレースから外れて、
オールでちゃぷちゃぷ漕いでいる。
哀愁あったなぁ。

競馬って、ヨーロッパの昔の貴族が考え出したんだってね。
本当かどうか分からないけれど、
貴族たちは時間を持て余してて、
面白い遊びを考えてばかりだったらしい。
それで、サラブレッドを競争させることを思いついたと
聞いたことがある。
貴族たちの間で持ち馬、サラブレッドの早さを競い合う。
人間て、面白いことを考えるもんだ。

うん、今夜、なんだか面白そうな番組があるなぁ。
よし、予約録画しておくとするか。
さてと、テレビを番組欄にしてと、え〜、
10時、だよなぁ。
ないじゃん、そんな番組、どこにもないよ。
おかしいなぁ。

なんだぁ、ないわけだよ。
ずいぶん以前の新聞のテレビ欄見てて、
てっきり今日だと勘違いしちゃったよ。

逃した番組は面白そう、失敗したなぁ。
そうだ、あの人なら絶対、録画してるはず。
頼んでみるか。

「小石さん、新聞は新しいことを聞くと書いて新聞です。
 だから、新しい新聞から読んでください。
 そうすれば、もう放送された番組を予約しようなんて
 バカなことはしなくなるでしょ。
 わたしも録画してないから、
 オンデマンドで観るつもりです」

オンデマンド?
なんか聞いたことはあるけれど、分からない。

どうやら僕は古いのが好きというより、
新しいことが苦手らしい。
やれやれ、しょうがないじゃん。
そんな僕でも生きている、へへへ。
開き直って、今日も古新聞を読みふけるぞ〜。

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2013-06-09-SUN
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