MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『回そうニッポン!』


『東北の食材を食べよう!』というイベントに、
ゲスト出演することになった。

イベントの主催者の要望は、

「小石さん、内容はいつもので良いですよ。
 ただ、被災された缶詰メーカーの方々も
 客席にいらっしゃるので、
 その缶詰を使ったマジックを入れてください」

とのことであった。

私は試行錯誤しつつ、
めったにしない自分用の台本作りにかかった。

いつものネタであっても、
見せ方やセリフは今回のテーマに
沿ったものでなくてはならない。

マジック(1)『平和を願うマジック』

・セリフ

 「皆さん、本日はお忙しいなか、
  かつまた何マイクロシーベルトかが分からないなか、
  ようこそお越し下さいました。
  普段はノー天気な私ですが、
  さすがに3月11日以降、
  様々に考えを巡らしました。
  そうして出た結論が、普段の生活、
  ヘタすると退屈だとさえ思われた日常が
  いかに大切だったかということです。
  平和な日常が続くと、それが当たり前になって、
  退屈とさえ思ってしまってたんですね。
  今は、その日常、平和の大切さを痛感しています。
  そこで、まずは平和を願うマジックから」

・マジック(1)の内容

 ハンカチから、あらかじめ小さく畳んでおいた
 ゴム製のハトを出す。
 ゴム製なので羽ばたかないが、
 持った手を小刻みに動かすと本物のハトに見える。
 ほんの数人でも一瞬でも、
 本物のハトに見えれば成功とする。


マジック(2)『繋がるマジック』

・セリフ

 「普段、都会の生活は
  人と人との繋がりが希薄ですよね。
  でも、大きな困難に直面した時、
  人と人との繋がりが大切になります。
  ひとりでは無力であっても、
  繋がってゆけば大きな力となるはずです。
  今こそ、人と人は繋がり合わなければならないのです。
  そんな今にふさわしい、繋がるマジックです」

・マジック(2)の内容

 中国は広島で考えられたという、
 直径20センチほどの
 金属のリングが2本。
 始めは繋がっていないが、
 マジシャンがそれぞれを重ね合わせると、
 いつの間にか繋がっているマジック。

 通常は繋がったり外れたりを繰り返すのだが、
 今回は繋がることの大切さを表現するのが
 目的なので、
 繋がったら終わり。
 セリフ3分、マジック3秒。


マジック(3)『がんばり、そして休むマジック』

・セリフ

 「誰もが『がんばろう!』と言います。
  もちろん、こんな時こそ
  がんばらなければいけないとは思います。
  しかし、いつも『がんばれ!がんばれ!』では、
  そのうち疲れ切ってしまうことでしょう。
  私は、
  『がんばろう、そして休もう』
  こう、声をかけたいと思っています。
  そんな私の想いを具現化したマジックが、これです」

・マジック(3)の内容

 グリーンに染められた太いロープ。
 ロープはぐったりとしたまま、
 私の腕に掛けられている。
 そのロープにチカラを注入する仕草をすると、
 不思議なことにロープは堅くなり、
 私の腕の上で一直線の棒のように変化する。

 ここで再びセリフ、

 「今、ロープはがんばっています。
  ですが、がんばり過ぎると‥‥」

 元のぐったりしたロープに戻し、

 「このようにチカラを失ってしまいます。
  だから、
  がんばれ、休もう、そう繰り返すのです」

 ロープを堅い1本の棒のようにしたり、
 ぐったりとしたロープに戻したりを繰り返す。
 観客の誰もが、その不思議さに身を乗り出す。
 こんな素晴らしいマジックが
 1600円で買えることを、
 観客には絶対に秘密にしなければならない。


マジック(4)『絆、きずな』

・セリフ

 「人と人との絆。
  これがいかに大切かを思います。
  普段は絆なんて、なんだか恥ずかしかったりして
  口に出して言わないものですが。
  でもね、人と人との絆があってこそ、
  安心も安全もあるのだと思います」

・マジック(4)の内容

 2本の黄色いロープを見せる。
 それらを一緒に空中に投げる。
 落ちてくると、2本のロープは結ばれている。
 そこでセリフ、

 「ほら、一瞬にして2本のロープが結ばれました。
  なぜでしょうか?
  なぜなら、ほら、この2本のロープの色は黄色です。
  黄色い綱、きいろい、つな。きづな、絆」


マジック(5)『経済を、物流を、人を回そう』

・セリフ

 「震災の前から、
  日本の経済は沈みこんでいました。
  そこへこの大災害です。
  あちこちから、自粛自粛の大合唱が聞こえてきます。

  でも、それでいいのでしょうか。
  自粛をすれば、誰が救われるというのでしょう。
  むしろ、あらゆるものが停滞をして、
  日本全体を
  止めてしまうのではないでしょうか。

  ですから、活動できる人は活動し、
  回せる人は回すべきだと思います。
  今日は、客席に石巻の缶詰会社の木の屋さんも
  お越しです。
  そこで、日本の経済、物流が
  チカラ強く回るよう願って、
  回るマジックをご覧いただきます」

・マジック(5)の内容

 いつもの代表作『あたまグルグル』の上に、
 木の屋さんの缶詰を3缶乗せて、
 いつもより余計に回す。

終演後、多くの観客に
『あたまグルグル』を体験してもらう。
1回転するごとに10円を募金してもらうこととする。

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2011-04-17-SUN
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