MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

マジックと料理は似ていると思う。

マジシャンは、観客の見えないところで
ほとんどのタネを仕込み、
ステージでは何もないところから
色々な物を出現させる。
観客は、あくまでマジシャンの
表の不思議現象を見るのみだ。

料理も同様に、下ごしらえは
あまり目にすることがない。
お客は調理している料理人の
鮮やかな手さばきに見入りながら、
テーブルに出された完成品を味わう。

となれば、料理好きのマジシャンもいたりして。

『いつか、食べよう』


私は料理することが好きだ。
本格的に習ったわけではなく、
店で食べた味を思い出しつつ
作る創作料理のようなものである。

始めに作ったのは炒飯だ。
まずは豚肉の下ごしらえ。
豚小間肉に胡椒を振りかけ、片栗粉をまぶし、
少しの水で混ぜ合わせておく。
カレー・パウダーを隠し味程度に振りかける。
これで豚肉は柔らかく味を増し、臭みもなくなるのだ。
卵を割りほぐしておく。
ほんの少し醤油をたらし、フライパンに投入する。
数秒炒め、半熟でいったん取り出しておく。

豚肉を炒め、有り合わせの野菜を加えて炒める。
チンしたご飯を加え、全体がなじむまで炒める。
火を止め、
半熟の卵を加えてひと混ぜしたら出来上がり。

手前味噌であるが、
実に味わい深く美味しい炒飯である。

ただ、私は一品しか作れない。
本来なら、もう二品ほど食卓に並べたいところだが、
まだまだ、別の料理を同時進行で作れない。

みそ汁も欲しい。
だが、炒飯と同時にみそ汁となると、なかなかに難しい。
そこで、私はいつも通販で買っている
フリーズ・ドライのみそ汁を愛用している。
A社のみそ汁は、種類が豊富で美味しい。
また、納豆汁もあり、これもまた濃厚でうまい。

A社からは、カレーうどんの具とつゆ、
味噌煮込みうどんのつゆ、
担々麺の具とつゆも購入している。
これらは鍋の湯に投入し、
茹でた好みの麺にかければ出来上がりである。
もちろん、好きな野菜を加えてもいい。

デパートのネット通販で、
長崎チャンポンと皿うどんのセット、
有名シェフ直伝のクリーム・パスタのセットを
頼んでいる。
家では作れない複雑な味わいを、
意外に安い値段で味わえて重宝している。

ついでに、ワインも頼んでおく。
『フランス金賞ワイン6本セット、1万円』など、
なるべく安いものを選ぶ。

毎週、野菜や果物、肉や野菜を自宅まで届けてくれる
宅配サービスも続けている。
カタログを見て、欲しいものだけを書き入れておけば、
翌週には頼んだものが届くのである。

牛丼の具も注文してみた。
有名チェーン店の味を、自宅で湯煎するだけで
食べられるのだ。

お米と卵は、近所のレストランで買っている。
そのレストランのお米がとびきり美味しく、
無理を言って私の分まで取り寄せてもらっているのだ。
卵も、ご主人が厳選したものを分けてもらっている。

最近ありがたいことに、缶詰博士と称されている
黒川勇人さんと知り合えた。
黒川さんは、缶詰にほんのひと手間掛けるだけで
旨い料理に変身させる、味のマジシャンなのだ。
『おつまみ缶詰酒場』という本まで出されていて、
そのうんちくを聞いているだけでも楽しい方である。
黒川さんから大いに影響を受け、
私も様々な缶詰を購入するようになった。

先日、いつものようにスーパーに買い物に出かけた。
すると、ほとんどの棚が空になっていた。
多くの人が、普段には見られないほどの量をカゴに
積み上げてレジに向かっているではないか。

その勢いに気圧され、私は何も買えずに店を出た。
悲しいことに、昨今の事情により
私が以前に買い求めておいた食品が、
今後しばらくは我が家の備蓄食料となりそうである。

一日も早く世の中が落ち着いて、
備蓄食料など不要な日が来ることを願うばかりだ。

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2011-03-20-SUN
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