MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『こんな芸人さんは、いかが?』


卒業して故郷に戻り、
地元で暮らしている友人知人から、
時々電話がある。

「今度さぁ、ウチの商店会でイベントをやるんだよ。
 それでね、誰か面白い落語家とか漫才とかさぁ、
 呼ぼうということになったんだよ。
 誰がいいかなぁ、ちょっと紹介してくれよ」

そうなると、私が頼りにするのは
日本演芸家連合発行の会員名簿である。
落語、講談、奇術、漫才、浪曲など、
関東関西を問わず、
多くの演芸家の情報が掲載されている。

ただ、私が今開いているのは
ちょっと変わった演芸家名簿のようで、
奇妙な寄席芸人ばかりが載っている。

鉋 音(かんな おと)漫談家。
唄いながら世相を嘆く芸は、
玄人筋の支持を受けている。
しかし、寄席の常連客の支持率は
18パーセント前後と低迷している。
ちょっとイライラした表情で、
「最小の不幸〜、それは〜、奥さん強いこと〜。
 最大の不幸〜、それは〜、奥さん怖いこと〜」
と唄う。
『身を削って唄う』を信条とし、芸名にしている。

タニがき隊(たにがきたい)コント。
さだかずくん、のぶくん、ゆっちゃんの3人組。
真面目で育ちの良さそうなキャラクターの
さだかずくんとのぶくん。
そんな彼らを冷たくあしらう
紅一点のゆっちゃん。
いわゆる草食系男子の典型のようなふたりに、
「あんたたち、肉食ってんの?
 そんなんじゃ闘えないでしょっ!」
と一喝するゆっちゃんに、男性ふたりが声を揃えて、
「お先にどうぞ」
というオチのコントが多い。

ユッキー・鳩谷(ゆっきー・はとたに)手品師。
祖父の代から続く名門手品師の3代目。
親から譲り受けた大ネタを活用して、
華々しい舞台奇術を展開。
また、『錬金術師の夢』という、
お金が無尽蔵に印刷されて出てくるマジックも
お家芸として受け継いでいる。
加えて、ハト出しマジックは得意芸のひとつ。
多くの奇術師の支持を得て、
日本奇術家連合の会長にまで登りつめた。
弟は、西洋奇術を得意とするクーニー・鳩谷。

けんじと一郎(けんじ と いちろう)漫才師。
一郎のぬらりくらりのボケに、
しつこくツッコむけんじとの掛け合いが、
時に観客の苦笑を誘う。
平成の時代なのに『昭和金す好き』というCDを出し、
100万枚を超える大ヒットとなる。
その印税を巡って所属事務所、けんじ、一郎との間で
揉めに揉めているが、コンビは解消していない。
それどころか、その金銭トラブルまでもネタにして
現在も高座に立ち続けている。

十字庵 あ三次(じゅうじあん あさんじ)落語家。
落語家、漫才師、手品師などを問わず、
大師匠たちの噂や内緒話を高座でしゃべりまくり
人気を博す。
だが、当然ながら師匠たちの怒りを買い、
自身の女性問題を暴露されて
法廷闘争までになっている。
それでも、暴露芸への意欲は一向に失われていない。
また、師匠たちの弟子たちから秘かに、
「あいつの芸はダメだねぇ、馬鹿だねぇ」
などという内輪話が録音されたテープが
持ち込まれていて、
それらを基にした新作落語を次々に創作、発表している。

暫 お浜・小浜(しばらく おばま こばま)姉妹漫才。
姉のお浜が、低く魅力的な声で妹の小浜に、
「あんたぁ、いい加減にその顔チェンジしなさい」
とツッコミを入れて爆笑を誘う。
始めはお浜の人気が沸騰したが、
最近では妹の小浜も人気者となっている。
福井県小浜市出身。

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2011-03-06-SUN
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