MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『一流を越えた!?』


「皆さん、こんにちは。
 ナポレオンズのパルト小石です。
 パルト小石というのはもちろん芸名でして、
 本名は
 伊達直人です」

この本名の部分は、
その時々の話題の人物になったりする。
「本名は、石川遼です」
とか、
「本名は、斉藤佑樹です」
ここ数日ならば、やはり、
「本名は伊達直人です。むふふふ」

日本のあちこちに、心優しい伊達直人さんが参上、
様々に寄付や寄贈を繰り広げている。
久しぶりに明るいニュースであり、
寒さを忘れる温かいニュースだ。

僕はといえば、何年も前に海に潜って
底に沈んでいるあき缶やあき瓶を拾う作業を手伝って以来、
善いことをまるでしてこなかった気がする。

まだ年が明けたばかり、2011年が始まったばかりだ。
人前で、
「本名は、伊達直人です」
などと騙るだけではなく、伊達直人さんの行動を見習い、
今年は少しでも善いことをしたいと思う。

また、新しい年のスタートにあたり、
もうひとつ目指していることがある。
仕事先の楽屋で、
「僕はさぁ、今年はマイペースで生きようと思う」
そうつぶやいたところ、
「あれぇ、お前は生まれてから今日まで、
 ずぅ〜っとマイペースで生きてきたんじゃないの?」
きついご指摘を受けてしまったが、
僕だって時に媚び、時にへつらい、
右にならえと言われ右、
左にならえで左と生きてきたのだ。
思いのままに自分のペースで生きてみたいと思いつつも、
プロデューサーの意向になびき、
ディレクターの顔色をうかがい、
観客の反応におびえる日々を生きてきたのだ。

だが、いよいよ今年こそは
マイペースで生きようと思う。
ひょっとすると、マイペースという言葉自体が、
今は古くなってしまっているかもしれない。
「濁流からかろうじて顔だけ出して生きてるんだよ。
 マイペースで泳ぐなんて、できるわけないだろう」
マイペースなどとお気楽なことを言おうものなら、
多くの人が必死にしがみついている蜘蛛の糸から
ひとりポロリと抜け堕ちてしまいそうだ。

以前、ある経営者に言われたことがある。
「私の仕事はね、
 一流だけ相手にしとけばいいんですよ。
 一流だけ選んで、一流とだけ仕事してれば
 間違いないのですよ」
経営とはそれほどに厳しいものですよ、
という意味でおっしゃったのであろうと推測しつつも、
言葉は僕の胸に突き刺さった。
血管をざくりと切断され、血液がどくどくと流れ、
まさに血の気の失せる思いをしたものだ。

それでも、僕は思うのだ。
2011年は、マイペースで生きるのがいい。

麻雀をしている時に出る言葉がある。
どうにも揃っていない、良い手になりそうもない、
ひどい配パイではないか。
でも、そんな中にもひとつだけ、
小さな希望になりそうな面子を発見し、
「やれやれ、さびしき中にも1面子、だねぇ」
厳しい世の中なれど、厳しき中にも1面子はあると
信じたい。

「僕だって、一流になりたいと思って
 努力してるんだけれどねぇ」
すると友人曰く、
「小石さんはねぇ、一流を越えた自己流ですよ。
 一流なんて目指すより、自己流を極めるべきですよ」
友よ、本当にありがとう。

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2011-01-16-SUN
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