MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『デジタルでプラズマでブルーレイ』


我が家のテレビはプラズマで、
地デジ化も数年前に済んでいる。

録画機器は、
当時からなにも分からないまま、

「DVDレコーダーですよね。
 これからはブルーレイだと思いますよ」

という店員さんの説明を鵜呑みにして購入したが、
実を言うと
未だに普通のDVDとブルーレイの違いは値段の差以外、
詳しく分からないままなのだ。

地デジ化されたテレビと、
これまでのブラウン管テレビの違いは
相当にはっきりしている。
まずは画質の違いだ。
アナログ・テレビの画像はぼんやりとしていて、
なんというか、
ぬり絵のような画質であった。
また、当然のようにゴーストがあった。
生まれた時からデジタル化されたテレビを見ている
世代には、もうゴーストという言葉も
意味不明であろう。

「えぇっ、昔のテレビには
 お化けが出たんですか?」

てなことを言われたりして。
デジタル化されてゴーストは消え、
今までは見えなかった部分が鮮明に見えてくる。

十数年前に映画館で観た恐ろしい特撮映画が
DVDになって店頭に並んでいた。
恐る恐る見ると、
あれほどの恐怖はなかった特殊メイクを施した悪魔が、
まるで夏祭りの縁日で売られている
お面のようではないか。

恐ろしいというより、面白いのであった。
私の脳裏に深く刻まれていた恐怖の記憶は、
デジタル化された映像によって
お笑いに変換されてしまったのだ。

地デジ・テレビで野球やサッカーを見ていると、
スパイクに削られた芝生の一本一本までが
くっきりと見える。

ブルーレイDVDを購入している友人が言う。

「小石さん、
 あのオペラのDVDはブルーレイで見るべきですよ。
 今まで気付かなかったんですが、
 主役の後ろの壁までが見えますよ。
 今まで普通のDVDで見てた時は、
 背景は単に黒だと思ってたのに」

言われてみると、
確かに背景まで見えてくるように思え、
やたらに背景ばかりが気になるようになった。

野球やサッカーを見ているはずなのに、
なぜだか芝生の削れた部分ばかりを凝視してしまう。

DVDを見れば、主人公よりも
背景にこれまで見えなかったものが映ってないかと
目を凝らしている。

私の地デジ化、デジタル化は、
画面は鮮明になったにもかかわらず、
相当に歪んだ見方になっているようだ。

先日、満杯になってしまったハード・ディスクから
DVDへのダビング作業を始めた。
レコーダー機器は、
ダビング作業などの仕方が簡単にできている。
上下左右ボタンで作業を選び、決定ボタンを押せば、
後は自動的にダビングを開始してくれる。
機器の扱いを苦手にしている私でも、
比較的簡単にできてしまうのだ。

だが、先日は相当に酔っていた。
酔ったまま、ダビングと消去作業を
一緒にやってしまった。

その結果、消したい番組は残し、
ハード・ディスクからDVDにダビングするはずの
私の出演番組を消去してしまったのだ。

もう本当に、一瞬で消えてしまった。

これまでの、ベータやVHSといったテープならば、
間違って消去するにしてもテープが流れ出し、
その後ゆっくりと消えていったような気がする。
消去するにしても別の作業をするにしても、
とにかく時間がかかったものだ。

それが、デジタルは一瞬なのであった。
もう、後悔する間もないのであった。

翌日、私は各方面に電話をかけた。

「すいません、
 先日に放送していただいた番組をですね、
 間違って消してしまいまして・・・」

数日後、ありがたくも出演番組はDVDとなって
我が家に送られてきた。

やれやれ良かったと、DVDを見ることにした。

映っているのは、
デジタル化、地デジ化されても
相変わらずのアナログなマジックを
楽しそうに展開している我が姿であった。

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2010-07-11-SUN
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