MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『2010年、正月風景』


皆様、今年もどうぞよろしくお願いします。

私の正月は、
例年のごとく元旦から仕事であった。

ほぼ毎年、正月はホテルで開催されるショー、
あるいは
ホテル主催の寄席に出演する。

ホテルに入ると、凧揚げやコマ回し、輪投げ、射的、
大きな鬼のお腹に空いた穴にボールを投げ入れると
景品がもらえるゲームなどが所狭しと並んでいる。

つまりは、
すっかり消えてしまった日本のお正月風景は
ホテルの中にあるのだ。

ショー、あるいはホテル寄席は、
夜の9時くらいから開演することが多い。

意外と遅い時間なのだが、そこはお正月、
子供たちも夜更かししてマジックを楽しんでくれるのだ。

ホテルでの正月というのも優雅でいいなぁと思い、
ホテルのスタッフの方に料金を聞いてみると、
なかなかに高い。
やはりお財布と心に相当の余裕がある人でないと、
ホテルでの正月は迎えられまい。
従って、私はまだ一度も私の親戚、友人知人を
ホテルで見かけたことがない。

元旦の夕方、携帯に故郷の義兄からの着信があった。
さっそく電話をしてみると、

「おぉ、すまんなぁ。
 実は孫が携帯をいじってなぁ。
 あちこち電話してはすぐに切ってなぁ。
 孫のワン切りじゃて。
 それで、さっきから色んな人から
 電話がかかってきてなぁ」

始めは孫のいたずらと気づいていなかったので、

「おぉ、明けましておめでとうございます。
 すまんです、
 わざわざ電話いただきまして。
 で、なにか急用でも・・・」

などと、噛み合わない会話を何件も続けていたらしい。

私が以前に帰郷した折には、
孫はまだ眠ってばかりの赤ちゃんだったような。
それが、携帯をいたずら出来るようになっているらしい。

となると、僕はもう少なくとも
3、4年も帰郷していないのだろうか。

私は、

「今年は、何があっても故郷に帰ろう」

と、ひとりごちだ。

『明けましておめでとうございます! 
 今年は新たな代筆者を募集して、
 小説『神様の愛したマジシャン』の
 続編を完成させます』

これが、私の今年の年賀状の文面でありました。
もちろん、代筆者は見つかりそうもないので、
自分で書かねばならない。

『今年も愛してますよ〜!』

故郷の同級生の女性、人妻からの年賀状である。

同級生なのでもう◯◯才なのだが、
毎年同じ写真を使っているのだ。
はて、実際に会ったらどう変化しているのやら。
想像すると怖いものがある。

『子供は今年、社会人になります』

と書かれた、中学校の同級生からの年賀状。
子供の横に写っているのは
同級生の父親と思ってしまった。
ところが、どうやら同級生本人のようである。
写真入り年賀状は若過ぎても老け過ぎていても、怖い。

『 降る雪を しのぐ屋根ありや にしひがし 』

暮れのこと、遠い地方からやっと新宿まで戻り、
すっかりくたびれて新宿からタクシーに乗った。

新宿の中央公園を通り過ぎようとすると、
なにやら大勢の人々が列をなしていた。

「あれれ、いったい、なにがあるんですかねぇ」

タクシーの運転手さんが、

「あぁ、知らないですか?
 炊き出しをやっているんですよ」

ごく普通の、ジーパンにジャンパー姿の
若者たちの列にしか見えなかった。
その行列は、私の目には
デパートのバーゲンセールに並ぶ人々と、
まるで違わないのだった。

「男たちは朝から雪かきやわぁ」

姉からの電話によると、
今年は我が故郷の岐阜でも大雪らしい。

西も東も、南も北も、
誰でも暖かい屋根の下での正月を想って詠めり。

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2010-01-10-SUN
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