MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『マジックの季節』

夏は、マジックの季節である。
(社)日本奇術協会は
12月3日(奇術師が不思議を起こす際の
かけ声であるワン、ツー、スリーに合わせて)を
奇術の日と定めているのだが、
マジックのイベントが多いのは断然、夏なのだ。

今年も7月から9月にかけて、
多くのマジック大会が開催された。
となると、私の小説『神様の愛したマジシャン』を売る
良い機会到来。
さっそくあちこちのイベントに参加して
即席のサイン会を勝手に行った。

今日も今日とて9月某日、
都内で開催されたマジック大会に
20冊ほどの小説を持ち込んだ私である。
主催者のご好意で作っていただいた、
“『神様の愛したマジシャン』、サイン付きです!”と
手書きされた張り紙を背景に、
即席のサイン会となった。
幸いにも順調に売れ、30分で完売となった。
最後の一冊を購入してくれたおじさんは、

「いやぁ、小説が出たって聞いて
 本屋で探したのだけれども、
 マジックのコーナーに、なかったよ」

おじさん、今度の著書は小説だから、
文芸コーナーで探してくれなくっちゃ。

私はこれまでナポレオンズとして
多くの本を出版してきた。
それらの著書のほとんどが
『不思議!おもしろ!科学マジック』
『超カンタンおもしろマジック』『ザ・マジック』
『心理ゲームの達人』といった
マジックの教本、ハウ・ツー本ばかりだ。
この種の本が並べられるのは『インコの買い方』とか
『麻雀上達法』、『トランプ占い』などと同じ棚なのだ。

きっと長年、
私たちの本を買い続けてくれたおじさんは、
いつものクセでハウ・ツー本の棚に
直行してしまったのだろう。

「マジックのネタは書いてあるのですか?」

そう尋ねる若者もいた。
新しいマジックを会得することに
熱心な若者なのであろう。

「はいはい、ネタもノウ・ハウも書いてありますよ」

マジック、マジシャンに関するすべてのことを
書いたつもりである私は、彼の目を見つめて答えた。
若者は、私の言葉を疑うような
不安げな表情になりつつも、
本を買ってくれたのであった。

「推理小説ですよね?」

という質問も多い。
なぜか、マジシャンが書いた小説というと
推理やミステリー小説と受け取られる。
マジシャンゆえ常日頃から新しいネタ、
トリックを考えているので、
それらの知識を応用すれば
推理小説もミステリーも創作可能と思われるのだろうか。

確かに、マジックのネタの部分が
推理やミステリー小説のトリック部分と
イコールになることもある。
現に、推理、ミステリー作家であり
直木賞作家の泡坂妻夫氏は、
新しいマジックをいくつも創作されている
アマチュア・マジシャンでもあるのだ。

私は幾度も泡坂先生のご自宅に伺って
氏の創作されたマジックを見せていただいている。
それどころか、創作されたマジックの
貴重な道具をいただいてしまったこともある。
もっともそれは、泡坂先生が
マジックの次に愛されている日本酒に
すっかり酩酊された夜ではあったが。

マジックの季節である夏も過ぎ、
読書の秋が訪れたようだ。
さぁ、いよいよ私の小説を読んでいただく
季節の到来である。
あちこちで小説の即売&サイン会を催さねばならない。

秋が過ぎたら冬に、
冬来たりなば春に、
私の印税生活への旅はまだまだ続きそうだ。

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2008-09-21-SUN
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