MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『笑点』

『笑点』という番組は、なんと40年以上も続いている。
マンネリだ、などという評価自体が
マンネリになってしまうほど変わらない内容でありながら、
多くの人々に喜ばれ高い視聴率を誇っている。
そんな『笑点』の大喜利の前の演芸コーナーに、
いちばん多く出演しているのは、
なんと我々ナポレオンズ!
実にもう、ありがたいことなのだ。
「やはり、芸のチカラだ」
「ネタの面白さです」
「芸道に精進しているから」
などと言いたいし言われたいところだが、
実のところは、
「なんとなく、運が良かったから」
これが実感である。
通常の番組だと、長くても数年で終わってしまう。
また、そこに携わっている
プロデューサーやディレクターなどのスタッフも、
人事異動で目まぐるしく変わってしまうのが普通だ。
ところが、この『笑点』という番組だけは、
いつも現場で顔を合わせるスタッフの皆さんの顔ぶれが
ほとんど変わらない。
番組を裏で支える人たちの顔ぶれも、
まさに良きマンネリの極致なのだ。
20年以上も前からの顔見知りの皆さんは、
我々ナポレオンズのネタを知り尽くしている。
「それは、以前にもやったよねぇ?」
「ちょっと前のネタと似てない?」
古いネタをあれこれアレンジして
適当にごまかそうとしても、
容易にダマされてはくれない。
スタッフの皆さんより観客をダマす方が
よっぽど楽だったりして。

番組の影響で、寄席に出ているというイメージが強い
ナポレオンズである。
新宿を歩いていると、
「今日は末広かい?」
なんて声を掛けられたりする。
ある日、新宿の蕎麦屋さんに入った。
昨夜、飲み過ぎてお腹の調子が良くない、
あっさりと素うどんを食べることにした。
注文すると、おばちゃんはお茶をテーブルに置きながら、
「今日は末広ですか?」
と聞いてきた。
「えぇ、まぁそんなところで‥‥」
なんとなく、そう応えた。
しばし後、大きな天ぷらがど〜んと乗っかったうどんが
運ばれて来たではないか。
「すいません、僕が頼んだのは素うどんなんですけど」
すると、おばちゃんはニッコリと笑って、
「天ぷらは、あたしのおまけ、ふふふ」
お腹の調子さえ良ければ、
実にありがたいおまけなんだけど‥‥。
カレー屋さんに入った。
カウンターに座ると、
「あれれ、今日は末広?」
と、おじさんが言う。
本当のことを言えば良さそうなものだが、
「違います」
と言うのも申し訳ないような気がする。
したがって、
「まぁ、そんなところで‥‥」
と返事する。
おじさんはしっかりと大盛りにしてくれた。
食べても食べてもまるで減らない大盛りカレー。
しまいには、スプーンを口に持っていこうとするのだが、
口の方が嫌がって遠ざかろうとするかのようだ。
なんとか、自分で自身の後頭部を押さえながら
カレーを平らげた。
せっかくの好意の大盛りカレー、残しては申し訳ないのだ。
『笑点』へのゲスト出演回数第1位、
その影響力は計り知れないのだ。
その恩恵によって、最近太り気味の私である。

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2006-10-01-SUN

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