MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

またまた眠れぬ夜がやってきてしまったようだ。
日々これ平穏に暮らせるよう努力を重ねてはいても、
ほんの小さな出来事が心を乱すこともある。
そんな夜は、いつものように
ワインと好きな映画に酔うに限る。
そうだ、今夜は、あの棚に並んでいるDVDにしよう。


『マジシャンが登場する映画』


『ヨーロッパの夜(EUROPEAN NIGHTS)』
ハンカチから鳩を出すという、
現代のマジシャンのイメージを確立した伝説のマジシャン、
チャニング・ポロック(CHANNING POLLOCK)の
奇跡の名演技が収められている映画。
残念ながら、今では廃盤となっているらしい。
私が持っているのは、米国のマジック大会に参加した際、
ディーラー・ショップで買い求めたVHSのビデオである。
『ヨーロッパの夜』の題名通り、
ヨーロッパに実在する
ショー・クラブやサーカスに出演している
一流のエンターティナーの名演を
居ながらにして楽しめる内容になっている。
イギリスに渡った若きチャニング・ポロック、
その美しい容姿と完璧なまでのテクニックから
奇跡のように生まれ出る純白の鳩。
「チャニング・ポロックを見たか?」
彼はたちまち英国社交界の噂となり、
一夜にしてスターとなった。
後年、チャニング・ポロック自身が
その騒ぎを述懐したという。
「イギリスは僕のものだと思った。若かったんだね」
映画の中のチャニング・ポロックが、
今夜も私だけに夢のように美しい鳩のマジックを
見せてくれる。
余談だが、身長を見事に揃えた
美女たちのライン・ダンスで有名な
パリのナイト・クラブもこの映画に入っている。
そこに出演していたマジシャンが、
こっそり秘密を教えてくれた。
「ダンサーたちは、実は少しずつ身長が違う。
 でも、ハイヒールのかかとの長さで調節しているから、
 見事に同じ高さのように見えるのさ」
実際にそのナイト・クラブに行った時、
私はダンサーたちのハイヒールのかかとばかり見ていて、
肝心の美しいお御足を見そこねた。

『マジック・ボーイ(THE ESCAPE ARTIST)』
父親が有名なマジシャンであった少年。
様々な陰謀に巻き込まれるが、
父親譲りのマジック・テクニックで
危機から見事に脱出するストーリー。
映像の随所にマジック・シーンがちりばめられている。
父親のマジシャンが水槽から脱出する場面があり、
手錠を掛けられたマジシャンが
水槽に沈んでゆくのが逆光で撮影されている。
これが実に美しい映像になっていて、
残された少年の悲しみまでもが伝わってくるようだ。
また、そのシーンでマジシャンが着ているえんび服、
その高級そうなこと!
そんな衣装が濡れてしまうのもいとわず、
水槽に沈んでゆくマジシャン。
以前、我々ナポレオンズが演じた水槽脱出、
着ていたのは海パンだったもんなぁ。
演芸と映画の違いって、
意外とこんなところにあったりして。

『魔術の恋(HOUDINI)』
1953年の制作、
1870年代から1920年代にかけて実在したマジシャン、
ハリー・フーディニーの伝記映画である。
しがない見世物小屋のマジシャンであったハリーが、
類いまれな脱出テクニックを発揮し、
手錠され箱に密閉されて川に落とされるが
見事に無事生還するなど、
大衆の耳目を集める派手なパフォーマンスを武器に、
たちまち大スターとなる。
ハリー役にトニー・カーチス、
妻のベス役にジャネット・リーが配され、
時折フィクションも織り交ぜられていて
楽しい娯楽作品となっている。
マジックのシーンが忠実に再現されている。
普通のマジックが受けなくて
トマトを投げられるフーディニー、
悲しさと悔しさに泣き崩れるフーディニー。
わかるよフーディニー、私も受けない経験が多いから。
ただね、そんな場合はこう思えばいいのさ。
「今日は、客が悪い」

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2006-01-22-SUN

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