MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

昔々のことじゃった、
わしらナポレオンズは大勢の仲間たちとともに
ロサンゼルスに飛んだんじゃ。
そこにはなぁ、信じられんような夢のお城があったんじゃ。
というわけで今回のお題、


『夢のマジック・キャッスル!』


マジシャンならばプロ・アマ問わず、
一度は訪れたことがあるであろう場所、
それがマジック・キャッスルである。
アメリカ、ロサンゼルスのビバリー・ヒルズの近く、
高台にそびえ立つ美しい城。
ヨーロッパの某国にあった本物のお城を、
ここロサンゼルスに移築した豪壮な建物である。
テレビなどでロサンゼルスの風景が映し出される際、
山の中腹あたりに
H、O、L、L、Y、W、O、O、D
と書かれた文字盤が映ることがある。
その文字盤のHの左側下方に、
マジック・キャッスルはある。

会員制のシアター・レストランで、
残念ながら18歳未満は入場禁止である。
(日曜のお昼、子供たちを招いて
 マチネーのマジック・ショーが開催されたりはする)
会員でなくても、本会員の紹介があって
18歳以上ならば入場を許されたりするが、
入場審査はなかなかに厳しい。
特に日本人の場合、年齢よりも若く見られてしまうので、
パスポートなどを持参していないと、
「あなたは、18歳以上には見えませんが‥‥」
と疑われたりする。
現に私も35歳の時に、
「オウ、ユー、セブンティーン?」
などと言われていた(ような気がする)。
18歳以上で会員、あるいは本会員の紹介が無いと
絶対に入場できないか、
答えはうれしいことに「No」である。

ではどうすれば?
ここはシアター・レストランである。
シアターで繰り広げられているショーは、
すべてがマジック・ショーなのだ。
つまりはマジシャンによるマジシャンのための、
マジックの殿堂なのだ。
故に、貴方がマジシャンであると認められれば
即入場を許されるという、
実に気の利いた演出があるのだ。
受付で、「私はマジシャンです」と伝えてみる。
するとスタッフたちが、
「なにか、ここで見せていただけますか?」
そう言われたら、即座に得意なマジックを見せる。
面白くて素晴らしいマジックならば、
大きな拍手とともに
「Welcome!」で迎えられるのである。

私が初めてマジック・キャッスルを訪れた際、
軽い気持ちでちょっとしたマジックを見せた。
すると受付けは大騒ぎになってしまい、
オーナーまでが駆けつけてきて
案内役を務めてくれたのであった(ような気がする)。
やれやれとにかく入場を許されたわい、などと
ホッとして入り口を探すのだが、なんと入り口が無い。
周りをすべて見回しても、入り口らしいものなど無いのだ。
途方に暮れていると、
後ろから常連さんらしい集団がガヤガヤとやってきた。
曖昧な笑顔とともに先を譲ると、
常連グループのなかの一人が、
「オープン・セサ〜ミ!」
と叫ぶではないか。
す、すると我々の前方を遮っていた巨大な本棚が
ゴゥ〜、ギィ〜と左右に開き出したのだ!
アゼンとして立ち尽くす我々を見て、
「アフター・ユー(お先にどうぞ)」などと、
常連さんたちは
あくまでジェントルマンたちなのであった。

大小のバー・コーナー、ギャラリー、レストラン、
メイン・シアター、レクチャー・ルーム、サロン、
どこに行っても
素晴らしいマジシャンたちの妙技が堪能できるのだ。
しかも、電話ボックスや部屋のあちこちに
様々な仕掛けが施してある。
遠くからも近くからも、驚きや笑い声が聞こえてくる。
バーの片隅に、黒い大きなソファーがある。
席はすべて埋まっていて、
空いているのはその黒いソファーのみである。
しかし、誰もそのソファーに座ろうとしない。
しばらくすると、葉巻をくわえた老人がフラリと現れた。
誰もが道を譲って老人を見守る。
穏やかな笑みを浮かべてソファーに近づいた老人は、
当然のようにその黒いソファーに腰を下ろした。
そう、この老人こそがカード・マジックの王様とまで
崇められている、ダイ・バーノン氏なのである。
マジック・キャッスル、マジック城には
ちゃんと王様が玉座に鎮座ましましているのであった。

所変わって我が日本にも、
マジック・キャッスルのようなものが出来たという。
私はイソイソと渋谷のとあるビルに向かった。
入り口に「コンパ・マジック・キャッスル」と書かれた
ドアを開けると、
本棚の絵が描いてあるベニヤ板がぶら下がっていた。
私は本家のマジック・キャッスル同様、
ベニヤ板に向かって
「オープン・セサーミ!」
と叫んでみた。すると、
「は〜い、いらっしゃ〜いませ〜」
ベニヤ板の裏にいたおばちゃんが、
間延びした声とともに
なにやらヒモのようなものを引っぱっている。
するとベニヤ板の本棚がブランブランと揺れながら
右側に引っ込んで行った。
薄暗い店内に目を凝らすと、
10畳一間ほどの
日本版マジック・キャッスルが見えてきた‥‥。

(この続きは、また今度)

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2004-03-18-THU

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