MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

夏になると、様々なマジックのイベントが催される。
あちこちに出かけて疲労困憊となる。
しかし、私には強い味方がありました。
そう、疲れた心身をぐいぐいと揉みほぐしてくれる
マッサージ。
上手い人にかかると、
素晴らしいマジシャンの華麗なる指先のテクニックを
連想してしまうのは、私だけだろうなぁ。
さて今回はそんな


「あやしいマッサージ物語」


最近、タイ古式マッサージにハマッている。
2年ほど前に近所にできたらしいのだが、
始めはなんだかアヤシイ感じがして行かなかった。
ついつい善からぬ想像などして
尻込みしていたりしたのだが、
生まれついてのパイオニア精神を発揮して
飛び込んでみたのだった。
これが、好いのです。
主にストレッチを中心としていて、
オプションで足裏マッサージも受けることもできる。
たった15分から3時間以上のコースまであり、
私はいつも2時間のコースをお願いしている。
1時間半をかけてストレッチ&マッサージ、
30分の足裏オイル・マッサージというパターンである。
仕事柄、あちこちのホテルに泊まることが多い。
時々マッサージを頼むことがあるのだが、
なんだかピンキリである。
やたら話し好きのおばちゃんだったり、
おいおい揉んでいるのかさすっているのか
ハッキリしてくれよみたいなおじさんだったりする。
ある時は、こちらが揉んであげたくなるような、
具合の悪そうなおばあさんだったりもした。
こうなると、揉んでもらっていても
気が休まるどころではない。

それらに比べると、タイ古式マッサージは素晴らしいのだ。
なんせスタッフの皆さんが実に穏やかな若い女性ばかり、
話し方も身のこなしもなんともやさしい、
いわゆる「癒し系」なのである。
すべてが終了して
出されたハーブ・ティーなどをいただいていると、
気持ちまでが晴れやかな気分になってくる。
しかもかなりしっかり揉んでくれるのに、
揉み返しがまったくない。
いやはや、こうして書いているだけで
すぐに駆けつけたくなってしまう。
しかし、世の中には
とんでもないマッサージ体験者もいるようで。
これは私の親しい友人から聞いたお話。

この間さぁ、近所に
「○○式マッサージ」ていう看板を見つけたのよ。
でもって、あたしってマッサージ好きだから
行ってみたのよ。
本当はいつものところに行くつもりだったけれど、
ほんの気まぐれでさ、その「○○式」ってのに
行ってみたのよ。
ビルの2階に上がってさ、
なんだか安っぽい取っ手の付いたドアを開けたのよ。
なんか事務所を改装したような殺風景な部屋で、
奥まったところのカーテンが揺れてるから、
先客がいて治療中だって思ったわ。
他に誰もいなさそうだったから、
「すいませ〜ん、初めてなんですけど」
て声をかけたら、
「ちょっとお待ちください」
って、男の人の声が返ってきたわ。
しばらくすると、
「あ〜、気持ち良かったわぁ」
と、かなり太ったおばさんがカーテンの奥から現れたのよ。
ひとつ伸びをして本当に気持ち良さげだから、
ひょっとすると店の造りはセコいけど
腕は確かだったりしてと思ったわよ。
ベッドを直しておばさんの後から出てきた男性は、
意外と若くって30代前半くらいだった。
黒髪の、生真面目そうな、
青年といってもいいくらいの人だったわ。
少しだけ問診があって、
鉛筆でちょこちょこっとメモ書きをして、
青年はあたしをうつぶせに寝かした。
いよいよそこからマッサージの始まりよ。
肩の辺りから始まって
スムーズに揉み下ろしていってくれて、
それがなんだかちょうど良い感じでうっとりするよう。
数年間修業した後、
一昨年なんとか自分の店を持つことができました。
お陰様で顧客も多くなってありがたいことです、
なんてことを話してくれるんだけど、
あたしはもう、うとうとしてたわ。
腰まで揉み終わったところで、
「じゃぁスカートを脱いでください。
 で、このバスタオルを巻いてください」
再びうつぶせになっていると、
マッサージは腰から足に移ったわ。
なにやらオイルのようなものが擦り込まれているみたいで、
これがまた気持ち良いのよ。
ところがよ、太ももあたりまできてたところで
青年がバスタオルをひょいと剥がしちゃったのよ。
びっくりしたけど、なんだか声も出なくってさ。
だって、あたしってもう下着姿なんだもの。
青年はなにごともなく、
あたしのお尻をマッサージし始めた。
それがまたツボを確実に捉えていてさ、
痛いような気持ち良いような、なんともいえない気分よ。
でもね、その後が変なのよ。
彼は大きな枕を持ってきて、
それをあたしのお腹に差し入れたのよ。
そうすると、下着姿の下半身が
ぐぅって持ち上がっちゃうじゃない。
余計に恥ずかしい格好になっちゃった。
「ここにツボが集中しているので・・・」
とか言いながら、更にマッサージは続いたわ。
そ、それがさ、なんと、ついにというか、
あたしの肛門あたりまで届いてきちゃった!
指が微妙に下着のすき間に入り込んできて、
もうすっかりなにかが見えちゃってるのかしら。
とうとう、少しづつパンティーが下ろされている気配、
あぁ〜ん、なんてこと! 
その直後、なんだか急に青年の指の動きが止まったわ。
それどころか2メートルくらい飛び退いて
硬直してさえいそうだったわ。
あたしは所在なくて、起き上がって青年の方を見た。
青年もあたしを見てるんだけど、
なんだか焦点の合わないような顔をしてたわ。
「あ、ありがとうございました」
そんなことを独り言のように呟いて、
マッサージは終了したわ。
本当に、もうビックリの体験よぉ。

葉月お姉さんは、なんだか懐かしそうな表情をして
話を終えた。
「さぁそろそろお店に行かなくっちゃ。
 ねぇ、またお店に来てくれるわよね?」
そう言ってコンパクトを開いて化粧を直し始めた。
「あら、やだ。
 もうヒゲが伸びてきちゃってる、
 たいへ〜ん」
彼女は大きな化粧ポーチを抱えて女性化粧室に消えた。

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2003-08-31-SUN

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