MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

3年に1度、ヨーロッパの各都市で開催される
世界最大のマジックの祭典が、
今年はオランダのハーグ市で開催されました。
我々ナポレオンズも参加してきました。
祭典の模様は後日NHKで放送される予定ですが、
今回はひと足早くのリポートであります。


「世界最大のマジックの祭典・リポート」



JAL411便で10時間、
オランダのスキポール空港に着いたよ。
今回もプロ・アマを問わず、
一緒のツアーを組んでの参加だったよ。
マジック・コンテストに参加するマジシャンも多いので、
各自すごい量の荷物だ。
しかもマジックの道具というものは、
かなり怪し気なものばかり。
X線を通して見ると、バッテリーのようなもの、
リード線、ボンベのような形のものなど、
カバンを開けて良〜く調べた方がいいものばかりだ。
なのに、税関もあっさりとフリー・パス、
かえって心配になってしまったよ。

大量の荷物とともに
迎えのバスに乗車、ホテルへと向かったよ。
約1時間のバスの旅、ツアー・ガイドの女性が
あれこれ説明を始めたのだが、
みんな長旅の疲れで爆睡中、誰も聴いてやしない。
もっともそのガイドの方が中国人で、
時々奇妙な日本語が混ざってくる。
「大事な懐中物は、安全金庫に保管されましょう」
てな感じ、音声だけが耳に入ってくると
なんだか奇妙だったよ。
ガイドさんの話によると、
オランダで観光客目当てのサギ事件が相次いでいるという。
その手口とは、ニセ警官になった男が声を掛けてきて、
「アナタは、ア〜ヤシイです。
 身分証明するもの、見せてくださ〜い」
などと言葉巧みに(ホントかいな)
クレジット・カードを盗んでしまうという。
暗証番号なども、本物の警官と信じた日本人は
簡単に教えてしまうのだそうだ。
なんだか面白そうで、
そんなニセ警官だったら会ってみたいものだ、
などと思ったよ。
だが、貴重なお話も
眠っている人々の頭の上を通り過ぎて行くばかり。

ホテルに到着するとすぐ、番組のスタッフの皆さん、
そして今回の案内役である
西田ひかるさんたちとの打ち合わせに入ったよ。
その後、車でハーグ市内のスケベニンゲン
(本当の発音はスケッフェ・ニンゲンなんだけど、
 我々の耳にはスケベと聞こえてしまって、
 意味もなく照れたりするよ)
という海岸沿いに行きました。
そこの有名レストランで食事となった。
ここの名物はムール貝で、一人前が中鍋1杯なのだ。
食べても食べても出てくる出てくる、
まるでムール貝の天敵になったような気分。
日本の料理で言うと、アサリの酒蒸しのようなものか。

海外のことになると、
「日本で言うと・・・」みたいな表現になるのは
なぜだろう。
以前、初めてニース海岸に行くことになった時、
ニース海岸に行ったことのある人が、
「あ〜、ニースね、あそこは日本で言うと
 網代みたいなとこかなぁ」
などと言う。
行ってみたら、ニース海岸に干物は干してなかったぞ。

ハーグの朝は6時には明るくなっている。
なのに、夜の10時を過ぎても真昼のよう、
やっと10時半を過ぎる頃になって夕暮れ状態となる。
働き者の日本人は、
ゆえに15時間も動き続けてくたくたになってしまう。
これが冬になると、今度は夜が明けたと思ったら
たちまち夕闇が迫って来るんだとか。
3時間労働なのかねぇ。

このマジックの祭典は3年に1度きり、
我々はこの大会でしか巡りあえない多くの友人たちを
無意識に探しているよ。
「ハロー・タイム」、多くを語る訳ではないけれど、
互いの姿を認めると走り寄ってハグをする。
時にはキスもする。
久々の出会いと互いの無事を喜びあうのだ。
その際、つい、
「あれ、あのいつもの貴方の友人は一緒じゃないの?」
などと聞いてしまったりする。
するとマジシャンは顔を曇らせて、
「彼は2年前に、
 『ブロークン・ウォンド』になってしまったよ」
と言う。
『ブロークン・ウォンド』、『折れてしまった魔法の杖』、
つまりは「彼は亡くなってしまったよ」ということなのだ。
それを知っている人は、
そこに居ないマジシャンの消息を
聞かなくなってしまったよ。
その場所で、再び逢えた幸運を喜び合えばいいのだ。
でも、3日目、4日目となると、心の隅で
「まだ、あの人に逢えないでいる。まさか」
などと心を曇らせるよ。

ホテル近くのスーパーで買い物の帰り道、
たぶんドイツ人観光客だろう男性二人連れに、
「この辺に、教会はありますか?」
などと尋ねられたよ(たぶん、そう言ったと思う)。
分かる訳ないよ、おいらだって観光客だもの。
ローマを歩いている時にも道を聞かれたよ。
ラスベガスでは、
「今日、○○スーパーは開いてるかい?」
などと尋ねられたこともあったよ。
そんなに地元に溶け込んでしまっているのだろうか。
これからは、メガネをかけ少し出っ歯にして
首からカメラを提げて歩いてみようかな。

この大会のメインは、日本からの参加組も含めて
150組以上のマジシャンによるコンテストである。
もう、次から次へとマジックが続くのだ。
それはまるで永遠に思える程だ。
そんなコンテストを、
西田ひかるちゃんとボンヤリ客席で見ることになった。
すぐにウンザリしてしまうかと思いきや、
なんだか楽しそうだ。
失敗ばかりのヘンテコなマジシャンには大爆笑したりして、
それなりに興味深そうに見ている。
そうして隣のおいらにつぶやいたよ。
「ねぇ小石さん、これってなんだか
 『欽ちゃんの仮装大賞』みたいね」
そうか、この大会は3年に一度だけ
ヨーロッパの各都市で開催される世界最大のマジック版、
『欽ちゃんの仮装大賞』だったのか・・・。

外国に出かけると、どうしても日本食が懐かしくなる。
それは高齢者になるほど顕著なようだ。
大会3日目にしてお誘いがあったよ。
「ねぇ、今夜あたり、日本食レストランに行きませんか」
T先生ご夫妻、O先生ご夫妻とともに、
『げんき亭』というレストランに行くことになった。
冷ややっこ、イカ納豆、寿司、蕎麦など、
本当に日本の味そのもの、
ビールも日本の銘柄が揃っている。
感動しつつ大いに飲みかつ食べてしまうのであった。
翌日、お腹がゆるくなってしまった。
これまでこちらの食事ばかりで平気だったのに、
日本食を食べた途端にゴロゴロ。
まぁつまりは久々の日本の味に、
つい食べ過ぎ飲みすぎの結果だろうけど。

さぁいよいよ、我々ナポレオンズの出番がやってきたよ。
なんと今回は、ゲスト招待マジシャンだけが出演する
ナイト・ショーの司会という大役を任されてしまったのだ。
ヨーロッパ各地から選ばれたマジシャンたち、
日本から参加した司会者、
こうなると問題は言葉の壁である。
フランス語、イタリア語、オランダ語、ドイツ語、英語、
それらが自在に飛び交っている。
我々ナポレオンズも、当然その輪に加わって話し合う。
まるで分からない言葉でも、
ステージの上だとなんとなく理解できてしまう。
これこそがマジックなのかもしれないなぁ。

そうしていよいよドキドキの出演、
2000人の観客の前でのナイト・ショーが始まった。
いったいどんなマジシャンが?
我々ナポレオンズの司会は上手くいったのか?
それはまた次回のリポートだよ(ひっぱるなぁ)。

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2003-08-14-THU

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