MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

お日ぃさま、ピッカァ〜で
たまらなく暑かったりしたかと思うと、
ヒ〜ンヤリ妙に涼しい風が吹いたり、
いったいどうなってるんだ?
などとぼやきつつお送りする
好評(と思ってるんだけど)の続編の始まりはじまり〜。

続「納涼・北海道には本当の冬があったよ。」

厳冬の北海道、雪は空から降ってくるという、
それまでのイメージなど凍りついてしまう。
雪は小さな結晶となって空中に漂い、
空気ごとフリーズされたようだ。
「寒い」という感覚ではなくて、
「痛い」刺激となって身体に沁みてくる。

フロント・ガラスを白く染めたまま、
ナポ号はボナ植木の奇跡の運転で
修理工場にたどりついたのであった。
「本当にこれで苫小牧から来たんかい?
 ウソでないかい」
おじさんは笑いつつスパイク・タイヤに代え、
北海道仕様のたくましいワイパーを付けてくれた。
生まれかわったナポ号は、
スピードを上げて最初の目的地である
「ホリディ・イン上島」という
シアター・レストランに向かった。
あっけないほど短時間で到着した我々を迎えてくれたのは、
春のように暖かい控え室でありました。
これまでの苦難の道を思うと、
そこはまさに桃源郷、
意味もなくヘラヘラと笑いさえこみ上げてくる。
人間、極度の緊張から開放された直後はこうなるものです。
さて、桃源郷には天女が付きものです。
我等の隣りの楽屋には
「マルキーズ」というダンス・チームがいて、
「キャー、だ〜れぇ?
 こんなとこにパンティー置いたの」
「あたしじゃないわ、だってあたしのはホラ、
 こんなに可愛いんだもの、ウフッ」
「あ〜ら、でもあたしのブラも可愛いわよ、ほ〜ら」
キャピキャピが6人もいらっしゃっていて、
春の桃源郷を甘い果実の香りで熟めつくして
いらっしゃるのであった。
我々は更にヘラヘラ化するのであった。

ステージは盛り上がって終了、
上島系列のレストランで遅い夕食となった。
出演者用のフリー・チケットを支給されている我々は、
食欲のままにあれこれ注文、これが旨い!
ハンバーグも旨いが、
付け合わせのジャガ・バターが美味なのだ。
北海道は食材の質が良いからだろうか、
どれもこれも実に旨いのでありました。
宿泊先は車で20分くらいの従業員寮であった。
大きなお風呂の窓の外に、大きな大きなつららが見える。
それを見ながらのお風呂、う〜ん、たまんないっす。
「おはようございます!」
ゆっくりと朝寝坊を楽しんで、
遅い朝ごはんをいただきます。
ごはん、みそ汁、シャケ、まぁ普通の朝食でありました。
し、しかし、テーブルの真ん中のどんぶりに
ツヤツヤと輝いているのは、
「ん? まさかイクラ?」
「そうだよ、まだいっぱいあっから、
 た〜んと食べるんでないかい。」
あの高級食材、夢にまでみたイクラを、
好きなだけ食べてもいい?
ア〜ハッハッハッハハハハァ・・・。
生きててよかったぁ。

1週間なんて夢のように過ぎてしまいました。
さぁ次の目的地、函館へと旅立ちました。
ナポ号は力強い走りで凍土を駆けて行きます。
揺られている脳裏には、熱かったステージや
「やだぁ、見たでしょ。
 ナポさんたら、エッチィ〜、ウフッ」
甘酸っぱい余韻が色濃く残り、
胃袋にはあったか〜いごはんに
たっぷりとのっけたイクラを
ハグハグと頬張った悦びが漂います。
さぁ、函館にはどんな北海道が待っている?
やっぱイカ・ソーメン? それともウニ? 

函館の仕事場は、キャバレーでした。
駅裏にポツンとありました。
名前は忘れました。
「えぇ? 誰? ナポレオン?
 なんだ、今日のショーの人?
 ダメだよ、そんな店の前に止めちゃぁ。
 車はこっちこっち」
数台の車が雪に埋もれている駐車場に入り外に出ると、
海風が骨まで沁みるようです。
ダンシング・チームはいないようで、
かわりに男4人のバンドさんがいました。
「ややこしい譜面はダメだからね」
初日のステージは何事もなく、
静かに終了しました。
反応もなかった・・・。

宿泊先は、近くの旅館でした。
そうだよ、これからがお楽しみ、イカソーメン?
それともウニ?
まぁ旅館にも色々あるけど、小さいねぇ。
旅館というより、アパート風。
いやいやまぁいいじゃありませんか、
とにかく暖かいお部屋で休んで食事!
部屋が寒い、冷えている。
吐く息、白いんでないかい。
小さなフトンが部屋のほとんどを占めている。
隅に石油ストーブがある。
カチャカチャ、ん? つかない。
「先に飯にしよう」
イカ・ソーメンがない。ウニもない。
イクラなんてどこにもない。
冷や飯に具のないみそ汁、以上。
いいよ、寝よ。
部屋に戻ってストーブを点けて・・・。
点かない、おかしいなぁ。
「ストーブが点かないんですけど」
「あぁ、石油は別料金でねぇ。どうする?」

(またまた、つづく)

2001-08-26-SUN

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