MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

第13回
「マジシャンって、金持ち? 」


マジシャンに、してはいけないことがひとつだけあります。

いろいろ質問するのは、やめて下さい。
露骨に聞く人って、いますよね。
「好きなことやってて稼げる、良いねぇ。
 で、年収はいくら? 」
仕方ないから答えます。
「3000万、ウォンです。」
多くのマジシャン仲間がいます。
まさか「ねぇ、年収は? 」なんて聞きはしないけど、
同業だから何となく分かります。
もちろん、ピンキリなんですけど。
ちょっと前、あるプロデューサーに
「なるべく、なるべく貧乏なマジシャンを紹介してよ。」
とのご依頼。
おいおい、「こいつが世界で一番、
ビンボーなマジシャンです。」なんて
紹介できる訳ないでしょ!
少なくともマジシャンは、貧乏に見えたら
失格だと思うのです。
なんだか、辛いイメージ表現になってしまいましたが、
たとえ財政がひっ迫していても、
ニッコリと微笑みつつハトなんか出したりするのが
マジシャンの務めであります。
さらに辛いことになってきた。

プロデューサーの依頼には、結局応えてしまい、
あるマジシャンを紹介しました。
もちろん、紹介者である僕の名は伏せて。
「いやもう、最高、理想的! 」
さぞかし、素敵なビンボー・ライフだったのでしょう。
「マジシャンの生活はつらいよ」と
ぼやいている訳ではありません。
世代間の文化格差が広がりつつあり、
音楽の世界は特にその傾向が激しいようです。
その点、マジックは特に老若男女を問いません。
子供会だって老人会だって楽しんでもらえます。
需要が結構あって、優雅に暮らしているマジシャンが
ほとんどなのです。どうか誤解のないように。
まぁでも、好きなことをやって生きて行くことを
選択したのですから、多少のビンボーもやむをえません。

もし、もっと余裕ができたら、
箱ネタはルイ・ヴィトンかなんかに特注します。
ステッキはプラチナ・ボディにダイヤモンドをちりばめて。

でもネタそのものはすごくセコいマジックだったりして。
そんなステージが、現在の僕の理想なのです。
お手本、とは言えないけど、
僕の大好きなエンターティナーがラスベガスにいたのです。

リベラーチェというピアニストです。
なんせキンキラキンのロールスロイスでステージに現れ、
演奏はそこそこにえんび服やネックレスが
いかに高かったかをぼやき続けるのです。
演奏の調子がイマイチなのは、
右手の薬指の巨大なダイヤが重すぎるせい、
などと言いたい放題。
現実離れした世界、夢の世界をを見せてくれるのです。

「イリュージョン」という言葉があります。
「幻想」という意味の英語です。
マジックにピッタリの表現ですよね。
マジシャンは観客にいかに幻想を味あわせるかが、
勝負どころでもあります。
幻想の度合いが深まれば深いほど、
マジックの不思議さも増してゆくはずです。
しかし、マジシャンもやはり現実の世界で生きています。
そして現実はやはり厳しいものです。
業界の知人に仕事を頼まれ、
一生懸命に幻想的なステージを務め、
楽屋に戻ったらギャラと知人が消えていた、
なんて悲しい現実もありました。
でも、ギャラを持ち逃げする現実の方が
もっとつらかったんでしょうね。

さて、ここで「飲み会イリュージョン」を。
わり箸を割って1本を相手に渡し、
もう1本は自分で持ちます。
「これはバランス芸です。」と言いつつ、
人差し指と中指の上に乗っけます。
相手は絶対に出来ません。



始めは、本当に人差し指を中指の上に、
わりばしを乗せます。
(わりばしの真ん中くらいなら簡単です。)
それをどんどん端にして行くのです。

★トリックは?
  自分の わりばしだけ、あらかじめ、
  ささくれを作っておく。(こっそりと)


これを人差し指と中指ではさむだけ!!
ゴメンネ。

2000-10-29-SUN

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