MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

第12回
「マジシャンを信用しましょう!」


マジシャンは信用の薄い、うす〜い商売です。
よく聞くジョーク、
「マジシャンが来たぞ、サイフに気をつけろ!」
スリじゃないんですよ! 
「マジシャンだ、ダマされないようにしろ!」
だからサギ師じゃないってば!
ホラ、信用なんてまるで無い。
たとえ冗談だとしても、何回も聞いてるとねぇ・・・。

麻雀をやってて、かなり負けている状況の時、
偶然に天和が出来ていたとします。
普通の人だったら
「やったぁ、テンホーで〜す!」ですよね。
これをマジシャンがやったら、さてどんな反応になるやら。
「おいおいダメだよ、手ワザつかっちゃぁ。
 なんか、やったんだろ?」
などど言われるに違いありません。
ある先輩マジシャンは、せっかく天和が出ていたのに、
泣く泣く手を崩したそうです。

ポーカーだって同様です。
夢のロイヤル・ストレート・フラッシュが来たって、
喜ぶ前に悩まなければならないなんて。
あの江國滋先生から生前伺った話。
カード・マジックが得意だった先生が、
師と仰ぐプロ・マジシャンに
カード・マジックを見せたのです。
しかし、緊張したせいか相手の引いたカードが
分からなくなってしまった。
仕方なく、当てずっぽうで「ハートの8でしょう?」
なんて言ったら当たってしまったんです。

ところが、これが不幸の始まり。
「そのトリックをぜひ教えてくれ」
相手はプロのマジシャンです。
そのプロが分からないのだから、
すごいトリックに違いない、もう知りたくてしょうがない。
でも江國先生はたまたま当たっただけなので
「いやぁ、実はまぐれ当たりなんだよ」
と答えるしかない。
相手は、そんな話を信用などするはずもありません。
「江國さん、貴方には今までさんざカード・マジックを
 教えてきたはずでしょ。
 お返しに教えてくれてもいいじゃありませんかっ」
江國先生は結局、師を失ったのです。
マジシャンは、マジシャンにも信用が薄いのであります。

その儚くも脆い立場を、
マジシャンは無意識のうちに感じているのか、
簡単なトリックをいつも用意しています。
仕事先のスタッフ、タレントに、
頼まれもしないのに教えたり上げたりするのです。
その行為は、何か目的を持ってする訳ではない。
そうしないと心のバランスが保てないのです。
ほとんどの人々が知り得ない秘密を知ってしまった悦びは、
いつしかバラすことが出来ないプレッシャーとなり、
「たいしたことないよ、全部バラしちゃいなよ」
「もしバレてしまったら、お前の価値なんてパーだぞ」
心の奥底で葛藤が始まるのです。

葛藤の後の落着き先は、
「少しだけバラしちゃおう」
であります。
「ホラ、簡単でしょ、どっかで貴方もやってみて」
な〜んてセリフの陰には、
マジシャンの自暴自棄の末の結論があったりするのでした。
17世紀に、フランスで活躍した
ロベール・ウーダンというマジシャンがいました。
彼はマジック界の革命児とされています。
彼はシルクハットにえんび服、ステッキというスタイルで
マジックを演じた世界初のマジシャンなのです。
そう、現在のマジシャンのイメージを築いた人物なのです。

彼以前のマジシャンは、Mrマリックさんのような
(ごめんなさ〜い、また嫌われるなぁ)
つまりは、うさんくさいスタイルでした。
ロベール・ウーダンは正装である夜会服、
明るく照らされたステージでマジックを演じたのでした。
それまでの怪しげな魔術を、
誰もが楽しめるエンターティメントに高めたのでした。
彼の功績ははかりしれないのです。

フォローする訳ではありませんが、
Mrマリックさんは新たな革命児でもあります。
ウーダン以降の、健全ではあるが
変わり映えのしないマジックを
「超魔術」というブームにまで
昇華してしまったのですから。

さて、ここで「超魔術」風マジックを! 
*指輪でもコインでもOK、右か左に握ってもらいます。
 見ないで当ててしまいます。
*「どちらかの手に指輪を握り、持った方の手を
  額に押し当てて下さい。
  そして精神集中しましょう」
*「その後、静かに両手をテーブルに置きましょう」
*指輪を持っているのは「右(左)です!」

*解説:手の色の白い方に指輪を握っています。
    降ろしている手と、
    上げている手の血色の違いで分かるのだ!
    ぜひ!!!

2000-10-22-SUN

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