MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

第10回
「みんなでプロ・マジシャンになろう! 」


ナポレオンズは、二人組です。
背の高い方がボナ植木、
二番目に背の高い(背が低い方の人、という表現は
やめて下さい)私が、パルト小石と申します。
この芸名は、かのフランス皇帝であった
ナポレオン・ボナパルトから、
勝手に拝借をしたものなのです。
十数年前にフランスのアンバリッドまで出向き、
ナポレオンの墓前で無断借用を深く詫びておきました。
ちゃんと礼儀を尽くした立派な芸名なのです。

さて、そんなナポレオンズのリーダー、ボナ植木は、
都内のとある下町の金庫屋さんの三男坊です。
金庫屋さんの両隣りは銀行で、
「中身(現金)は両隣りにあって、
家は外側(金庫)しか無いよ」
なんて言ってた親父さんの趣味がマジックで、
その影響が大きかったのでした。
三男坊は幼いころから、
プロ・マジシャンを夢見ていたのです。

植木家の長男は芸術家でした。
数年間、パリ暮らしをしていました。
次男は大学の探検部出身、
これまたラップランドだのシベリアだの海外旅行ばかり。
三男のボナ植木がマジシャンになることを表明した時、
母親は反対するどころかすごく安心したそうです。
「三男だけは近くで暮らしてくれる」
彼女にとってみれば、芸術家や冒険家と違い、
マジシャンの仕事場は
上野や浅草の寄席以外、考えられなかったのです。
そんな三男、マジシャンに国内津々浦々どころか、
モロッコやチリからまでも仕事が来るなんて、
想像も出来ないことだったのです。
そんな訳で、誰の反対も無く、
卒業後すんなりとプロ・マジシャンになりました。

さて、ナポレオンズの社長の重責を担うパルト小石は、
岐阜の山村の生まれ。
大学卒業後、スカウトされて
ある企業のセールスマンになるも、
嫌ぁ〜な上司が我慢できずに半年で退社という
スピード・ドロップ・アウト。
植木はプロへの準備を着々と進め、
あとはコンビとなる女性アシスタントを捜すだけ、
という段階にまで漕ぎつけていたのでした。
マジック界の先輩から、様々な女性を紹介される
(まるでお見合いのようです)のですが、
どうにも「この人!」なんていう出会いがありません。
とうとう、最後の女性と面接という場面に、
小石が立ち会ったのです。
「どうにも、なんだか気が合いそうもない女性だねぇ。
けばけばしいし」
なんて言っているうちに
「じゃ、あんた、
しばらくアシスタントやってくれない? 」
との植木の要請に、ふたつ返事の小石だったのです。

人生って、分からないもんですね。

僕らの先輩プロはというと、
やはり「弟子入り」というパターンが多いようです。
落語家の皆さんと同様、師匠のところで
身のまわりの世話から礼儀作法、ネタまで教えられたり、
盗んだりして一人前にしてもらいます。
最近はというと、海外のマジック情報が
湯水のように流れ込んで来る時代、
独学で習い、プロになるケースがほとんどです。
ゆえに、「松旭斉○○」等の
ブランド名を名乗るプロも減少しています。
毎年、我々のところにも
弟子入り志望の人々がやってきます。
しかし、全部断ってしまいます。
教えたり育てることには、まるで自信がありません。
他のマジシャン(例、プリンセス天功さんのチーム)を
紹介するのくらい僕らの出来ることです。

マジックは、老若男女を問わず楽しんでもらえ、
海外公演のチャンスも多くあるという、
とても素晴らしいエンターティメントです。
多くの皆さんにプロになってほしいと、
切に願っています。
かなり、話が矛盾してますよね。

「皆さん、プロになりましょう」
「弟子を育てる気は無い!」

すいません、僕自身もこの矛盾を
いまだ解消できずにいるのです。
まぁ、腕に覚えのある人は、
かまわずプロ宣言をしてしまいましょう、
なんとかなるよ。
(無責任の極みですが、こんくらい、
いいかげんで楽天家がプロ向きかもしれません)

さて、ここで絶品のトリックを!と言いたいのですが、
今回は無責任ついでに
面白トリックを教えてくれませんか?
ほぼ日読者の皆さん!
ナポレオンズのHPは
http://www.bekkoame.ne.jp/i/tvland/
NAPOLEONS/japanese/home.html

e-mail:tvland@i.bekkoame.ne.jp
どうぞ、よろしく!!!

2000-09-23-SAT

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