MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

第6回
<不思議なマジック・マニアの世界>

茅場町の、とある分かりにく〜いビルの3階に、
マジックランドというマジックショップがあります。
ちょっと暇があれば、僕らマジシャンは
マジックランドに向かいます。
別になにか目的が無くても、マジックに関する情報が
得られる、いわゆる新ネタをゲット出来る
実にありがたい場所なのです。
特にマジック・マニアにとっては、
新ネタを早く多く知っていることこそが、
関係者の中のステイタスに係わるのです。

中央の椅子に、数人のマニアが座って
さっそく腕前を披露し合っています。
「へぇ〜、そのパームはナチュラルで分かんないねぇ」
「それってエルムズレー・カウントのバージョン? 」
なんなんだ? 
マニアにしか分からない会話ばかりが延々と続きます。
ショート・コントの将棋のシーンで、
先手が歩をひとつ前に動かすと、
相手が「参りました」と応えてチャンチャン!
なんていうのがあります。
マジック・マニア同士の会話は、
ほとんどそんなコント状態なのです。
トランプを広げて「1枚選んで」
「う〜ん、巧い! それ、不思議だよ」
おいおい! まだなんにも起こってねぇじゃねーか! 
と思わずつっこみたくなるシーンばかりです。

どこかでマジックを見せて、
ひどい反応で傷ついたマジシャンも、
ここへ逃げ込めばもう安心です。
みんなで傷を舐めてくれるばかりか、
もっと悲惨な体験を語ってくれたりもするのです。
「そうかぁ、次はもっと練ったあのトリックで・・・」
そうして、さらに深手を負ったりする、う〜む。

アマチュアのグループも、全国津々浦々に存在します。
結構、組織化されていて、発表会なども
頻繁に開催されているのです。
厳しい練習は当然で、年配の方が口を極めて
罵倒されるシーンを見たのも一度や二度ではありません。
「遊びでやってんじゃ、ないんだぁ!」おいおい、
趣味でやってるんじゃなかったぁ? 
会社ではさぞかし偉かった人が、若輩者に頭を下げ、
「もう一度教えていただけますか? 」
などと懇願したりします。
さぞ辛かろうと思うのに、
辞めたりする人はごく稀だったりします。
それ程の魔力が、マジックにはあるのでしょう。
始めは、こんな難しいワザは出来っこない、
というような技法が、ひょんなことで出来、
「えぇぇ〜? 」という反応を得ます。
その時の達成感、高揚感は、言葉では言い表せない
エクスタシーとなるのでしょう。

マジシャンの世界にも、知的所有権という言葉が
やっと浸透してきたようです。
特定の技術に、個人の名前が冠せられることもあります。
世はインターネットの時代、
新しい不思議を創造できたら、
世界中にあっと言う間に広まります。
名声とともに、海外のマジック・グループ
(世界中に無数に存在します)にも
引っ張りダコになることでしょう。

かつては、欧米のマジシャンの作品を見て
コピーするのが常とう手段でした。
蛇の道は蛇、マジシャンがマジックを見れば、
やり方はすぐに分かるものです。

ビデオが無かった時代、
たとえコピーしても、
すぐに抗議されることはありませんでした。
また、外国のマジシャンが来日することも稀で、
日本がコピー・マジシャンの天国であることも、
知られずにいたのです。
ビデオがあっという間に普及、
また日本経済の発展とともに、
高名な海外のマジシャンが続々来日し、
天国は突然、終えんを迎えたのです。

まぁしかし、懲りない人はいるものである。
マジシャンから、
コピーされたことへの長文の抗議文書が届きました。
受けとった彼は、すぐさま「コピーして」
皆に配布しました。
やれやれ。

さて、ここで数字トリックを! 
適当な2ケタの数字をメモしてもらいます。
次にその数字の1の位と2の位を
ひっくり返してもらいます。
どちらか大きい数字から小さい方を引いてもらいます。
出た答えの1と2の位を足してもらいます。
すると答えは必ず9です。

(例)      52
        −25
      −−−−−
         27
           2+7=9

意外と大人も驚いたりします。
ぜひお試しを! ではまた次回。

2000-08-10-THU

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