「森繁さんのあれをもう一回聞きたい」
と、みなさんから声をいただきます。
森繁さんの詩の朗読はCDになっています。
森繁久彌「愛誦歌集」っていうんですけどね。
森繁さんが愛して、暗唱した歌集です。
それを聞いてると、天才だとかなんとか言う前に、この人の人生は、もしかしたら、わたしたちとはぜんぜんちがうものだったのかもしれないと思うようになりました。



[糸井]
はい。

[黒柳]
このただならないうまさは、なんだろう。
わたしたちは88になってもああいうふうには詩は読めない。
やっぱりこの人は、何かあるんでしょう。
森繁さんは戦争中、NHKのアナウンサーとして満州にいらっしゃって、日本に引き上げていらっしゃいました。

[糸井]
うん。

[黒柳]
そこでおそらく、すごいものを見たんだろうとわたしは思っています。
ずいぶん長く引きあげまでいらしたみたいです。
森繁さんは、亡くなるまで一度も話してないです、戦争のことを。
何度もトライしましたが。

[糸井]
はい。

[黒柳]
きっと何かをすべて見て、日本に帰ってきて、俳優になったときに、もう、笑うことでいいんじゃないか、明るくいくことでいいんじゃないか、と思ったのではないでしょうか。

[糸井]
うん。

[黒柳]
そこからはもう、
「一回、どう?」だったんだけど(笑)、ああいう詩を読むときは、ほんとうに森繁さんだけの世界があってだれもそばに寄れないような雰囲気になりました。
それはただのテクニックやなんかじゃないな、と思うんですよ。

(つづきます!)


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