[糸井]
セオリーズ・フォロー・イベンツ。

[上田]
たとえば、ドラッカーが30年以上も前に書いてるんだけど、
「多国籍企業」というものが、われわれ人類にとって、有益な存在であるのか、それとも、困った存在であるのか。

[糸井]
はい。

[上田]
どちらにしても、
「多国籍企業というものが意味を持つとすれば それは 多国籍企業が『多国籍だから』ではない」と、そう、書いているんですよ。

[糸井]
‥‥つまり?

[上田]
世界のマーケットはグローバル化しつつあり、ワールドショッピングセンターができていく。
そういう現状を反映した存在だからこそ、多国籍企業は意味を持ってくるんだ、って。

[糸井]
なるほど、重要なのは「事実」なわけですね。
ここでもまた。

[上田]
しかもこれを、30年以上前にですよ。
グローバル企業、グローバル経済という言葉がなかった30年前に、それに相当することをドラッカーは、先取りで言っちゃってたんです。

[糸井]
その後の歴史を見れば、まさに「理論」が「現実に従」っていったわけだ。

[上田]
Theories follow events.



[糸井]
はー‥‥。

[上田]
この言葉をねぇ、ごく最近めっけまして。

[糸井]
うん、うん。

[上田]
まぁ‥‥こんなに長くやってて
「ごく最近めっけた」なんて言うのも、無責任な話なんだけど(笑)。

[糸井]
いや、でも、すごいことですよね。
いまだに「見つけられる」というのは‥‥。
それだけ豊かだってことですから。

[上田]
でもさ、おもしろいのは、ドリスって、ドラッカーの奥さんがね、科学者なんですけどね。

[糸井]
はい、はい。

[上田]
ドラッカーがしゃべってるのをはたで聞いていてときどき聞こえなくなるってんで、しゃべってる人間が
「自分がどのくらいの大きさで話しているのか わかるような装置」を発明して、売り出したの。

[糸井]
ほう。

[上田]
最終的には、80歳くらいで起業するんですけど。

[糸井]
その奥さんもすごいなぁ(笑)。

[上田]
そのドリスがね、雑誌のインタビューで、
「事業を起こし、経営していくうえで ご主人が 有益なアドバイスをくれたんじゃないんですか」って聞かれたときに、
「あの人は、実務的なことは全然ダメなの」って(笑)。

[糸井]
へぇ‥‥「ドラッカー」なのに。

[上田]
「あの人は、何の役にも立たなかったのよ」って(笑)。



[糸井]
ああ‥‥いい話ですねぇ(笑)。
<つづきます>


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