株式会社ほぼ日のロゴマークができました。

2016年12月、
株式会社東京糸井重里事務所は
株式会社ほぼ日になりました。
あたらしい社名のロゴマークを、
佐藤卓さんにデザインしていただきました。
糸井重里は、ロゴマークに
どのような考えを乗せたのでしょうか。
佐藤卓さんと糸井重里の短い話を
連載にしてお伝えします。

佐藤 卓さんのプロフィール

第4回 ロゴマークに似合う自分たちに。

糸井
卓さんに最初に出していただいた
12案のなかでも、
このロゴマークが特に、
先に向かって広がっていくような感じがしました。

ロゴマークが示す意味がどうのこうの、
というんじゃなくて、
ぼくらのたどってきた道のりそのものが
ロゴマークになっているという感じです。
それはとてもうれしいですよ。
佐藤
どの案も、もちろん丹精こめて作って
提出しましたが、
これに光をあてていただいて、
うれしかったです。
糸井
悩みましたよ。
パッと見たときの印象を大事にする、
ということも当然あるし、
じっと置いておいたらどうなるだろう、
という考え方も、両方ありますよね。
佐藤
ええ、「ハレ」と「ケ」ですね。
つい「ハレ」に目がいきがちですが‥‥。
糸井
トーナメントみたいにして絞っても、
絞らなかった側にアタリがあることも
充分考えられます。
デザインって、
1回戦で負けたやつが結果的にはよかった、
なんてこと、ありますよね。
佐藤
あります、あります。
糸井
甲乙をつけていけるものではないんです。
そこがけっこう大事で、
たとえば人材もそうなんじゃないかな?
勝ち抜いた人がいいとは限らないんです。
特にほぼ日は、
「ハズレもアリだよね」という会社だから、
さらにわからなくなっていく(笑)。

そのなかで、今回決定したこのロゴマークには、
ずーっと、さわやかさがあったんですよ。
ほかの案に心が傾いたときも
「ぼくじゃなくてもいいんですけどね」という感じで
ずっとさわやかに、そこに「いた」。
うん、そういう子がいいんだよ! と
ぼくが叫んで振り向いて(笑)、
このロゴマークになりました。
佐藤
うれしいです。
このロゴマークに
魂を吹き込んでくれたのは糸井さんですね。
糸井
互いにコーチングしてたのかもね。
佐藤
ええ、完全にそうだと思います。
糸井
「こういうふうに12案ある、これを見てどう思う?」
と、卓さんはぼくをコーチングしてくれた。
ぼくは野放し状態で選ぶことで
集中したり心が揺れたりした。
そうして選んだことを、卓さんが受けて、
「そうかぁ」と納得して
ブラッシュアップして‥‥。
会社がどうありたいか、とか、
なぜこれを選んだか、というような意図を
そんなに話し合わなくても、進みましたよね。
佐藤
ええ。
糸井さんがどれを選ばれるのか、
ぼくはまったくわかってなかったので、
どこにフォーカスされるのか、
とてもたのしみでした。
このロゴマークに光があたって、
なるほど「この子なんだな」とわかった。
この子のよさを磨いていくんだ、という
喜びがありました。
糸井
12個のロゴマーク案を並べたところで、
会社のみんなに
「どうなの?」と訊いたときは、
みんななかなかこの案を選んでなかったですね。
佐藤
そうそう。
ぼくも、それをハッキリ覚えています。
これ、あまり話題になってなかった。
ほぼ日
でも、決まったら‥‥
「これを糸井さんが選んでほんとによかった」
と、みんな口々に言うんです。
「あぁー」「よかったよかった」なんて
喜んでいました。
佐藤
ああ、よかった。
糸井
ロゴマークって、
そういうことを言われるのが、
いちばんいいわけですよね。
佐藤
もう、ほんとに何よりも、そうですね。
糸井
このロゴマークは、視認性がしっかりしてるのに、
斜めだというあたりに、
「君たちは何をしてくれるんだろう」
という期待感がある。
自分たちにとってもいいマークだと思います。
それをみんなは感じたんでしょうね。

この時期、冒険したい気持ちと、
組織として守備力も整えるという気持ち、
当然、両方があります。
これからの会社はきっと、
建物がお城なんじゃなくて、
名前そのものがお城になっていくと思います。
佐藤
確かに。
糸井
お城というと、
戦う姿勢の象徴のように思えますが、
そうではなく、自分たちの本拠地、ホームであり、
何かあったときには守るべき場所で、
大水が来たような日には、
みんながそこに避難できるような場所。
ほぼ日はそういう場所を築きたいです。

このロゴマークが呼び込んでくれる
人びとの気持ちが、これからのぼくらの
財産になっていくと思います。
自分たちが、もっとどんどん
よくなっていけるという気分もあるし、
たのしい感じも充分あります。
佐藤
そう、ありますね。
ほぼ日の既成概念にとらわれないユニークさを、
何らかの形で感じられるようにしなきゃいけない。
だけどほぼ日は「遊び」だけの場所じゃない、
みんながいざというときに
頼れるような場所であることも表現したかったですね。
糸井
わかりやすい表現として、
「中途半端はダメだよ、思い切ってバッと行くんだよ」
と言うこともできるし、
そのほうが、ストーリーとしては
おもしろいと思います。
でも、そういうものが捨てられてきた現実も
ぼくたちはいっぱい見てきたでしょう。
佐藤
ええ、そうですね。
糸井
「思い切ってやった、そのあとはどうなった?」
と考えてみると、
そのままの勢いでずっと行くなんて
やっぱり不可能なんです。
それよりも、最初から、
まっすぐの顔で歩いていけるほうが
つよいんじゃないかな。
ほぼ日
はい。スタッフとしても、そう思います。
ロゴマークができたことで
「こういう働き手になろう」みたいな気分にも、
なりました。
糸井
そうだね。こういう社員、いいね。
このロゴマークが似合うのは
どういう会社かな、と思ったら、
これからまたたのしいと思います。
卓さん、ほんとうにありがとうございました。
佐藤
ものすごくうれしいです。
糸井
ありがとうございました。

佐藤卓(さとう・たく)

グラフィックデザイナー。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業。
1981年に同大学院修了。
株式会社電通を経て、
1984年に佐藤卓デザイン事務所設立。
「明治おいしい牛乳」や
「ロッテ キシリトールガム」などの
商品デザインおよびブランディング、
NHK Eテレで放送中の『デザインあ』の総合指導や
『にほんごであそぼ』のアートディレクション、
ほぼ日手帳のデザインディレクション、
21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるなど、
多岐に渡って活動中。

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