株式会社ほぼ日のロゴマークができました。

第3回 ほぼ日に隠れていたもの。

佐藤
ほぼ日はまた、いろんな
すばらしい方々とコラボレーションで
仕事をしていらっしゃいます。
糸井
確かに、うるさがたが山ほどいます。
佐藤
センスのある、すばらしい人たちが、
ほぼ日のまわりにはいっぱいいて、
たくさんの仕事を進めている。
もちろんダブルネームでロゴマークが使われるし、
いろんな場面が頭をよぎりました。
そして、さらに悩みました。

しかし、作業はたいへんであればあるほど
おもしろいし、喜びにつながるものです。
難しいと思いながら、顔がニコニコしちゃう。
糸井
最初に12の案を出されましたが、
ひと月ぐらい、日下部さんとふたりで
お考えになったんですか?
佐藤
それぞれぼちぼち考えました。
ぼくはまさにほぼ日手帳にスケッチして考えました。
去年の手帳を見ると、いろんなところに
ほぼ日のロゴマークのアイデアが
書きつけてありますよ。
糸井
ああ、あの方眼ページに。
佐藤
正方形を斜めに追っかけていくと
台形ができますし‥‥
あの手帳の方眼は
ロゴを考えるのにかなり役立ちます。

「ほぼ日」は3文字で、しかも、
「ぼ」は「ほ」に濁点をつけただけですから、
「ほ」と「日」のふたつの要素を
クリアすればいいということになります。

でも、ほぼ日って、
すごくユニークな文字の並びなんですよ。
縦の棒が、支柱のように並んでいるんです。
これが「ああ日」だったら、
このロゴマークはできませんでした。
糸井
「ほぼ日」という字の中に
6本の柱があることは、ぼくも考えついていました。
縦棒6本が、記号のように見えればいいかな、と。
佐藤
それは、文字の並びが持ってるポテンシャルです。
ですから、ロゴマークを作ったぞ、というよりは
「ほぼ日」の文字に隠れてるものを
見つけたという感覚です。
糸井
「ぼ」のハマらなさも、
おもしろいんでしょうね。
お茶目というか。
佐藤
そうなんですよ。
いたずらっ子みたいに、
「ぼ」がものすごいポイントになるんです。
濁点は、海外の人が造形として見たとき、
とても不思議に見えます。
これは文字なのか? って。
そのあたりも、いろいろ検討しました。

会社のロゴは紺色になるわけですから、
この紺とともに、ほぼ日カラーの黄色を
アイデンティティにするかどうか、
いまのうちに考えておいたほうがよさそうですね。
糸井
黄色、どうしましょうか。
ほぼ日のテーマカラーを
特に黄色と決めたわけじゃなくて、
なんだか自然とこうなっちゃってるだけだし‥‥。
佐藤
たとえば、名刺を作るときなど、
裏面に黄色をしくこともできます。
うーん‥‥やっぱりぼくは、
黄色がいままでのほぼ日の
財産を引き継いでるという気もします。
それが全くなくなるのは、もしかしたら
寂しいかもしれません。
糸井
うん、そうしようか。
名刺の裏は黄色にしましょう。
佐藤
ええ、それがいいのではないでしょうか。
いま糸井さんが
「黄色が自然と使われている」と
おっしゃいましたけれども、
これがアイデンティティだと
特に決めたわけではないところが、
すごくほぼ日らしいと思います。

自然とできてきた財産って、
いちばん理想的なのではないでしょうか。

佐藤卓(さとう・たく)

グラフィックデザイナー。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業。
1981年に同大学院修了。
株式会社電通を経て、
1984年に佐藤卓デザイン事務所設立。
「明治おいしい牛乳」や
「ロッテ キシリトールガム」などの
商品デザインおよびブランディング、
NHK Eテレで放送中の『デザインあ』の総合指導や
『にほんごであそぼ』のアートディレクション、
ほぼ日手帳のデザインディレクション、
21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるなど、
多岐に渡って活動中。

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