第4回 ベネズエラの高校生が フランス語で「ヨコヅナ」を歌う。
TOBI (ひととおり話し終わり、
 ちょっとブレイク気味な雰囲気のなかで)
これ、ぜんぜん吸わないんですよ、汗。
── テカテカしてますもんね、素材が。
TOBI この季節は、ほとんど命がけになります。
── じゃあ、フジロックに出たときなんて
大変だったんじゃないですか。
TOBI 冗談ぬきで、死ぬかと思いました。

ロックの人たちって
基本Tシャツにジーパンじゃないですか。
── たいがい「綿」ですよね。
TOBI 出てみてわかったんですが
あれ、やっぱり「汗吸うから」ですよ。

「汗吸う」ことを第一に考えてる。
── それに引きかえ
レ・ロマネスクさんのお召し物は‥‥。
TOBI 汗吸わないし、風も通さない。

肌によくないという以前に
もう、生き物にとってよくないですね。
── でも、世界的に有名な「パリコレ」で
ライブをやったというと
「すごいなあ」とは思うんですが
やっぱり日本人としては
「フジロックに出た!」と聞いたときのほうが
インパクトありました。
TOBI 身近なビッグイベントですものね。
── 何せ、レディオ・ヘッドとか
ストーン・ローゼズとかオアシスとか
レッチリとか出た場所ですし。
TOBI ケミカル・ブラザーズが「並び」でした。
── ですから、こうやってお話していると
いい意味でスッカリ忘れてしまうのですが
おふたりって
「ステージの上の人」なんですよね。
TOBI これまで、世界10カ国・30都市で
ライブ・パフォーマンスを行っています。
── フランス、日本以外にも
ドイツ、ベルギー、スイス、アメリカ‥‥。

でもやっぱり、パリが「ホーム」ですか?
TOBI いちばん演ってるという意味では。

ただ「芸術の都」とか言うだけあって
ライブハウスの照明係とかも
勝手にライト消したりするんですよ。
── え?
TOBI いや、「いいと思った」とかって言って。
── いいと思った?
TOBI そう、僕らが歌ってるとき、
「いま顔を照らしてほしい」というところで
パッとライト消したりするんです。

「いいと思った」とかって言って。
── それはつまり、「自分のアート表現」として?
TOBI そう。

だから、ライブ前にきつく言っておくんです。
「絶対に顔を照らし続けてくれ」と。
── クギを刺しとくわけですか。
TOBI 「君のアート表現は
 きちんと顔を照らした上でやってくれ」と。
── いろんなご経験をなさってるんですね。
TOBI 豚の丸焼きの前で歌ったこともありますよ。
なんか、フランスのド田舎の村祭りで。
── 豊穣祭みたいな?
TOBI 「大きなカボチャがとれたぜ!」
みたいな、
「豚を丸焼きにして食おうぜ!」
みたいな、
そういう祭りに呼ばれて、歌ったんです。
── 風光明媚なフランスの田園風景に、
どぎついピンクの塊がふたつ‥‥。
TOBI 完全なるミスキャストで、
見てくれた農夫の人たちにも、なんか悪くて。
みんな、キョトンとしちゃってたから。
── 村の青年団みたいな人が呼んだんですかね?
TOBI その村出身の若者ででした。

今、パリでこれが流行ってるっていうのを
村人に見せてあげたかったと言って。
── 思いもかけないオファーがあるもんですね。
TOBI そうそう、思いもかけないといえば、
YouTubeでPVの映像を配信してるんですが
「どの地域でよく見られているか」
というようなデータが、わかるんです。
── へぇ。
TOBI で、いっとき「ベネズエラ」で
すごく見られていた時期があったんです。
── ベネズエラというと、南米のほうの?
TOBI ええ。
── 何か心当たりは‥‥。
TOBI ベネズエラに心当たりなんてないです。
まず、行ったことないですし。
── 不思議ですね。
TOBI 実際は、とある高校のクラスの誰かが
「なんか、おもしろい動画見つけたぜ!」
とかって言って
ワーッとみんなで一斉に観たらしくて。
── なるほど。
TOBI そのYouTube動画は
「ヨコヅナ」という曲のクリップでした。

で、その高校生たち、
あまりに「ヨコヅナ」が好きになりすぎて、
卒業式で歌って踊ったらしいんです。
── え、すごい。
TOBI どうして、そのことがわかったかというと
問い合わせが来たんですよ。

「卒業式で『ヨコヅナ』を踊りたいから、
 iTunes で販売してくれ」と。
── つまり、レ・ロマネスクのiTunes配信開始は
ベネズエラの高校生に頼まれたから‥‥。
TOBI それまで、ベネズエラと聞いたところで
「は? どこだっけ?」でしたし、
ベネズエラの高校生が
僕たちの人生に何か関係してくるなんて、
思ってもみませんでした。
── そうでしょうね。
TOBI でも、レ・ロマネスクの「ヨコヅナ」という曲に
南米ベネズエラの高校生、
それも、あるクラスの生徒だけが反応して、
結果的に
彼らの卒業式で歌って踊ってくれることになった。
── さらには、iTunesで楽曲を販売する
きっかけにもなったと。その点、MIYAさん‥‥?
MIYA トレビアン(素晴らしいことね)。
TOBI そんなことって、今まであったでしょうか。
── ライブやって、CD売ってるだったら‥‥
ありえないですよね。
TOBI YouTubeをきっかけにして、
世界の、思いもかけない人たちとつながれたこと。

そのことに、すごく感動したんです。
── パリに住んでる日本人の「ヨコヅナ」という曲を
ベネズエラの高校生が、フランス語で歌って踊る。
TOBI すごいことだと思いました。

そのこと自体は、ちいさなことかもしれないけど
僕たちにとっては、本当に感動的だったんです。
── 何というか、地球はひとつですね。
TOBI だから今、住んでいるところがどこであれ、
世界のぜんぜん知らないところで
僕らの歌を
歌って踊ってもらえたりするかもしれない。

そのことが、とても愉快だなあと思います。
── 本日、レ・ロマネスクさんのお話を聞いて、
「ああ、人の人生っておもしろいなあ」
ということを、今あらためて感じています。
TOBI すっかりピンク色の人生ですけど。
── そして
「自分ももっと冒険しないとな!」という
勇気も得ました。
TOBI そう言ってもらえると、次からまた頑張れます。
── 今からでは、レ・ロマネスクさんほどには
ピンク色になれないでしょうけど‥‥。
TOBI いやいや、まだまだなれますよ。
── そうですかね? 本気でなろうとすれば?
TOBI 何色にだってなれるし、
どんなことだってやれると思いますよ。

だって
難しいこと何にもやってないですもん、
僕たち。
<終わります>
YOKOZUNA -THE KING OF SUMOTORI-

これを卒業式で歌って踊ってしまうとは‥‥
いいぞ、ベネズエラの高校生!
ライブでも大盛り上がりする一曲です。

2013-08-22-THU