小泉今日子のいる場所。

クリス

この『黄色いマンション　黒い猫』の装丁は
和田誠さんがイラストレーションを担当なさってて。
素敵ですよね。

小泉

そうなんです。
表紙の文字もイラストも全部、和田さんで。
これ、カバーを取った状態もかわいいんですよ。
表紙にニャンコがいて、すごく気に入ってます。

糸井

和田さんも小泉さんの大ファンですよね。

クリス

そうでしょうね。
そうじゃないと、なかなか全部やるとは
おっしゃらないと聞きましたよ。

小泉

うれしかったです、描いてもらえて。
こちらからのリクエストは特になく、
自由に描いてもらったんですよ。

糸井

黄色いマンションと、猫と、小泉さんを
描いているんだけど、
この絵に騙されて１話目を読むと、
ちょっとびっくりしますよね。
読んだ人はわかると思いますが、
あの話をそのまま描くと、こういう絵にはならないから。
和田さんの優しさというか、
「こうしたほうがいいよね」と思って　
描かれたんだと思います。

クリス

たしかに、この装丁からのギャップはありますね。

糸井

そこに大人同士の作品作りのおもしろさがありますね。
ぼくは「和田さん、いいねぇ」と思いました。

小泉

なるほど。

クリス

私、１話目で凍りましたもん。

小泉

きつい話ですもんね。

糸井

「ウッ！」という話が最初にありますもんね。
だけど和田さんは、あえて、
「今日子さん、こういうふうにしよう」って‥‥。

クリス

描かれた。
なるほど、そうかもしれませんね。

糸井

最後に、ついでのように
聞いておきたいことがあるんですけど、
今後、役者さんだけじゃなくて、
舞台の企画や演出もなさると聞いたんですが、
そのあたりをちょっと知りたいです。

小泉

あ、はい。
50歳になったのをきっかけに、
仲間たちといろんな企画を作っていけたらなと。
今まで先延ばしにしていたことを
やっちゃおうと思ってるんです。
第一弾の舞台には自分も出るんですけど、
最初だし自分が一番苦労しなきゃなと思って、
演出もやることにしました。
『日の本一の大悪党』というタイトルで、
６月から東京と神戸でやります。

糸井

もうお稽古は、はじまっているんですか。

小泉

もうちょっとしたらはじまります。
いまは美術とか、
舞台まわりのことをいっぱいやってます。

糸井

へえ。それこそ、そろばん勘定も？

小泉

そろばん勘定は、それが得意な相棒がいるんで、
手伝ってもらってます。
あの、私、「今日子」という名前じゃないですか。
その相棒は、なんと「明日子」という名前なんです。

糸井

あ、それだ！
もうひとつ聞きたかったことがあったの。

小泉

え？

糸井

小泉さんが新しく作った組織の名前が
「明後日」（あさって）というらしいですね。

クリス

へぇ！　おもしろい。

小泉

はい。偶然、今日と明日、で揃ったから、
名前は「明後日」がいいかなと思ってつけたんです。
「今日子」は、２人ほど会ったことあるんですよ。
岸田今日子さんとか宮下今日子ちゃんとか。
でも「明日子」は、はじめて会った！　と思って。

糸井

ぼくは、小泉さんが演出もやるという話と、
それから、組織名が「明後日」だというのを
前にちらっと聞いたときに、えらく感激しちゃってさ。

小泉

本当？

糸井

うん。
つまり、明後日が見えない明日ってないんだよね。
それに最近気づいたんです。
みんな明日のことは考えられるんですよ。
でも、ひとつ先の明後日が目に入ってこないと、
明日のことにつながらないんですよね。

小泉

ねぇ。あまり遠すぎる未来はまた違うし。
だから、明後日くらいを
見ているのがいいかなと思ってつけました。
それと、音もいいなって。
音だけ聞くと何語かわからない感じが。

糸井

センスがいいなあと思いました。
あと、悪口として通用するのもいい。

小泉

そう、「明後日の方向を向いてる」とかね。
なんか自分を卑下する感じもあって。

糸井

そうそう。
本当に見事だなと思ってます。

小泉

ありがたい。

クリス

なんかいいなぁ。ついて行こうって思いますね。
今日子さんについて行きたいなぁ。

糸井

ものぐさなはずなのにねぇ。
やる気がないと言いつつもやる、
なにかコツがあるんだろうなぁ。

クリス

ものぐさって自分で言う人に、
本当のものぐさはいないですもんね。

糸井

いや、嘘はついてないんですよ、
本当にやる気ないんですよ（笑）。
だけど、やるときは本当にがんばるんです。

小泉

（笑）
わかります。そうですよねぇ。

糸井

‥‥と、最後はグズグズにして終わります。

クリス

はい。それでいいと思います。
ありがとうございました。

糸井

なにせ、「明後日」ですからね（笑）。
ありがとうございました。

小泉

ありがとうございました。

（終わります）