21世紀の
向田邦子をつくろう。

■「久世塾おぼゑがき」50号
 「いつか殺してやる」と内舘牧子は言った…


来ない。
まだ来ない。
本番まであと10分。
来なかったらどうしよう?
まさか忘れてないよね?

「昨日、ちゃんと電話したのか?」
 Iプロデューサーの声が飛ぶ。
「下行って見てきます!」
階段を駆け下り、玄関の前に出て
ソワソワしながら待っていると、
一台のタクシーが止まり、中からエレガントな
ヘアースタイルに包まれた待ち人が出てきた。

「遅くなってごめんなさい。タクシーが迷っちゃって……」
テレビで聞いたことのあるその声も、
やっぱりエレガントだった。

こうして時間ギリギリにやってきた内舘牧子先生は、
控え室に入るなり「お手洗いはどこかしら」と、
これまたエレガントにお聞きになる。
実は控え室のすぐ横に女性用トイレがあるのだが、
すでに生徒さんが数名並んでいる。
「上の階に職員用のトイレがありますけど」
案内しようとするスタッフに、
「いいわよ、気を使わなくても。」
といって、さっさと列に並ばれました。
う〜ん、トイレに行くだけのことだけど
何故かカッコいい。

ところでそのころ久世塾長は、
いつの間にか会場に来られており、
控え室に入るでもなく、ひとり廊下のベンチで
タバコを薫らせている。
と、そのまわりにひとり、またひとりと
塾生たちが集まってきて、塾長を中心に
ちょっとしたサークルができあがっていく。

「こりゃサロンだねぇ」
その様子を見ていたスタッフが呟く。
本当だ。これってもしかしたら
僕たちの理想としていた風景かも。

『久世塾』が始まって3回目。
だんだんいい感じになってきたな。
僕も何となくうれしい。

うれしいといえば、田中千絵さん。
『久世塾』座付き女優のひとりだが、
今回は出番がないのに見学のため教室に。
講演会では塾生に混じって
しっかりお勉強(エライぞ田中千絵!)。
控え室では内舘先生に
「あらっ、あなたオーディションに来てたわね」と
声を掛けられて、
「その節はお世話になりました」とご挨拶。
「あの時は残念だったけど、
 あなたのこと覚えているわよ……」と話は続く。

聞けば田中さんは、内舘先生が書いている
NHKの朝の連続ドラマ「私の青空」の
オーディションを受けていたとのこと。
んっ、待てよ。そういえば先週もこんなことなかったか?
たしか田中さんは、大石静先生にも朝の連ドラの
オーディションのことで声を掛けられていたっけ。
「アミューズ(田中さんの所属事務所)は、
 いま“朝の連ドラ”狙いなんだよ」
とIプロデューサー。
なるほど、事務所の方針ってやつですね。

ところでその「私の青空」のヒロイン・田畑智子さんは、
久世塾長が社長を務める制作会社「KANOX」の所属。
実は事務局スタッフも知らなかったのですが、
今回会場に特別ゲストとして来る予定だったとのこと。
でも結局撮影の都合で残念ながらドタキャン。
次回以降に持ち越しとなりました。

さて肝心の内舘先生のお話ですが、
これがなかなかカゲキにしてステキ。
大企業のOL時代の話も面白かったのですが、
脚本家になってからの現場での逸話も最高。
某ベテラン演出家に10稿を越える書き直しを強いられ、
「いつか殺してやる」と心に誓った話や、
ロケの現場でプロデューサーの背中を机代わりにして
シーンを書き直した話などなど、
エレガントな物腰で、
最後まで聴衆を飽きさせない話術は見事。
久世塾長も教室のはしっこで、
じっくりと拝聴されていました。

ところで今回、かねてより塾生の間でも
「あの人はいったい何モノ?」とウワサを呼んでいた、
ある謎の人物の全貌がついに明らかになりました。
今回のお話にも何度か登場するその人物とは?
詳しくは次号で。

それでは。

文責 さとう

★久世塾正式サイトへのアクセスは
 http://www.kanox.co.jp/へ。

2000-07-18-TUE

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