21世紀の
向田邦子をつくろう。

■「久世塾おぼゑがき」8号
 「〜式」にはご用心


【マリエの結婚式が行われている教会に突如現れた圭介は、
 大勢の招待客の間をかき分けながら祭壇の前まで進み、
 おもむろに花嫁の手を掴むと、
 そのまま式場の外へと走り去っていった……】

まるで映画『卒業』の
ラストを思わせるようなシーンですが、
実はこんな文章がシナリオに書かれているのを見て、
一番頭を抱えるのが
“プロデューサー”と呼ばれる人たちなのです。

なぜならこんなシーンには人がいっぱい出てくるから。
結婚式・お葬式・卒業式…式にもいろいろあるけれど、
たいていの「式」にはたくさんの人が集まります。
そしてたくさんの人を集めるにはお金がかかります。

ひと昔かふた昔前のハリウッド映画には、
『風と共に去りぬ』や『ベン・ハー』のような
「たくさん人を出してなんぼ」みたいな超大作が
数多くありましたが、
最近ではあの『タイタニック』のように、
人間すらもCGで合成することで制作費を浮かしています。

しかし現状の日本のドラマ(映画)の
平均的な制作費を考えると、
人件費であろうがCG制作費であろうが、
とてもそんなお金はかけられません。
なので、現場の台所事情を知っているライターさんは、
本当に必要な場合以外ではむやみやたらと
「式」関係のシーンは作らないのです。

しかし、例えばシナリオコンクールなどへの
応募作品には、なぜか人がたくさん出てくる式や
イベントのシーンが書かれていることが多いそうです。
確かにこういったシーンを入れることによって
ドラマにメリハリをつけられるかもしれませんが、
実際に映像化される際には予算との兼ね合いで、
変更・もしくは削除される場合もあります。

前にも書きましたが、シナリオ作りは共同作業です。
ホンの中の世界が映像化(舞台化)されて
初めて完成するものです。
逆に言えば、映像化されなければ
どんなに素晴らしいホンであっても、
その存在価値は生まれてこないといえるでしょう
(まれに書物になることはありますが……)。

シナリオは小説とちがって、
ドラマや舞台などに具現化されてこそのモノ。
そのためには時間的・金銭的など
さまざまな制約との戦いになります。
それをいっしょに戦っていくのがプロデューサーであり、
ディレクターであり、役者さんたちなのです。

だからこそ『久世塾』では、シナリオ作家だけでなく、
さまざまな分野からの講師陣を迎え、
本当にドラマ化できる脚本作りの
ポイントを教えていきます。
脚本家を目指す皆さん、
どうか本気でかかってきてください!

それでは。

文責 さとう

2000-04-12-WED

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