Kuma
クマちゃんからの便り

ミラノへ浮浪

HELLO! I am KUMA!

雨模様のコモ湖。
IZUMIさんがご飯を炊いてくれた。
味噌汁、チリメンジャコ、カニ入り卵焼きで
朝の銀シャリご飯。
庭のバラを眺めていたら、
フランス文化庁ミラノ駐在の
クリスチャン・デレクターが来た。
彼は色んな経歴を持つ元気なフランス人だ。
オレの作品集を一点ずつ観ての感想を、
Mr.OGINOが通訳してくれた。
なかなかイイ評価にちょっとくすぐったいが、
オレの作品をこんなに丁寧に見てくれ、
批評してくれたヒトは
今まで居なかったなぁ。
ゲージツに対して自分の感性を
知的なストレートなコトバで話せる役人がいるのは、
さすがフランスだ。
ヴェネチアに六トンの<極東からのヒカリ>を
持ち込んだエキシビジョンの企ての心の丈を話した。
出来るだけの協力をしたいと言ってくれたが安心はできない、
出来ないことは出来ないのだろうから。
マ、それでも無いよりはイイじゃないか。
作品集にサインして渡した。
頼むぞ、Mr.クリスチャン!

JALの大聖夫妻、クリスチャン、スイスの銀行家、
IZUMI、Mr.OGINO、ケンドーを伴ったオレ。
コモ湖の辺にある広大な敷地の高級レストランで
ご馳走になった。
派手な昼食会に面喰った。
すっかりIZUMIさん、Mr.OGINOには
世話になりっぱなしのオレは、
ゲージツのパワーでお返しするのだ。
「今日は私の有能なプレスを紹介したいから、
 アンティプリマのミラノ・オフィスへ行きましよう」
彼女のアウディで高速を飛ばす。
オフィスで待っていたエルマーノは同性愛者だが、
恋人がフランスの絶大な美術評論家だという。
その彼だか彼女だかに作品集を、
手紙と共に送っておくと約束。
「nest、この雑誌面白いでしょう。
 これをやっている変わり者の彼にも送りましょう、
 エルマーノが英訳して送るから、
 日本語でKUMAさんの直筆の手紙とサインを」
とIZUMIさんが便箋を用意してくれた。
IZUMIさんの気配りは徹底していて早い。
オレの企てのために本当にアリガトウ。
頭蓋の何だかわけのわからない部分から、
ヒカリのエナジーが放射し始めたゾ。
移動のIZUMIさんの車から、
ヴェネチアのTSUCHYにケイタイした。
「徐冷に失敗して割れたから、今やり直している」
なんだか声に元気がないのはケイタイの所為か。
「気にすんナよ。うまくいったら送ってくれよ」
あの程度の厚い部分とマエストロに吹いてもらって
結合した作品の徐冷はそんなに難しいかなあ。
でも、オレの頭蓋にすでに増幅しているヒカリは
そんなモノではない。
ちょっとガッカリしたが、悔しくも哀しくもなかった。

晩メシをともにしたM'Sビルオーナー榊夫妻は、
ムラーノのバロヴェール社のガラスの輸入元だから、
船便のことが詳しかった。
オレの重量ガラス輸送のアドバイスを訊く。
今晩遅くに水野誠一、ミドリ夫妻が
MILANO入りするとの情報。
久しく二人には会ってない。
ホテルのロビーでアイス・エスプレッソを飲みながら
みんなで待つが戻らない。
手紙を書いてフロントに渡して
ケンドーとIZUMIさんの車でコモ湖に帰ろうとしたら、
入口でタクシーから降りてきた両人と出くわした。
間のイイ事だった。
立ち話で展覧会のコトを彼らにも宣言した。
美術業者なぞを当てにせずに、
ヴェネチアでエキシビジョンを開く為の協力者を
一本釣りで探っていくのだ。

コモ湖のOGINO邸に辿り着いたのは夜中になった。
Mr.OGINOはオレと同じ歳だ。
なかなかクールなビジネスのヒトである。
ショーチューを呑みながら喋った。
「ちょっと思ったんだけど
 <KUMA'S BLUE>というネーミングは弱いね。
 いっそ<KUMABLUE>と言った方が、
 BLUEの印象が強くなるネ」
「ウン、オレもそんな気がして来た。
 今後はそれでいくよ」
 
MILANOに来てから、
ヴェネチアで考えていた物語が
もっと大きなモノに少し変化していくようだ。
山梨FACTORYのサイバー・KILNは
二メートル立方だ。
オレという現象の終わりを予感した時、
そのKILNいっぱいのガラスを鋳込んで
三年の徐冷が終わる頃、三回忌になり
<KUMABLUE>となって再生したら
面白いなと言った冗談に、
Mr.OGINOが珍しく声をたてて笑った。



気がつくと明け方寸前になっていた。
ケンドーは昨日と同じダブルベッドで悠々と、
オレの今宵は湖に面したちょっと乙女チックな部屋の
ベッドに潜り込む。
三回忌もイイがその前がいつ来るか分からないのが人生だ。
明日か、五年後か、誰にも分からない。
しかし、日々、確実にその方向に向かっているのは
確かなのだ。
淡々と激しく往けるところまで行ってみる…
と思っていたら酔っ払って、ストンと夢に堕ちた。

2001-05-18-FRI

KUMA
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