| 糸井 |
ああ、また藤田さんの話になっちゃったなぁ。
なんか、すいませんね。
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| 赤坂 |
いえいえいえ（笑）。
でも、藤田さんの奥様に取材したとき、
糸井さんの名前も出てきましたよ。
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| 糸井 |
ああ、うれしいですねぇ。
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| 赤坂 |
藤田さんが、なんの気兼ねもせず、
外で会った人について家で話すのは、
牧野（茂）さんと糸井さんだけだった、って。
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| 糸井 |
ああ、そうですか‥‥。
なんなんだろう、それは。
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| 赤坂 |
なんなんでしょうね。
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| 糸井 |
なんなんでしょうねぇ。
あの、ぼくは、
血のつながりっていうものに対して、
世間一般に比べると、
ずいぶん冷めてるほうだと思うんですけど、
その一方で、つながっていない血に対して
妙に信頼して、つなげたがるような
気持ちもあるんですよ。
簡単に言いたくない部分ではありますけど、
やっぱり、藤田さんは、
まだ生きてますねぇ、自分の中に。
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| 赤坂 |
そうですね、うん。
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| 糸井 |
この本の中でも生きてるし、
本に出てくる選手の中にも生きてるし。
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| 赤坂 |
いまの巨人のベンチをのぞいたら、
もう、藤田さんが心の中に
生きている人ばっかりですよ。
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| 糸井 |
うわぁ、そうだ、原さんはもちろん、
緒方がいて、吉村がいて、村田がいて。
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| 赤坂 |
斎藤がいて、香田がいて。
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| 糸井 |
とくに原さんには、
藤田さんの影響を強く感じますね。
たとえば、試合後のコメントで、
若い選手にわざとキツい言い方をして、
ネジをぎゅーっと締めるところとか、
かと思うと、成績としてはよくなくても、
「ああいうことでいいと思います」
結果じゃない部分を評価したりとか。
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| 赤坂 |
ええ。あとよくやるのが、
二軍から上げたばかりの若手をすぐに使う。
で、うまく活躍したときに、
ほめたいと思うんですよ、ほんとは。
だけど、それを押し殺して、
「まあ、今日のところは、
日々の彼の練習がいい結果につながった、
というところまでしかコメントできませんね、
監督という立場では」という感じで。
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| 糸井 |
言う言う（笑）、そういうこと。
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| 赤坂 |
記者の立場としてはね、
「またつまんないこと言ってる」
って思うんですけど、よく考えたら、
藤田さんも、なんにも言わない人でしたよ。
斎藤をあれだけの大投手に育て、
ときに槙原を抑えに回し、
桑田を再生し、っていう中で、
「俺がああしてやったから」とか
「彼らは立派だ」とか、
なんにも言ってないんですよね。
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| 糸井 |
ああ、そうですね。
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| 赤坂 |
藤田さんがなにか
気の利いたコメントを残したとかね、
名言を残したとか、
ちっとも印象にないんです。
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| 糸井 |
ないですね、そういうのは。
「力のあるピッチャーしか
獲ってないわけだから」とか、
そういう言い方で総体を語るくらいで。
それよりは、選手に対して
「おまえはすごいんだから」とか、
そういうことばっかりで。
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| 赤坂 |
ええ、そうです、そうです。
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| 糸井 |
そうだなぁ。
言わなかったな、怒ったり、
ぜんぜん、褒めたりも。
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| 赤坂 |
ええ。
で、負けた時は自分が悪いと言ってましたね。
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| 糸井 |
そうですね。
言われてみると、その言い方は
ほんとに、いまの原さんですよね。
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| 赤坂 |
ええ。
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| 糸井 |
ああ、思えば、
いま巨人のベンチにいるコーチ陣は、
藤田さんの遺伝子が一番濃い人たちなんですね。
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| 赤坂 |
だと思いますね。
これも水野が言ってたことなんですけど、
藤田さんと過ごした３年間、
あれがあるとないとでは、
ぜんぜん違った野球人生になっただろうと。
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| 糸井 |
そういうふうにしみじみと語る人が‥‥。
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| 赤坂 |
多いですよね。
（つづきます） |
