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 『春風』
 くるり

 
2000年(平成12年)

ひとつひとつ乗り越えて、
またまたいつの間にか、
もっと好きになっています。
(花)

ここで涙が出ないのも
幸せのひとつなんです


28歳、結婚4年目の私は、
今の旦那さんしか知りません。
14歳、中学3年の夏から今まで、
考えてみればもう人生の半分を
一緒に過ごしたのだなと思いました。

小学6年生の12月に突然引っ越してきて、
播州弁で喋る姿はインパクトがありました。
やんちゃで、いつの間にか
その場を仕切ってしまう人で、
中学のいつからか、好きになっていました。
彼は野球部。私は女子ばっかりの
ブラスバンド部だったので、
接点どころか男子と話すことすらなく、
ひっそり暮らしていました。
世界違うし。
なんて思ってたような、小さな田舎町なのに。

それが突然告白されてお付き合いすることに。
まだ土曜の授業があった時代、
呼び出された給食ルームの
お昼の鐘がなっていました。
「好きです。考えといて。」
頭が真っ白で私は返事ができず。
何しろ、その告白が初めて彼と喋った瞬間でした。

今でもあの頃のことをよく話します。
あのとき、私も旦那も、
それぞれの友達数人が
近くのトイレに潜んで
結果を見守ってくれてたこと、
お互いの名札を交換して毎日持ち歩いたこと、
意外な組み合わせに驚く先生たち、
彼が緑と赤でペイントした自転車に
二人乗りした帰り道。
話がつきなくて家の周りを何周も歩きました。

付き合って初めて知ったのは、
彼はお父さんお母さんと離れて
おばあちゃんの家で暮らしていることでした。
今の歳になれば、
なぜ一人で小6の12月に引っ越してきたのか
うっすら分かります。
白い目でみる大人もいたけど、
その時の私はただ負けず嫌いで
芯の通った彼が好きでした。

高校時代は野球で他県へ行った彼と
何ヶ月かに1度会える日が待ち遠しく、
大学時代はお互い大阪へ出て
その分一緒に過ごしました。
かと思えば就職に失敗して燃え尽きて
パチンコばかりの彼の
どこが好きなのかも分からなくなったり。
色んな彼を見てきました。

そんなこんなで10年目の記念日、
二人で病院にいました。
目の調子が悪いというので
記念日の食事に出かける前に
病院へ行ったら脳に腫瘍が見つかりました。
この夏で病気との付き合いも5年目を迎えます。

毎年、手帳の一番初めのページに
この歌の歌詞を書いています。
「揺るがない幸せが、ただ欲しいのです」
願うように記していた新婚時代。
この先いいことあるのかなと思いました。
友人の幸せも素直に喜べない自分がいました。
でも今は、いつもそばに、
優しくて前向きで、
芯の強い彼がいるからなんか幸せ。
ひとつひとつ乗り越えて、
またまたいつの間にか、
もっと好きになっています。
病院に通う車の中で
涙が出ることはなくなっていきました。

そういうことかぁ。
この幸せはなかなか消えそうにないから、
続いていきそうだから、
いちいちひとつずつ幸せをあげて、
涙したりしなくていい関係になっていく。
でもたまーに、何の不安もなく過ごしていた
キラキラした日々の思い出がふと、
春風みたいに訪れるのです。
ちょっと涙出そうになります。

(花)

続いていく幸せ。
続いていくことが幸せ。

一年の終わりの節目の日に、
続く毎日に幸せをかみしめるような
こんな素敵な投稿を掲載しました。
一行一行が、大切につづられていて、
読んでいると涙がにじみます。

みなさんの毎日が、
毎日、続いていきますように。
よいお年を。

家族の都合で両親と離れて
引っ越してきた彼。
男の子って、望むと望まざるとにかかわらず、
「今」オトナになる、ならなくちゃいけない、
そんな瞬間があったりするのですが、
(そういうことのない人もいますけど)
彼はまさしくそのころに、
ぐっと背伸びをして、まっすぐ立って、
ゆるがない自分をつくったのかな、
って思いました。
そんなときに、出会ったのですね。

春風の季節はもうすぐです。
(花)さん、そしてだんなさん、
みなさん、よいお年を。

中3の夏休みの突然の告白から
ずっといままで、すごいなぁと
読み進みました。

「ひとつひとつ乗り越えて、
 またまたいつの間にか、
 もっと好きになっています」

年末にこんなすてきな投稿を読ませていただき
ありがとうございます。

なんで自分たちだけこんな経験をするのかな、
ということが、私のまわりの小さな世界にもあります。
でも、あんがい「本人」がいちばんしっかりして
明るかったりします。
みんなも前を向けるし、もっと好きになる。
尊敬しますし、
自分もそうありたいなと思います。

ここで涙が出ないのも
という一節が
『春風』ではいちばんすきな歌詞です。

おふたり、みなさん、
よいお年を!

上の人と同じ3行ですが、
ぼくもここを抜き出して、
置かせていただきます。

「ひとつひとつ乗り越えて、
 またまたいつの間にか、
 もっと好きになっています」

こころが、ふるえました。

2014年の終わり、
この投稿をご紹介できることを
ぼくらは誇りに思います。

「好きです。考えといて。」

告白されたあの日から、
いちにち、いちにち、重ねてきて、今に。

みなさん、良い年を迎えましょう!

2014-12-31-WED

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