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 『ふたりごと』
 RADWIMPS

 
2006年(平成18年)

私は、うまれて初めて
恋をしました。
(torishia)

こんな夢をいつまでも見よう
醒めなければいいってことにしよう
醒めるから夢と呼ぶんでしょう? って言うなら
他に名前をつけよう


中学校でクラスの男の子グループに標的にされて
クラスで孤立してから、怖くて怖くて
共学だった高校も、その後の女子大でも、
就職先の病院でも、
ずっと男の人を避けて過ごしてました。
男の同僚と普通に安心して話せるようになったのも
就職してからという筋金入り。
恋愛なんて、正直、興味がなくて
もっぱら仕事に傾倒する毎日。
ようやく興味が持てたのも、
大好きな上司や先輩が
幸せな結婚をしている姿を見てから。
私は自分の姉兄が彼氏彼女を作ったところを
見たことがなくて‥‥。

初めて年の近い仲の良い人が夫婦で
自分と一緒に遊んだりご飯を食べるようになって、
仲の良い姿を見ていいなと思うようになりました。
でも、なにせ筋金入りのチキン歴。
同じ年頃の男の子なんて何を話していいのか
さっぱり分からない。
病院のスタッフはほとんどが女性ですし
初めての仕事が楽しくてのめり込んでたのもあって、
ずっと恋愛をすることなく過ごしてました。

そんなとき、勤めている病院を辞めて
初めて違う病院に転職しました。
転勤先は規模がずっと大きくて、
男性のスタッフも沢山いて毎日が一杯一杯。
そんな慣れない初めての転職先で
うまれて初めて恋をしました。
忙しい病棟でも、優しく患者さんの対応をしている
男の看護師さんで尊敬と話しやすさもあって、
徐々に好意を抱くようになりました。
あんまりにも不慣れすぎて、
その好意こそが恋心というのに気付くのに相当
時間がかかってしまったのですけど。

自分の気持ちに気付いてからは、
本当に今思えば恥ずかしすぎるのですが、
初めての感情で
相手をまともに見れなくなってしまいました。
バレバレすぎるぐらい挙動不審になってしまうし、
声を聞いたり横を通るだけでドキドキするし、
話すのに顔は赤くなるし。
いい年なのに、まさに中学生並み。
今の小学生並みでしょうか。
職種が違うので相手の勤務が分からないから、
朝出勤するたびに一喜一憂。
夜勤の看護師さんが準備にやってきて、
その人が夜勤だと分かると、
病棟で仕事を残ってしてました。
そうするうちに、周囲に私の気持ちがばれてしまい、
みんなに冷やかされたり、応援されたり。
恋愛相談できるのも、楽しかったりして。
頑張ってクリスマスとバレンタインに
本命のお菓子をプレゼントしたりもしました。
「いつもお世話になってるので」って
病棟やその他の人にカモフラージュで渡した上で、
その人だけに違うお菓子を用意して。
でも渡すといっても、
本当に顔がまともに見れなくて渡し逃げ。
そんな本当に小学生並みのアタックをして
周囲の手助けもあって
初めてメールアドレスと電話番号を交換。
メールも本当に来るたびに嬉しさと恥ずかしさから
床をのたうち回ってました。
そんな折りに周囲からその人が辞めると聞いて、
本人に確かめるほどの勇気もなくて。
彼の出勤の最終日にメールが来て以来
返事が途絶えました。
ホワイトデーのお返しもあるわけもなく
メールも途絶え、すっかり恋愛モードから
従来の仕事モードになっていた頃、
その人からメールがきて
ご飯を一緒に食べる事になりました。

夢じゃないかと思いながら、
何度かご飯を二人で食べて、ドライブをして、
告白をされて初めて
おつき合いをすることになりました。

初めて好きな人とおつき合いをする幸せ。
まともに同世代の男の人と長く、
仕事以外で話すのも一緒に過ごすのも初めて。

この歌手も曲も、
彼が好きで歌ってるのを聞いてから知って、
良い曲だなと好きになってCDを借りたり。

彼の癖や、好みも、デートというものも
すこし知り始めたころ、
お互い仕事が忙しくなってしまいました。
忙しくて疲れすぎて、予定が合わなくなって。
写真やこの曲を聞きながら仕事を頑張っていましたが、
寂しくて会いたいとメールをするのは自分ばっかり。
電話は相手が疲れていたら悪いし、
声を聞いたら切れなくなりそうでかけることもできず。

疲れてるのにメールを送っても重たいかもしれないと、送るのを我慢してみました。
そうするうちに、連絡もなく会わない期間が延びて、
お付合いしてるとは流石に言えないと
私でも分かるぐらいになって、
最後は私から電話をしてお別れをしました。
別れを告げた電話の声だけで
好きな気持ちがよみがえって、
初めての失恋から立ち直ってきたのはごく最近です。

今思えばおままごとのような初恋で、
お付き合いと言っていいのかも分からないぐらい
会ってた時間は短期間でした。
付合ってくださいと告白してくれた彼の気持ちも
よく分からないままです。
本当に好きで告白をしてくれたのかな?

今でも「おつき合い」は私の未知の領域です。
この曲を聞くこともできなくなっていましたが、
最近また聞いてみると
歌詞が彼と似ていた事に気付かされました。
両親が離婚して一時期ぐれて
学校にも通ってなかったと話していた彼は
どんな気持ちでこの曲を聞いてたのかな。
今は彼がこの曲の最後のように
好きな人と幸せになっているといいなと思います。
初めて私が好きになって、
恋愛する幸せな気持ちと時間を教えてくれた
大切な人だから。

(torishia)

はじめての恋がやってきた
その瞬間はおっしゃるとおり
「これはなんだろう!」という
気分だったのでしょうね。

周囲のみなさんに気持ちがバレていた、ということは
彼にもいろんなことが無意識に
しっかり伝わっていたでしょう。
好きな気持ちを充分わかってもらえたことは、
言いたいことも言えない
消化不良な恋愛がひしめく昨今です、
とてもうれしいことなんだろうなぁと思います。

彼、いい恋をしてるといいですね。
そして、(torishia)さんも!

初恋の時期って自己申告制ですから
「幼稚園のとき」なんて人もいるわけだけど、
(torishia)さんのようにあるていど大人になってから
ドッカーンとバレバレになっちゃうくらいの
気持ちになったときこそを、
自分としては、初恋と認定したい気持ちがあります。
そう、嬉しくて恥ずかしくて
床をのたうちまわるくらいじゃないと!

つきあい始めって、
双方がすごーく好きだってこともあるだろうけど、
恋情の分量は量れないし、
たぶん、全く同じってことはないんですよね。
「ほどほど」な「好き」でも
「付き合ってください」は、ありえるし。
そして「自分が相手を好きな分量、
相手は自分を好きなのだろうか」ということが
もう心配で心配でねー。
「いいのだ、自分が好きなのだから」
というふうには、なかなか割り切れないものでした。
ああ、いろいろ思いだします。
具体的なエピソードを思いだすというより
そんな気持ちになっていたことを
すごく新鮮な感じで思いだしちゃいました。

得恋、失恋、そしてそれをすっかり忘れたころ、
また、次の恋がやってくるかもしれませんよー。
すっごい不意打ちみたいに!

いいなあ、
「床をのたうち回る」って。

そう、武井さんも書いてるけど、
「初恋の定義」って曖昧ですよね。
欧米では「つきあいはじめたこと」を
初恋と考える傾向があるって
聞いたことがあります。

でも、恋歌くちずさみ委員会では
はじめて「床をのたうち回る」くらい
誰かを好きなったことを
「初恋」って言っていいなじゃないかな。

悲恋におわったお話ですけど、
なんというか、うれしく読みました。
最初の恋が少しでも
かなってよかったですね。

となると、自分の初恋は、
いつのどれになるのかなぁ‥‥と、
あらためて見つめ直してみたり。

「床をのたうち回ったら、それは初恋」
これはもう、
恋歌くちずさみ委員会の公式見解といたしましょう。
となると、そうですよね。
自分はどれがそうなんだろう? と考えます。
で、「ああ〜、あの人かぁ」と気づいたりして。
これ、みなさんもやってみてください。
「ああ〜、あの人かぁ」にたどりつく人は、
すくなくないのではないかと思います。

(torishia)さんの投稿、よかったです。
激しくはないけれど、
ジェットコースター感覚のハラハラもありました。
(torishia)さんの「恋」にも、
傍らに「尊敬」がありますよね。
だから最後まで、心地よく読むことができました。

彼の告白は本気だったと、ぼくは思います。
そして、
どこかの場所できっと、
彼も同じことを想っているのではないかと思うんです。
「彼女、好きな人と幸せになっているといいな」

今回もたいせつな思い出をありがとうございました。
東京は、春のまんなか。
舞い散る桜と青空のコントラストが
ほんとうにきれいです。
デートにサイコー。

次の恋のお話は、水曜日に。
またお会いしましょう!

2014-04-05-SAT

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