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 『からたち野道』
 THE BOOM

 
1993年(平成5年)

おばあちゃんの
淡いまま残った恋の話
(チビ子)

からたち野道 はるかな小道
あなたのもとへ駆けてゆきたい


戦争へ行って帰ってこなかった人への
想いを歌っている曲ですが、
今年の夏、おばあちゃんから聞いた恋の話と、
このメロディーが脳内で合致し、
ありありと情景が浮かんでくるようになりました。

「My恋歌」ではなく、
「My Grandmother's恋歌」という感じです。

栃木の飛行場の近所にあったおばあちゃんの家では、
訓練兵さん達を家に招いて
ごはんを振る舞うことがあったそうです。

初恋の人は、その中の一人。
お互い、顔を見て挨拶する程度でした。

戦争が終わって、
彼は故郷の九州に帰ってしまったけれど、
何とそのあとで、彼からおばあちゃん宛に手紙が!
一年ほど文通を続けて交流を深めたのですが、
ある日、ぱったりと、
彼からの手紙が来なくなってしまいました。

電話も簡単にできない時代。
おばあちゃんはお金がなくて、
彼に会いにいくことはできませんでした。

来ない返事を待って数年。
縁談の話が来て、
おばあちゃんは、私のおじいちゃんとお見合いし、
お嫁にいきました。

それからしばらくして、
おばあちゃんの実家に、彼から手紙が届きました。

肺結核にかかって療養していたために、
手紙を出せなくなっていたことが
書いてあったそうです。

手紙を受け取ったおばあちゃんのお父さんは、
嫁いだことを書いて返信したそうで、
それ以降、
彼から手紙が来ることはありませんでした。
おばあちゃんがそれを聞いたのは
随分あとだったそうです。

「あの人はね、背が高くて、男前だったのよ」
「お見合いした時、おじいちゃんは
 私より背が低くて、ビックリしたねぇ」

おばあちゃんの
淡いまま残った恋の話。

『からたち野道』を聴くと、
若き日のおばあちゃんが九州の彼を想いながら、
栃木の小道を歩いている姿が
ありありと脳裏に浮かぶようになりました。

おばあちゃん、会いにいきたかっただろうな。

「おじいちゃんには話したことないから、内緒ね」
と、おばあちゃんは年頃の娘さんみたいに言った。

幾多の苦難を乗り越えてきた、仲睦まじい夫婦です。
おばあちゃん83歳。
おじいちゃん88歳。
二人の孫で良かったと、わたしは思っています。
どうか、これからも仲良く、長生きしてください。

ちなみに、私はおじいちゃんに似て、
背が低いです。

(チビ子)

まるで、朝ドラみたいな、
おばあちゃんの恋の思い出。

それをうれしそうに聞いて、
たぶん、自分のことのように大事にして、
そして、こんなふうに記してくれる
お孫さんがいて、
きっとおばあちゃんも幸せでしょうね。

ちょっと違う話かもしれませんが、
そこに、かけがえのない
子ども(とか孫)がいるということは、
いろいろあるに決まっている二人の恋を
まったく違った次元で、
ぐるん、と大きく肯定しますよね。

「二人の孫で良かったと、
 わたしは思っています。」
なんて言う孫がいるんだもの。
それでよかったに決まってる、と思います。

おばあちゃんの素敵な恋の思い出を
わけてくれて、ありがとうございました。

(チビ子)さんのおばあちゃんだけじゃなく、
結核がまだあたりまえのようにあった時代の日本には、
こんな恋のひそかなドラマが、
いっぱいあったのかだと思います。
うちの祖母にも、伯母たちにも、きっと。
いまとなっては聞く事ができないのが
とても悔やまれるのですけれど、
話したいかどうかはまた別ですものね。

おじいちゃんも健在なんですねー。
このことを知ったらすごーく焼きもちやきそう。
ぜったいナイショにしたほうがいいですよ!

こんなにもみずみずしくつづられた文章が生まれた
おばあちゃんのお話は、
どんな感じでご本人から語られたのでしょうか。

すこしずつ、何度かにわけて?
思い出すようにときどきぽつりぽつりと?
ゆっくりお酒をのみながら、たっぷりと?

初恋の人は、
淡いままそこに残っているかもしれないけれど、
そのあとのおばあちゃんとおじいちゃんが
なかむつまじくいたというのがすばらしい。
みんなはひとりで生きてるんじゃないんですもの。

こころに秘めたもの、
いまじゃ笑い話になってしまうもの。
人生はあんがい長く、
恋にはいろんなことがあるわけで、
それだから、私たち子どもがいま
生きているんですよね。

まぁまぁ、いろんなことがあったよ、って
おばあちゃんになった私の話を
孫は聞いてくれたりするのかなぁ?

いったい何度ここに書いたかわかりませんが、
すばらしい投稿をありがとうございました。
漢方薬のようにじんわり、いいなぁ、と‥‥。
穏やかな多幸感を感じます。

「文通」ということばが出てきた時点でもう、
ぼくの中では「去来」スタンバイです。
弱いんです、どうしても、文通の話に。
来ない手紙を待つおばあさまのエピソードに、
転校生だった自分が重なって‥‥。
切なかった、苦しかったとひとしきり思いがめぐります。
でも、最近ではようやく「あれは、たのしかったんだなー」
と思えるようになったんです。こころから。
たくさん転校させてくれた両親に感謝。

「こういう恋をしました」という事実は、
それが成就したものでも悲恋であっても、
その人をゆたかにするもののひとつなのだと、
つくづく思います。
通った道はすべて、「それでいいのだ」。

さて、春の恋歌特集はあしたがラストです。
あしたはどんなお話でしょう?
どうぞおたのしみに!!

2014-04-01-TUE

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