『流れ星』
 スピッツ

 
1999年(平成11年)

携帯電話を耳にあてて見た、
数十年に1度の、
しし座流星群。
(スマッツ)

流れ星 流れ星 
すぐに消えちゃう君が好きで


男勝りでさばさばしてて、男も女も関係なく
みんな友達だった高校1年生の頃。

夏休みが近づくこれ以上なく晴れた日に、
それ以上に明るい笑顔で私の横を通り過ぎて行った
ひとつ上のサッカー部の先輩に、ひと目ぼれしました。

目立つようなタイプではなく、誰に言っても
「あ〜かわいいとは思うけど」という風に
「けど」のつく、そんな人でした。

でもそんなことはどうでもよかったんです、
校内ですれ違えそうな場所を探しては
何度も行ったり来たりして、
あの笑顔で友達と話している姿を見るだけで、
もういっぱいいっぱいなほど、
もし話したら心臓が壊れるんじゃないかと
思っていました。

少しずつ仲良くなって、
携帯を持っていなかった彼が携帯を持つようになって、
苦手だというメールを何度も交わすようになっても、
それは変わらなかった、
そばにいても目も合わせられずに、
話すことさえうまくできなかった。

私にとって彼は映画の中の登場人物のようで、
目の前にいるのにどこか現実味がなくて、
遠くから見ている時だけ、
確かに存在しているように思えた、
だから付き合うとか、
相手が自分をちゃんと想ってくれるかなんて、
想像もしませんでした。

そんな仲が半年以上も続いたある日、
数十年に1度のしし座流星群大接近というニュース。

1時を過ぎたころにこっそりと部屋を抜け出し、
マンションの階段の踊り場で
凍えながら空を見上げていると、
嘘のように次々と流れる流れ星。

あまりにもきれいで、
あまりにも現実離れしていたからかもしれません、
一生分の勇気を振り絞って、彼に電話をかけました。

真夜中にかかってきた電話に驚きながらも、
「俺も星見てたんだ。」と。

「さっきから右の方でたくさん流れてますよ。」
と言う私に、
「どっちが右か分からないよ。」
と困ったような声。

その瞬間、夜空を真っ白に染めるほどの、
大きな大きな流れ星がひとつ流れました。

思わずあげた歓声と全く同じ声が、
電話の向こうからも聞こえる。

あぁ、同じ空を見てたんだな、と思った瞬間、
「同じ空見てるね。」
と彼が言って・・・・・・、
あまりの緊張からかそこから先の記憶はありません。

今ならば、彼の言葉の端々や、
キーホルダーをあげたくて
1日中私のことを探していたと笑った彼の瞳に、
ちゃんと私が映っていたこと分かるのに。

彼に憧れすぎて、
何ひとつ自分に信じられるものがなくて、
うまくいかなかった。

それでも今でも、
流星群がくるというニュースが流れるたびに、
私の中であの日の流れ星と、
スピッツのこの歌が流れます。

流れ星はすぐに消えるからいいのに、
この流れ星は、いつまでもついてきて困っています。

(スマッツ)

きれいだ。
とってもきれいな流れ星。
しかも、ラストがバリバリ決まってる!
やられました。

こんなステキな彼、うらやましすぎます。
いつまでもついてきたって、
そりゃそれで、いいと思う!

そうですよ、困ることない。
「あの日、わたしは、
 いつまでもついてくる流れ星をひとつ、
 授かることになったのだ」
と思えばいいじゃないですか!
そんなすてきなものを持っている人は、
そうそういません。
「そして、その流れ星は、
 わたしの行く先を、いつまでも照らしている」
って!

わー、ほんとに、きらめく思い出だ。
いいなぁ、すごいいいなぁ。
同じ空の下、
すばらしい偶然でつながったんですね。

「どっちが右か分からないよ。」
という彼のセリフが微笑ましく、
同時にもどかしくも感じて、グッときました。
そしてそのセリフの直後の、大流星‥‥。
まったくもって、すてきです。

「携帯がなかった頃の恋愛はよかった」
なーんてね、おじさんたちはすぐ言いますが、
(スマッツ)さんのきらめく思い出は
携帯電話があったからうまれたわけで。
その事実を素直にうらやましいと思います。
携帯は、すごい。

昔、恋のイベントといえば、
バレンタインデーとかクリスマス、
学生なら学園祭とか卒業式なんかが
定番だったと思うんですけど、
ここ数年、恋のイベントのひとつとして
エントリーしてませんか、「流星群」。

流星群を見に行こうよ、というアプローチ。
「くちずさみ世代」にはなかったなぁ。
天文の偶然が要素として絡むから、
なにしろロマンがありますよね。
そのロマンは、いろんな面倒を、
いったん隠してくれて都合がよさそうだ。

恋する男女よ、あらゆる流星群を口実にせよ。
貴重なようで意外としょっちゅうくるぞ、流星群。

と、いうようなことはおいといて、
ほんとに素敵なエピソードでうらやましい。
この歌も、とってもいいですよね。

みなさまからの投稿、お待ちしています。
ぼちぼちまた「恋歌ラジオ」をやろうかと
みんなで話しています。

2014-01-08-WED

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