『ハナミズキ』
 一青窈

 
2004年(平成16年)

私の片思いは
続いています。
 (ななママ)

君と好きな人が百年続きますように


これを恋歌と言って良いのか悩みましたが、
誰にも話した事のない私の本当の気持ちを
誰かに聞いてもらえるチャンスと思い、
思い切ってメールしました。

当時私は妊娠中でした。
大好きで大好きで結婚した夫。
好きすぎて自分の好きな色さえわからなくなってしまう程
夫に同化してしまう錯覚に陥っていました。

そこへ、世間では良く聞く「妻の妊娠中の夫の浮気」。
まさか自分の身の上に降りかかろうとは。
まさに青天の霹靂でした。
それはそれはショックで
妊娠中にも関わらず体重は10kg減り、入院もしました。

どうにかして夫を取り戻したい。
でも結婚前からわかっていました。
彼は浮気は出来ない人。
もしそういうことがあったらきっと「本気」。
だからもう私の元には戻って来ない。
事実、泣いてすがろうと、私が入院しようと、
彼女とは別れませんでした。

絶対安静と言われた病院のベッドで
フッとこの曲が頭の中で流れました。
私は夫といる事が幸せだと思っているけれど、
夫はそうではないらしい。
ならば、別れる事が今の私達には
ベストなのかもと思いました。
それが愛だとも思いました。
でも、子供の事があって、
私には言い出せませんでした。

結局私達は別れず、夫は娘が産まれてからも
しばらく彼女とは続いていたようですが
「俺といたら彼女がかわいそうだ」と言って別れました。
妻にそんな事を言うなんて、心底ガッカリした反面、
別れてあげられなくて申し訳なくも思いました。

娘が産まれて6年、
夫は娘にとってはとても良いパパです。

今も時々この歌が浮かびます。
沢山の後悔や嫉妬や苦い思い出と共に
私の片思いは続いています。

(ななママ)

息を止めるように一気に読みました。
たしかに「妻の妊娠中の夫の浮気」って
ことばとしては聞くけれど、
ほんとうにこんなことが起きるんですね。
病院のベッドでの、(ななママ)さんの逡巡。
まるっきり他人のぼくは
「ひどい亭主だな」ってまずは思っちゃったけれど、
「別れてあげられなくて申し訳なくも思」うほどの
(ななママ)さんの愛の前に、
もうなんにも言えなくなっちゃった。

よかったなと思ったのは、
無事に出産なさったということ!
(ななママ)さんのもとに生まれてきたお子さん、
きっと、とてもやさしい子に育つと思いますよ。
きっと。

「ひどい人」を
「ひどい人」とするところで終わらず、
「ひどい人だけど愛している」とすると、
ひとまわり大きな「愛の話」に。
しかし、そうなると、
「ひどい人」の不条理さが
さらに際立つことにも…。
そしてそれがまたひとまわり
大きな「愛の話」になって‥‥。

なんだか、「人」と「愛」が
ぐるぐると回り続けるような話です。
それでも救いがないとは感じないのは、
武井さんも書いているように、
娘さんの存在と、
あと、流れていく時間があるからかな。

それから、最終的にこの全体を
「片思い」とまとめているのもすごいなぁ。
事実の話はなんとも言いづらいですが、
投稿自体はすばらしいと思いました。

最後の一行、
「私の片思いは続いています。」
この一行に、なんでしょう、もう‥‥
ショックを受けたと言っていいかもしれません。
(ななママ)さんがどうしてもかわいそうで、
他人であるにも関わらず
「ご主人、そりゃあないよ」
とモニタに向かってつぶやいていました。

でも、なによりなのは、そう、
お嬢さんがすくすくと育っていること。
そのかたわらに良いパパがいること。
家族というチームになると、
「愛の様子」はそれぞれの家族ごとに
特有なものへと変化していきますよね。

(ななママ)さんというハンドルネームに
すこしほっとした気持ちになります。
「ママ」ということばを名前に‥‥
それはきっと、
いいチームのお母さんなのだろうなぁ、と。

「誰にも話したことのない本当の気持ち」を
送っていただき、ありがとうございます。

大好きな大好きな、その人の
本気(であろう)心変わり。
つらいです。
でも、
「別れてあげられなくて」というくだり、
わたしはもう、そこに、じんとしてしまいました。
嫉妬と書く前に、後悔と書いていらっしゃることにも。

俺といたら彼女がかわいそうだ、というのは
個人的な意見でいうと、
きっとそうじゃないと思います。
きっと、彼女と、ちゃあんと、
ごくふつうに、終わったんだと私は思います。

そこから、娘さんとすごした
6年の年月があるんですもの。
きっと、彼のほうも
妻に片思い、なんじゃないかなー?

好きな気持ちって、どうしようもなくて、
そんな熱病のようなことに
自分の人生が振り回されるのって
いったいどうなんだろう?
と、ときどき思います。
でも、それだからこそ、恋歌エバーグリーン。
来週も、このページでお会いしましょう。
夏も、もう、終わりますね。

2013-08-28-WED

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