『若葉』
 スピッツ

 
2008年(平成20年)

無理矢理
カギをかけるべき時が
来ているのかもしれません
  (あちゃこ)

思い出せる いろんなこと
花咲き誇る頃に

二年ほど前、花咲き誇る頃に高校生になり、
同じクラスになった、
意地悪で、ちょっと繊細で、
でも何より優しい男の子。
当時は気づいていなかったけれど、
若葉が繁る頃には既に彼を好きになっていました。

どんどん大きくなっていく気持ちを
どうすることもできず、あまりにも自然に、
はじめてチョコを渡したいと思ったバレンタイン。
誰にも相談せず、こっそり一生懸命書いた手紙。
二日後に来た返事。はじめてのお付き合い。
桜のつぼみがふくらむ頃に繋いだ手。
花咲き誇る中で交わしたはじめてのキス。
友人達はとっくに経験しているような
他愛ないことが、全て夢のようでした。
毎日がキラキラしていました。
同時に、嫌われることをひどく恐れる毎日でした。

そして花が散り、若葉が繁る頃、告げられた
「彼女として見られなくなった」という言葉。
話し合い、10月のテストの後に
もう一度答えを出そうということになりました。
夏の間、私は必死でした。
でもその必死の努力は、
約束から2週間遅れの1本の電話で
すべて無駄になりました。

あれからもう半年経ちます。
教室で話すたび、一度話をしようと言われた時、
何度も捨てようとした小さな希望を捨てきれず、
とうとう今日まで来てしまいました。
次に花咲き誇る頃、私達はもう受験生です。
あと数日後には、「クラスメイト」という
最後の繋がりさえ失われてしまうのです。
もう一度奇跡を信じて渡したバレンタインは、
とうとうノーリアクションに終わりました。
そろそろ潮時かもしれません。

泣きたいほど懐かしいです。
戻りたいと何度思ったでしょうか。
何度諦めようとして諦めきれず泣いたでしょうか。
それでも、無理矢理カギをかけるべき時が
来ているのかもしれません。

これで終わりです。
中途半端な投稿ですみませんでした。

(あちゃこ)

切ないなぁ。
現役高校生の方から届いた、リアルタイムの恋の話。
スピッツの歌と、「若葉」に流れる時間に重ねて、
ふたりの距離と心の動きが
痛いほど伝わってくる投稿です。

もう、この文面がつづれるだけでも、
よい恋をしましたね、と、
年長者の無神経を笠にして
言いたくなってしまうのですが、
当事者にはとてもそうは思えませんよね。

でも、申し訳ないけど、こう思います。
「冷却期間を置こう」とか
「少し会うのをやめよう」とか
「友だちに戻ってみよう」とか
そういった種類のことばが出た瞬間、
もう、その恋は終わっている。
終わった恋が、またはじまることはある。
けれども、一旦、その恋は終わっている。

そのどうしようもなく受け入れがたいことを
なんとか踏み越えるための
コツのようなもののひとつが
『若葉』の最後にあるような気がします。

終わった恋の相手を忘れるためによいことは、
相手の知らない道を歩きはじめることです。

わぁ‥‥‥。なんてことだ。
なんにも言えない。でもがんばれ。
もー、ぽっかりあいた穴を持ったまま、
行くしかないですね。

失恋の歌として私が好きなのは
ORIGINAL LOVEの『カフカの城』です。
たぶん、失恋の歌だと思うんですけど、
何をしても何もできない出口のない空虚さが
曲調とあわさって心にしみます。
田島さんもこういうことあったのね、
(ないのかもしれないけど)と思いながら
くちずさむといいです。

なんとなーく、あきらめられないまま
「ぼー」っとしちゃうことが
何年にもわたることだってあります。
それもいいと思う。
でも、いい男子は、一本釣りしたいほどに、いっぱいおる。
たのしそうにしてる子のとこに、一本釣りの魚は寄ってくると見る。
高校生活、たのしんでいきましょう!!

うん。
つらいところですね。
がんばれ、(あちゃこ)さん。

スピッツの『若葉』の、このジャケット、
きれいですね。すごくきれい。
鹿の足元の水が、
いいこともやなことも
ゆっくりと流してくれているように見えます。

ところで永田さんの書いた、
「終わった恋の相手を忘れるためによいことは、
 相手の知らない道を歩きはじめることです。」
っていうのは、それ、そうだわー。
いいこと聞きました。
過去の自分に教えてあげたいくらい。
それはかなわないので、息子に教えようかな。

意地悪で、ちょっと繊細で、
でも何より優しい。
すてきな男の子なんだろうな。
そして彼を振り向かせた(あちゃこ)さんも
きっとすてきな女の子なんだと思います。

「多感」という言葉があるけど、
十代ってまさしくそんな時期なんだなと、
このメールを読みながら、
振り返って思ったりします。
いや、年をとると多感さが失われる、
ということではない、ということは
ながくこの連載をしてきて、思いますが、
それにしても、十代の気持ちの揺れって、
やっぱり特別なものがあるんです。
オトナになると、その「カギ」もね、
無理やり掛けなくても、カギがなくても、
「ま、フタを閉めておけばいいかな」
ていどになっちゃう。そんな感じです。

そして、いまこんなこと言われても
ピンと来ないと思うけれど、
(あちゃこ)さん、
これから先、すてきなことがいっぱい待ってます。
ぜったいに。
だから大丈夫。
まずは受験勉強がんばって、
楽しい学校に進んでください。

ということで2週間プラス1日の
連続更新は、これにておしまい!
恋歌くちずさみ委員会は
通常の週2回更新にもどります。
次回は水曜日です!

 

2013-06-01-SAT

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