『LOVE LETTER』
 槇原敬之

1996年(平成8年)
アルバム『UNDERWEAR』収録曲

この気持ちも
飲み込んでしまおうと
一人チョコを食べました。
 (あの頃携帯があればなー)

何回も 何回も
書き直した手紙は
ずっと僕のポケットの中

高校3年生でした。
チャラいサッカー部なのに、寡黙で流行の音楽よりも
ビートルズが好きと言っていた彼。
仲間はずれにされたくなくて、自分の好きな事を隠し、
周りに合わせることに一生懸命になっていた私にとって、
自分の世界を押し付けることなく
主張できる彼はスターでした。

しかし、彼は友達の好きな人。
そしてその友達はクラスの中心人物でした。

「みんな私の恋を応援してくれるよね!?」
って言う彼女に「もちろん!」と答える周りの友達。
その頃って、
恋は早いもの(言ったもの?)勝ちなんですよね。
自分の思いをそっと隠して、
友達の恋を応援する日々を送りました。

1月、私は県外の大学へ進学することが決まり、
彼は地元の大学に進学することになりました。
そして迎えたバレンタインデー前日。
彼へのチョコレートを買い、
この曲を聞きながら彼への想いをカードに綴りました。
 
自分でもわかっていたんです。

今更気持ちを伝えてどうなるって。
いくじなしの私はきっとチョコも渡せないって。
それでも彼が大好きなんだってことを。

当日はやっぱり渡せなくって、
この気持ちも飲み込んでしまおうと
一人チョコを食べました。

この曲を聴くと、大好きだって想いを
一人温めただけの切ない思い出と
いつもより苦く感じたチョコの味が蘇ります。

同時に、大好きだって素直に伝えられるって
幸せなことだと思い出し、
夫に好きだと連呼し、不審がられています。

(あの頃携帯があればなー)

ものすごいドラマがあるわけでもなく、
むしろ、ありふれているとすらいえる
エピソードなのですが、
読後にもう一度読み返したくなるような
不思議な魅力がある投稿です。

そして何度か読み返してみてわかったんですが、
これ、いつもと違ったパターンではあるものの、
明らかに「恋歌くちずさみ委員会」名物の
「ラスト三行のどんでん返し」ですよね。

主人公の唐突なラブコールに
「オレ?!」と戸惑う旦那にカメラがズームし、
ハート型のワイプでハッピーエンド。
バレンタインにぜひ読んでいただきたくて、
このタイミングで掲載しました。

「みんな私の恋を応援してくれるよね!?」

‥‥わー、うっとうしい!
と、そういう状況をみるたび、
学生服を着たぼくは思ってました。
(なにも言えなかったけど。)
そういう女子ってちょっと女王的存在ですよね。
しかもちょっと(あくまでも、ちょっと)
キレイだったりするんだよね。
気が強いからそう見えてるだけだったのかな。
「もちろん!」と答える周りの友達、というのも
どうにもめんどうくさかったなー。家臣か。
高校生の恋は、まあそういうことが
「かけひき」のひとつなんだろうけど、
「あとだしジャンケンみたいになっちゃうのはダメなんだ」
って、その当時は、思っちゃうものですよね。
ほんとは、恋に順番待ちなんてないはずなのにね〜。

「夫に好きだと連呼し、不審がられています。」

ふふふ、いっぱい言ってあげてください。
まんざらでもないはずだから!

友達の「彼」ってわけでもない、
ただ「好きな人」なんですけどもね。
よくありますね、そんなこと、ほんとに。
口に出したほうが勝ちであっても、
恋は黙ってしたいです。

そして。目の前の人に「好きだ」って言えるのは
ありがたいことですよねー。
言っちゃえ、言っちゃえ。
だんなさん、不審かもしれないけど、
言うのも言われるのもとても幸せだと思います。

好きって言葉は、もしかしたら
恋愛がはじまるときに要るんじゃなくて
「そのあと」のものなのかもしれない、
なんて思うのです。
思いは伝わってしまうものだからねー。

だから、私はバレンタインに
親しんだ恋人や家族に
あらためてチョコをあげるのも
い〜んじゃないか、と思います。

バレンタインデー前日の、ハッピーエンドな投稿でした。
なんだか縁起がいいです。
自分自身にはもちろん縁遠いイベントデーなのですが、
この雰囲気は嫌いではありません。
だってたぶん、
ぼくらの委員会に届けられる種類のエピソードが
ふだんよりもグンと増えるはずの一日ですからね。
結果はどうあれ、
がんばってください若い人たちよ。
あ、若くない人ももちろん。

仲間たちと、
そしてこれを読んでくれているみなさんにとって、
なかなかわるくない2月14日になりますように。

それでは、今度は土曜日にお会いしましょう。
恋の歌と思い出のおたより、お待ちしていますね。
‥‥そうだ、
明日なにかが起きた人は、それをぜひ。

2013-02-13-WED

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN