『セシルの週末』
 松任谷由実

 
1980年(昭和55年)
 アルバム『時のないホテル』収録曲

もう愛しかいらない、
であります。
       (意外としあわせ)

窓たたく風のそらみみでしょうか
あなたからのプロポーズは

若い友人が結婚し、
幸せそうに彼の話をする姿を見た日、
偶然『セシルの週末』を聴きました。

あ、去来。私にも来ました、去来。

曲中のセシルみたいに
やんちゃな暮らしをしていたわけでは
ありませんが、
仕事仲間と夜中まで飲んだ話等をすると、
「そんなの好かん!」と一喝する彼。
♪本気でおこる不思議な人ははじめて
…でありました。

結婚なんてピンとこなかった
当時の私(24歳)でしたが、
この人になら人生預けられそう…
しっかり守ってくれそう…
と、素直に思うことができました。

いまだに門限のある不自由な暮らし。
良いことばかりではありませんが、
歌い出しの
♪窓たたく風の…のフレーズを聴くだけで、
当時のくすぐったい気持ちに戻れます。
これぞMy恋歌です。
子供には恵まれなかったけど、
来年で銀婚式を迎えます。
♪もう愛しかいらない…であります。

(意外としあわせ)

おお、去来ですか。去来しましたか。

※去来=なにかがふいに過去の記憶に触れ、
涙がとまらなくなり会議などを中座してしまう様。
(恋歌くちずさみ委員会用語)

さて、またまた、私たち
(シェフと私ですが)の大好きな
アルバム『時のないホテル』からの一曲です。
『セシルの週末』は、このアルバムの冒頭に
入っています。

これねー、歌詞がすごくて、いいんです。
やんちゃ娘が運命の人に出会って
結婚するお話なんですけれども、
パパとママが知らない
あたらしい自分に
彼氏が変えてくれるんです。
最後の、もう愛しかいらない、ってとこで
わー、と感動が来ます。

私も、セシルほどに
やんちゃだったわけではありませんが、
親でも先生でも兄弟でもなく、
「彼」が変えてくれる自分って
たしかにありますよね?

そして、いまだに門限が?!
そして、銀婚式?!

もう、愛しかいらない。
おおきく頷くワタクシであります。

銀婚式って、結婚25周年でしょう?
そうかー、経っちゃうかー。
なんか、結婚式はともかく、
銀婚式だとか金婚式だとかって、
自分からは遠いところにあるものだと思ってたけど、
そうか、そうか、経っちゃうのか、25年とか。

変な言い方ですけど、
恋人どうしのまま、きちんと年齢を重ねていく
よい例を教えていただいたような気がしました。
そういえば、ジョン・レノンさんの若い晩年に
『Grow Old With Me』という
素敵な曲がありましたっけ。

『時のないホテル』、持ってないんだよなあ。
知ってる曲は多いんだけど。
やっぱり、ちゃんと持ってようかな。
この「恋歌くちずさみ委員会」がはじまってから、
こんなふうに「買ってなかったアルバム」を
あらためて買うことも増えました。

『時のないホテル』の1曲目ですよ!
セシルの週末。
ユーミン聴いたことないって言ったら
大学で最初にできたともだちが貸してくれたのが
このアルバム。
ほんと全曲名曲ぞろいですよ!

セシルのやんちゃぶり、
いまだったらたいへんですよ。
どうも金持ちらしいパパとママは別居中。
煙草は14歳からで、
ちょっと待っててくれれば
なんだってくすねてきちゃう、
下着が黒の娘ですよ。
そんな素行を怒る彼。
「ゆきずりでもよかったのに」
という出会い。その彼だってさ、
「あの娘とはひと晩だけさ」
なんていうようなやつ(*)。
だから二人で歩くとひそひそ陰口言われちゃうんですよ。
その娘がプロポーズされて
「もう愛しかいらない」って覚悟決めるんですよ。
ああ、たまらん!
(ちなみに『時のないホテル』には、
 遊んでた娘がカタい男との結婚前に
 逡巡するストーリーの『よそゆき顔で』という
 名曲も入っております。)

相手によって変わる、それも嬉々として変わる。
そういうのっていいじゃないですか、ね!
もうすぐ銀婚式おめでとうございます!

*この見解、ちがうと思いますよー、
 というメールをいただきました。
 「あの娘」はセシルのことで、
 そういうのが街の噂だということです。
 18歳からずっとそうじゃなく聞いてました!
 彼もヤンチャなんだと思ってた!
 そうすると「チューインガム」は
 セシルのことなんですね。なるほどー。
 メールをくださったかた、ありがとうございました。 
 (10/22追記)

(意外としあわせ)さんが、
ふわっといつの間にか結婚していたような、
そんな不思議な印象の投稿文でした。

そしてやはり印象に残るのは、「門限」の二文字。
銀婚式をむかえるご夫婦なのに門限がある。
一瞬、気の毒に思えてしまったのですが、
そういうことではないんですよね。
大切にされ、心配されている。
(意外としあわせ)というペンネームが、
ここちよい愛情の分量を物語っていると思いました。

25年、経っちゃいますよねー。
ずっと恋人のまま。
あるいは友だちのように。
いずれにしても、
長く続いている「なかよし」な方々って、
周囲までもうれしくしてくれるような気がします。
(意外としあわせ)さんの投稿にも、それを感じました。

「いつまでも仲良しこよしじゃないんだから!」
とか、大人になるといい使い方をされない言葉ですが、
ぼくは「なかよしこよし」推進派です。

それでは。
次回は水曜日にお会いしましょう。
CDも書籍も、製作は順調ですよー。

2012-10-20-SAT

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