『時間旅行』
 DREAMS COME TRUE

 
1990年(平成2年)
 アルバム『WONDER 3』収録曲

「好き」と、気持ちだけを
 つづった
 手紙を渡して。
(投稿者・ひなたぼっこ)

あなたがいれば たわいないこんな時間も
泣けてくる程 しあわせな気持ちになれる

10年ぶりに再会した高校の同級生。

彼女のいる彼でした。
気の合う友達だったはずなのに
たくさんの時間を一緒に過ごすうち
どんどん好きになってしまった私。

次第に彼も私の前で
彼女の話をすることはなくなり
毎週のようにデートや旅行と
一緒に過ごす日々。

そんな中、洋楽しか聞かない彼が
「この歌(時間旅行)知ってる?
 金環日食の歌でさ、
 この日はプロポーズする人が多いんだって」
と言ってきたんです。

深読みする私は、
「遂に彼女にプロポーズするのか‥‥」
などと考えていたら、
「一緒に過ごそう」とのお誘いが!

絶対ないとわかっていても、
どこかで期待してしまいますよね。

結果は、彼からは何もなく
一緒に金環日食を見て
いつものようにデートをしただけでしたが‥‥。

日食のあと、テラスで日向ぼっこをしながら
私の膝の上で寝る彼。

彼の頭を撫でながら
読書する私。

お互い、仕事もプライベートも
せわしない日々の中、
ゆったりと流れる、穏やかな時間。

彼といるとき、いつも思うのは
「あなたがいれば泣けるほどしあわせなのに‥‥」
それだけです。

このままでは何も変わらないし
仕事をしている身として
恋愛で深入りしてしまって傷つきたくない。
そう思っても、面と向かうと
楽しすぎて核心を言えないものです。

でもこんな日だからと覚悟してきた私は
帰りの電車を降りる瞬間
用意していた手紙を渡しました。

「どうしてほしい」ということは書けず
「好きです」とだけ書いた手紙。

閉まるドアの向こう、
ビックリした表情の彼だけ
はっきりと覚えています。

嬉しくも、悲しくもないはずなのに
ホッとしたのか
トイレに駆け込んだ瞬間
涙が止まりませんでした。

今週末、会えたとしたら
今度は面と向かって
ちゃんと気持ちを聞いてこようと思います。

(ひなたぼっこ)

あと何日かで、あの頃遠い未来だった、
金環食の日ですね。

初めて彼に会ったのは、高校1年生の夏でした。
バスケ部で、県大会に行ったときに見かけて、
生まれてはじめてひとめぼれをして、
いろいろな協力があって、
話をできるようになりました。
彼が大学合格した後、
彼も私のことを好きでいてくれていることがわかって、
隣の県の大学に進学した彼と
遠距離恋愛をスタートさせました。

それから距離が近くなったり遠くなったりしながら
おつきあいを続けてきました。
何度もダメだと思ったけど、
やっぱり離れることができなくて続いてきました。

ふたりとも自分たちの気持ちを
素直に表現できなくて、
大人ぶって我慢したりしていたときに
聞いたドリカムの曲はまっすぐすぎて、
私にはまぶしかったり、うらやましかったり。
会える日が決まるだけでうれしくて、
顔を見られるだけでうれしかった。
それをわかってほしくて、
でも直接は言えなくて
彼にこの曲が大好きだとタイトルだけ伝えました。

11年経って、ようやくふたりの気持ちが固まって、
結婚することにした途端、
彼の体に手遅れとなった癌がみつかりました。
彼は会社を辞めて、地元の病院に入院したので、
つきあってからはじめて
毎日会える環境になったけど、
それは、だんだん弱っていく彼を
見つめる日々でもあったわけで。
彼からの最後のプレゼントは指輪でした。
私が大好きだったこの曲を彼は覚えていてくれて、
ずいぶん早いけど渡しておくと言ってくれました。
この指輪をして、金環食をひとりで見上げる私を、
彼は空の上からどんな気持ちで見下ろすんだろ。

(チューリップ)

5月21日に金環日食がありましたね。
我々「ほぼ日」乗組員も
全国に散らばり、中継をいたしましたが、
恋歌くちずさみ委員会にも
金環日食にちなんで
「時間旅行」の投稿をいただいておりました。
今日はそのうち2通をご紹介しています。

1通目は、太陽のリングをいっしょに見たその日に、
次の一歩を踏み出そうとしている人。
そして、2通目は、亡くなった彼が
当時は遠い日だった金環日食について
どんな気持ちでいるんだろうと、思いを馳せる人。
(メールの最初に
 「あれから10年経って
  ようやく言葉にできるようになりました」
 と書いてくださっていました)

天体の特別な現象がもつ時間の間隔と
個々の人々がもっているちいさなものさしが
ロマンチックにクロスする感じ。
それがドリカムの歌にも現れてて、
彼や彼女がそれをちゃんと憶えてくれてて、
いいなぁ、と思いました。

ところで私も、中継現場で
金環日食を見ることができました。
生で見た太陽のリングは
まさに結婚指輪のイメージでしたよ!
プロポーズした人たち、多かったのかな?

強いきもちの行き場がないときって
せつない気持ちと甘い感情がないまぜになって、
けっこう、つらいですよね。
(ひなたぼっこ)さんは、
ちゃんと思いを伝えたけれど、
返事をまだ聞いていない状態で、
(チューリップ)さんは、
その気持ちを伝えたい彼は、
とっても遠いところに行ってしまっている。
どちらも、流れるのは「時間旅行」という曲。
どちらも、この曲がそっと背中を押してくれている。
そういえばネットで、
金環日食の写真を指輪に見立てた写真が
話題になってましたね。
「金環日食 リング」で画像検索してみてください。

ところでぼくはDREAMS COME TRUEの楽曲に
これまでまったくふれずに来たのですけれど、
20年も前につくられたっていうことにびっくり!

そう、なぜだかぼくもたまたま、
ドリカムを通ってこなかったのです。
金環食のことを歌った曲があることも、
先日の盛り上がりのときに初めて知りました。
この曲をずっと好きだった人は、
この前の金環食、感動したでしょうねー。

ふたつの投稿は、
どちらも辛さを含んだ内容なのに、
なんでだろう?
素直なあたたかさや、おおらかさを感じました。
「太陽」がテーマのお話だからでしょうか。

いろいろあります‥‥
ほんとうに個々人にいろいろな出来事があります。
スガノさんが言うように、
たくさんの個人を包むようにクロスする
大きな天体の不思議な現象、
ロマンティックです。

しかしそれにしても、
全国的には金環食を
「指輪」に見立てて盛り上がっていたのに、
ぼくらの中継はまったく、
恋の話題に触れていなかったですねぇ。

あんまり、旬な話題とか、
季節の行事とかに左右されず、
独自のペースで進行している
このコーナーですが、
「金環日食」にまつわるこの2通は、
記憶が新しいうちに掲載したほうが
いいかなあと思って載せました。

まだ真新しい恋の思い出と、
遠いところにある恋の思い出と。

どちらも同じ『時間旅行』という歌が
テーマ曲のように流れているというのが
すごいことだなあと思いました。

細かいことで恐縮ですが、
1通目の彼氏の、
つき合ってない人の膝枕で眠るというのは
軽い驚きがありました。
「それ、どういう関係?」みたいな。

また、2通目の最後の、
「この指輪をして、
 金環食をひとりで見上げる私を、
 彼は空の上から
 どんな気持ちで見下ろすんだろ。」
という、結びの文章が、悲しくて、
でもどこか清々しくて、胸に残りました。

みなさまからの投稿、
まだまだお待ちしています。

 

2012-06-16-SAT

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