Ｍｙ恋歌ポイント

　ソーダ水の中を　貨物船がとおる
　小さなアワも恋のように消えていった

中学３年生の夏、ちょっと気にいっていた
クラスメートの男の子から、暑中見舞いが届きました。
わざわざ封筒に入ってて、
ちょっと意味深な写真のカードに、
１学期に彼の手助けをしたことのお礼が書かれてました。
その返事にと、ファンシーショップで買った
葉書のイラストが、
このソーダ水の中を通る貨物船でした。
私もたぶん、ありきたりのことを書いて
返したと思います。
彼がクラスで一番の人気者の
女の子のことが好きなのも知ってましたし。

夏休みが開けて、２学期が始まった時、
なぜか普通に話すことができず。
お互い気にしてるのに、ちょっと目が合っては、
そらしてしまう日々。
意識すればするほど、
なにを言っていいかわからなくなってしまったり。
何週間も経ったとき、意を決して、
カードありがとうと言えた時の、
彼のホッとして笑った顔を覚えています。

次の年、違う高校に入った彼から映画に誘われました。
私にとってのファーストデートでした。
でもお互いにどう思ってるか伝えることもなく、
それっきりになってしまいました。
あれはなんだったんだろうって思うけど、
泡のように消えてしまった淡い気持ちと、
ユーミンの歌詞を本当にわかるには
あまりに幼かったころを思い出します。

きゅんきゅーん！
淡い恋、ソーダ水の泡のような恋。
さわやかーっ！
中３の彼がくれた
「わざわざ封筒に入ってて
　ちょっと意味深な写真のカード」
って、どんな図案だったんだろう？
パリの街角の恋人たちとか？
そして（キッキ）さんも、
贈ったカードの図柄を
おぼえているんだ。感動‥‥。

この曲は荒井由実（のちの松任谷由実）のアルバム
『MISSLIM』（ミスリム）のなかの一曲です。
「瞳を閉じて」「やさしさに包まれたなら」
「魔法の鏡」「たぶんあなたはむかえに来ない」
「私のフランソワーズ」などなど
名曲ぞろいのこのアルバムのなかで、
シングル・カットされていないこの
「海を見ていた午後」も、たいへん有名。
ぼくもアルバム持ってなかったはずなのに、
なぜか歌えます。

ねぇ、きゅんきゅんきますねー。

手紙のやりとりをしてからしばらく
意識し合ってぎこちなくなるあたりが、
とくにいいなぁ。
ちょっと目が合ってはそらしてしまう日々‥‥。
意を決して言った、「カードありがとう」。
それはそれはものすごい、
「きゅーーん」だったんでしょうねぇ。

そして、映画館でファーストデート。
この、「ファーストデート」というのもまた、
重要なキーワード。

あなたのファーストデートはどんな場所でした？
言ってしまえば、ぼくは神社でした。

神社ですか。渋い。初詣かな？
私は、ファーストデートの場所は忘れたけど、
最後にホットケーキを食べに行ったことだけ
とても鮮明に‥‥‥。

「なんだったのかな？」的な淡い思いって、
自分で忘れちゃってる分も含めて
じつはすごくあるんでしょうね。
それが、あるアイテムで急に蘇ったりします。
（ときには恋歌だったり）

中３の夏から高校生にかけての
（キッキ）さんの思い出の情景、
すばらしいです。
あまずっぱさがわぁっと弾けて、いいなぁ。
彼に会いたくなりますね。

山手のドルフィン、行きましたよー。
別の人とのファーストデートで。
三浦岬は見えなかったけど。

個人的に、この投稿の
クライマックスはやっぱり、
「彼のホッとして笑った顔」だなぁ。

愛の告白という、
やむにやまれぬ一大決心のみならず、
本来、そこへと続いていくべき
一連のアプローチを行動に移すにおいて、
若者たちが恐怖するのは、とにかく、
「そういうアプローチをしたがばかりに
　いままでのたのしい関係が台無しになる」
ということだと思うんです。

ですから、恋に落ちた若者は、
「やむにやまれぬ接近」と、
「それまでの関係を失うリスク」のあいだで
深夜に身もだえるのです。
ある世代においては、
なんらかの啓示を求めるがごとく、
好きな「恋歌」を異常な真剣さで
聴いたりするのです。

たぶん、その彼は、
ほかに好きな女の子がいたとしても、
このときはこのときで、きっと、真剣に
アプローチしたんだろうなあと思います。
ひょっとしたら、自分でも、
「あれ？　好きなのかな？」って
つかみきれてなかったかもしれない。

その、いろいろと混乱したアプローチが
きちんと「ありがとう」と受け入れられて、
ほんとに彼は「ホッとした」んでしょうね。

読み終えて、ほんとに
「いいなあ」と思えた投稿でした。
どうもありがとうございました。