いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

何度も何度も読みました。
涙ってこんなに出るんだ、と思いました。
(投稿者・春海)

『Remember Me』
 歌/TUBE

 1988年(昭和63年)

My恋歌ポイント

 Remenber Me 忘れないでくれ
 どこにいても 想い出の日々を

 誰にも君を 譲れないよ

その夏、私は19歳で、2歳年上の男性と恋に落ちました。
とても真面目で優しくて、
いっしょにいて安らげて、大好きでした。
これはいつもデートでドライブに連れていってくれた彼が、
私がこの曲が好きだからという理由で
ずっとかけていてくれた曲です。
でもつきあって2ヵ月後、
東京と山形との遠距離恋愛になってしまいました。
毎晩毎晩、私の電話を待っていてくれた彼。
離れて1ヶ月後には、私の両親に会いにきてくれました。
「娘さんとの将来を考えています」と話すために。
子どものころ、家庭に恵まれなかった彼は、
早く自分の家庭を持ちたがっていました。
私も彼と持つ家庭を思い描いて、
そうか、このひとと結婚するんだなあ‥‥と考えたりして。
でも19歳の私はほんとうにコドモでした。
別の男性に気持ちを移したのは、
彼が会いにきてくれてからすぐのことでした。
さびしくてたまらなかったんですよねえ‥‥。
会いたいと思ったときにすぐ会える、
そういう男性がよかったんですね。
他に好きなひとができたから、
そう電話で伝えたときのやり取りを、
23年経った今でもはっきりと覚えています。
そのあと、彼はしばらく消息を絶ってしまいました。
彼の友達から
「いなくなったんだけど知ってる?」と聞かれ、
なにも言えずに泣きました。
しばらくして彼から届いた手紙には、
「今、北海道にいます。まだ気持ちの整理ができません。
 今でも俺は君を心から愛している。
 君を誰にも譲りたくない。
 でも君が望んだことだから、もう俺は君を忘れる」
と書いてありました。何度も何度も読みました。
涙ってこんなに出るんだ、と思いました。

それから気持ちを移した男性と、
ちょっとの間おつきあいしたのですが、
「やっぱ友達でいたほうがいいと思う」
とあっさり振られ、そのときの彼の痛みを
身をもって知ることになりました。
それきり、彼とは会うことはなかったんですが‥‥。

別れから2年後、上野駅で、彼の姿を見かけました。
私は東北新幹線の上りのホーム、
彼は上越新幹線の下りのホーム。
2年ぶりに見た彼は少し痩せていて、
スーツ姿でアタッシュケースを持っていて‥‥。
声をかけようかどうか迷っている間に、
彼は私に気づかず去ってしまいました。
あのとき、私に気づいてくれなくてよかったと、
今はそう思います。
あの手紙で言われたように、
私のことをきれいさっぱり忘れてくれていれば、
それでいいのです。

一瞬で貫かれたように好きになったり、
大好きだったのに心が変わったり。
もう、このコーナーをはじめてから
ずいぶん経ちますから、
いまさら言うのもなんなんですけど、
まこと、恋というものは、不思議です。

このお話では、やはり、
彼の一途さと激しさが印象的です。

おかしな言い方になりますが、
きっと、この恋が、終わってから
23年経ってるからいいんでしょうね。
これが先月の話だったら、
「ほんとは好きなんでしょ?」みたいな
ぐずぐずした話になってしまうに
決まってるから。

激しい恋がきちんと終わっていること。
このコーナーで読む恋の話の独特の距離感を
ぼくは、いいなあと思います。

それはそうと、たいへん勝手ながら、
ここにTUBEの歌が
登場するとは思わなかった。

名投稿がこんなに続いていいのだろうか、
なんなんでしょう、この冬休み。
泣いてばっかりです。

私はTUBEのこの歌を知らなかったのですが
当時(春海)さんがお好きだった歌が
あとで追いかけるように
彼の歌になっていくのが
みごとでした。

自分が好きだった歌がそのまま
相手のほうに移ってしまって、
濃くなっていくことってありますよね‥‥。

かなわぬ恋の落とし前もつけられず、
失った恋を仕舞う場所もわからない。
ほんとうに「時間」以外に
自分にやさしくしてくれるものはない、
そんな気持ちになること、
‥‥あったなあ、
と、そんなことを
思い出してしまったじゃないですか。
ああ。

Remember Meという曲は
知らなかったのですが
TUBEファンのあいだでは
名曲と名高いものなのだそうですね。
なんとなく竹内まりやの
「駅」的なものを想像したんだけど、
きっとTUBEだからちがうよね?

19歳の夏に経験した、
短いけれど熱くて深い恋の思い出。
そのとき流れていた音楽ならば、
それは一生の曲になりますよね。

相手の男性の一途さに、グッときました。
思うに、その男性、(春海)さんのことを
きれいさっぱり忘れてはいないと思います。
ずーーっと、(春海)さんを引きずっていたはず。

そして、23年。
引きずることについては、もう大丈夫でしょう。
でも、忘れてはいないと思います。
彼の胸を締め付けていた辛い記憶のかたまりは、
磨き上げられたピカピカの玉みたいになって
たいせつにしまわれているのではないかと‥‥。
大小の違いはあれど、
そういう玉をみんなが持ってるのかもしれませんね。

‥‥って、なんだかきれいすぎるまとめ?
でも、このコンテンツ、
ちょっと恥ずかしい感じのセリフを
ついつい書いてしまうんですよねー。

新年・恋歌くちずさみ特集は、まだ続きます。
あしたの更新もおたのしみにー。

2012-01-06-FRI

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