Drama
「小林薫『俺はシブイか?!』対談。

【その3・パン屋をつくろうと思う。】

(※生中継ライブのごく一部をお送りしています)

糸井 レコードは、ベストテンが必ず売れるけど、
50番目の曲にも、いいのがある。
大事にしている客が買うものは50番目だけど、
それはニュースにもならないよね。
小林 ありがたいことですね。
糸井 何が?
小林 ぼく、50番目の役者ですから。
糸井 俺も、そうなんですよ。
でも、その50番目にだってお客さんがいて、
大事に見てくれているはずなのに、
ニュースとしては、1番のものしか見えない。
ネットだったら、自分がいいと思えれば、
「1番よりいいかもしれない」と言えるじゃない?

ぼくが夢中になってた綾戸千絵さんは、
前に、ライブハウスで手売りで売ってたんだよ。
それだけで3万枚売った。
世の中からしたら、
3万枚ってたいしたことがないかもしれない。
でも、手売りで3万枚は、すごいよね。
十分に、食っていけるんです。
それに綾戸さんは、歌がうまいから、
レコーディングでも仕掛けがいらないんですよ。
間違わないから、1回で録音できる。
ベストテンってなったら、
話が出てこないひとなんだけどね。
小林 何をやるかっていうのは、大きいと思います。
ぼくがやろうとしているのは、たぶん、
パン屋をもう一度つくるということなんです。

工場で生地を大量につくられたものを仕入れて
それを冷凍して焼いてつくっているパン屋が、
実は「手作り」というお店でも、すごく多いの。
ほんとうに手作りでやっているパン職人は、
お金とか手がかかるから、面倒がられる。
こないだ、ひとりの職人が、
大きなホテルから、リストラされたんです。
「もうパン屋なんてやりたくない」
という風になっちゃったんだって。
それでも、「やってみようよ」と、
説得したひとがいたんです。
だから、その職人さんは、
別の場所の中野でもう一度、
手作りパン屋をやりはじめた。

この時に職人さんを説得したひとって、
すごくぼくらに近いと思う。
ぼくは、いいひとと芝居やりたい。
だから、アングラだとか新劇だとかいう
垣根を超えた出会いで芝居をできれば、
けっこうおもしろくなると思うんですよ。
まったく役者じゃないひとも入れたり。
そうやって何かやりたいなと思います。
糸井 それ、俺もおんなじ。
ぼくもリストラされる番だと思ったんですよ。
小林 そんなことはないでしょう。
糸井 みんな「そんなことない」というけど、
でも実は、みんな「そう」なんですよ。
要らなくなっていく雰囲気があって。
作家だって、売れなくなってからのほうが
いいものを書いていたりしますよね。
なまじ売れちゃったひとが、
期待されているうちに書けなくなる時もあるし。
小林 作家は特にそうだね。
川端康成なんて、
最後までふわーっと書いてたよね。
真空飛んでるようなじいさん、いいね。
ふすまをパッて開けたら飛んでるみたいな。
糸井 さっきのパン屋さんも、中野でなら食えている。
それなりに仕事があってまわっているなら、
50番目でも、いいじゃないですか。
ぼくはそういうのに憧れるんですよ。
全国にひろげることは、できないけど。

(つづく)

2000-05-13-SAT

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