小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の参拾八・・・・検査

小学生時代の思い出・・・。

それは胸をハグハグさせながら
憧れの女の子との順番を待ったフォークダンスであり、
泥だらけのグラブで
夕暮れまで白球を追った草野球であり、
枕投げでふすまを破り
1時間正座させられた修学旅行である。
だが、私の心に刻み込まれた思い出の4番打者。
それはやはり、検便であろう。

小林 俺が小学生の頃は、
ステンレスの容器に便を詰めて持っていったもんや。
朝、保健係のヤツが集めて回るんやが、
フタがきちんとしまっていなくて
便が大量にもれてしまったヤツがいてな。
それ以来そいつは『大便大使』という
たわけたあだ名をつけられていたな。
北小岩 強いのか弱いのかよくわからないあだ名ですね。
『マグマ大使VS大便大使』の戦いなんて、
興味深いですね。
小林 それにしてもな、
しばらくステンレス容器の時代が続いたが、
俺はその後は容器が
でかくなっていくと踏んでいたんや。
その時代の産業構造が
スケールメリットを追求していたからや。
北小岩 先生は小学生の頃から
そんなに難しいことを考えていたのですか!
小林 うむ。
例えば細長タイプの懐中電灯から電池を出してみい。
そこの空間はちょうど
大便が丸ごと一本入る大きさや。
懐中電灯型検便容器。
まず、そこいらへんに
進化するんじゃないかと考えた。
北小岩 なるほど!
小林 それからは大きさにプラスして、
自分をさらけ出す時代が来ると読んだ。
一升瓶を容器にしてみんなにも見てもらう。
その次に来るのは、メガスケールの時代や。
一斗樽に詰めた便を各自が
肩にかついで持ってくるようになるんじゃないかと。
北小岩 樽にあふれんばかりの大便を詰め込む。
まさに日本男児ですね。
検便をかついだ侍たちです。

小林 だがな、俺の予想に反して
『ポキール』になってしまった。
あのセロハンをケツの穴に
ぴたっとくっつけるヤツや。
北小岩 無念でしたね。
ところで私の父などは
便をマッチ箱に入れて持っていったらしいのですが、
もっと昔の人はどうしていたのでしょうか?
小林 お前もなかなか鋭くなったな。
その質問には即答できん。
これは検便さんを訪ねてうかがうしかないで。

検便さん・・・。
それは日本の検便史を知りつくした
ぎょう虫博士である。
二人はさっそく
町はずれにある検便さんの家の門を叩いた。

検便さん そうですね。
平安時代の頃はもっとぎょう虫検査も
風流だったんですよ。
いくつかの例外はありましたが。
便を容器で持ち歩かずに、
検査を生業とする人に診てもらっていたのです。
小林 それはどういう人ですか。
検便さん その人たちは『呼びかけ師』と呼ばれていました。
人のお尻の穴に口をつけて
中にいるぎょう虫に呼びかけるのです。
いろいろな流派がありますが、すべて世襲です。
泣き落とし派。和歌を詠む派。脅しをかける派。
まさに百花繚乱です。
そうだ、今日は40代目を襲名した
穴貫之さんと屁村便左ェ門さんが
遊びに来ていますので、
穴さんに実演していただきましょうか。
穴貫之 初めまして。穴貫之と申します。
さっそくですが北小岩さん。
パンツを脱いでこちらにお尻を向けてください。
はい、では詠みますよ!
『深穴の 臭気ににごる 肛門の
 君が心は 我に匂わん〜』

穴さんがお尻の穴の中に向かって美声で和歌を詠むと、
ぎょう虫が頬を赤らめ顔を出した。



小林 見事や、穴さん!
それでは俺もやってもらおうかな。
今度は便左ェ門さん。お手前を拝見いたします。
検便さん そっ、それは!
小林 何や、検便さん。
検便さん なっ、何でもありません!
便左ェ門 では先生、尻の力を抜いてください。いきますよ。
ぎょう虫、覚悟!うりゃぁ〜!!!!

検便さんは本人の手前、口に出せなかったのだが、
便左ェ門さんは武闘派の呼びかけ師だったのだ。
いきなり小林先生のケツの穴を広げると、
拳を回転させてグイグイ進ませていった。

小林 やっ、止めてくれ!
それはぎょう虫検査じゃなくて、
フィスト・ファッ・・・く〜
便左ェ門 ぎょう虫とりゃぁ〜!!!

ビリビリビリッ。

小林 ケッ、ケツの穴が〜〜〜!!!!!

小林先生は3分後に失神。
10分後には垂れ流した便とともに
即死したぎょう虫がたくさん出てきたそうである。
だが、先生は自身のぎょう虫撲滅とひきかえに、
永久的に痔を患ってしまった。
みなさまもぎょう虫検査を
呼びかけ師に依頼する時には、
くれぐれも流派をお確かめの上どうぞ。

2000-11-16-THU
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