小林秀雄、あはれといふこと。

その参・・・「仏蘭西」

今、私はフランスのトゥールーズにいる。
仕事を兼ねてワールドカップの応援に来ているのである。

「日本VSアルゼンチン」

日本で毎日報道されているように、入場券が圧倒的に
不足している。旅行会社の人から聞いたのであるが、
数日前、某旅行会社の社員が
1千万円入ったアタッシュケースを抱え、
おそらくカテゴリーワン(一番高い席)の
チケットだと思うが、
9枚を1千万で買ったという話である。

スタジアムに向かう道では、チケットを
持っていない人が、ダフ屋から買おうとして
行ったり来たりしている。
もちろんダフ屋はフランスでも違法行為なのであるが、
警官は警備はしていても
積極的に逮捕しようとはしていない。
ダフ屋らしき人に「券、持ってる?いくら?」と聞くと
6千フランと答えた。
今日現在1フランは約27円なので
16万2千円ということになる。
(私が来る前や試合開始後ハーフタイムあたりには
2千フランくらいまで落ちた時があったらしいが)

それはさておき私たちは4人で行動しているのだが、
2枚しかチケットが手に入らなかった。
もうすぐキックオフ。
4人とも意識的にそれに触れなかったのだが、
そろそろ事をはっきりさせなければならなかった。
思わず最年長のOさんが口火を切った。
「ジャンケンで決めようか」
残りの3人が真剣な面持ちでうなずく。
「ジャンケンポン」
まぬけな声がトゥールーズに響く。

1 怒りのチョキの図

3人は固まったままのグーを突き出した。
なぜかチョキをだしてしまったOさんが
ウオーと雄叫びをあげてそのまま地面にしゃがみこんだ。
「いいよみんな 、行ってきなよ。」
やさしい口調ではあるが、
Oさんはチョキの形の指で地面のアリを突き指するほど
力を入れて潰しているのを私は見逃さなかった。
次のジャンケンで一番若いSくんが負けた。
Sくんがドライフラワーのように
しおれていくのがわかる。
こういう場合、中途半端ななぐさめの言葉など
かけてはならない。
チケットを受け取った私とHさんは
残された二人に何の言葉もかけずに、
スタジアムへ走った。一度も振り返らなかった。
いや、振り返れなかったのである。

ジリリーン。ジリリリーン。

私は朦朧とした意識の中で受話器を取る。

「こんにちは、小林先生」

北小岩君から国際電話だ。時計をみるとまだ午前4時である。
北小岩君は地球に時差があることをよく知らない。

北小岩「先生、W杯にはモロッコも出てますよね」

先生「ああ」

「モロッコで性転換をする方が
いらっしゃいますが、
切り落としたおちんちんは
どうするんですか。
わけていただけませんか?」

先生「あかんな。北小岩。
   モロッコでは何万本ものちんちん集めてな、
   海に沈めとくんや」

弟子「浮かんできてマグロが食べたりしないんですか」

2 ナマコ図

先生「浮かんでこんようにな、
   金でできた玉を結びつけとくんや」

弟子「美しい風景ですね」

先生「おう。一年もするといいナマコができあがる。
   酢漬けにして食べるとコリッとしてうまいで」

弟子「先生は食べたことあるんですか」

先生「まだや」

弟子「ありがとうございました」

先生「うむ」

全く関係ないことだが、
ホテルのロビーに加茂前監督がいた。

1998-06-20- FRI

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