小林秀雄、あはれといふこと。

その弍拾伍・・・謎

弟子「先生にも青春時代はあったのですか?」

小林「アホぬかすな。
   立派に鎌首をもたげた青春があったわい」。

弟子「ぜひ、その一端をお聞かせください」。

小林「そやなあ、俺は横浜育ちやから
   青春と海は切り離せへんなあ。
   横浜の中学生にとっちゃ、デートといえば
   山下公園に海を見に行ったり、湘南で戯れたり、
   鎌倉でハイキングしたりすることやったなあ」。

弟子「ぜひ先生の青春の道程をたどらせてください」。

小林「まあ天気もいいことやし、
   鎌倉の山道でも歩きにいくか」。

弟子の北小岩くんと横須賀線に乗る。
北鎌倉駅でおり、ハイキングコースをてくてく歩く。

小林「山の空気は、気持ちええなあ」。

弟子「そうですね」。

小林「腹が減ったなあ。そろそろ飯にしようか」。

いきなり、北小岩くんが風呂敷からブラジャーを出した。
よく見ると、ブラジャーの中にご飯がつめてある。

小林「なんや、それは?」

弟子「私が考案しました『ブラジャーおにぎり』です。
   これをお皿に出して、箸も手も使わずに食べると
   おいしいんですよ。はい」。

ブラジャーおにぎりの図
色っぽい形をしたおにぎりがふたつ、皿に並んだ。
てっぺんには、ほどよい大きさの小梅がのっている。

小林「ところでこのブラジャーはどうした?」

弟子「先生の書斎の机にのっていたものを
   拝借いたしました。
   この大きさが先生のお好みかと思いまして」。

誇らしげに北小岩くんが続ける。

弟子「肉じゃがとか芋のにっころがしとかが
   おふくろの味といわれていますが、
   私は違うと思います。
   母のブラジャーでつくった『ブラジャーおにぎり』が
   真のおふくろの味だと思います」

まだまだ甘いと思っていた我が弟子だが、
急激に成長をとげている。
確かに母のおっぱいと同じ大きさの
『ブラジャーおにぎり』は、おふくろの味だ。
私はブラジャーおにぎりを口と舌だけを使って食べた。

小林「そろそろ、行こうか」

山を下っていくと、小さなトンネルがあった。
そのトンネルの壁には、奇妙な絵が描かれている。

謎の壁画
弟子「先生! これは何でしょうか!」

小林「むむむっ! これは謎の壁画や。
   何か深いメッセージを発しているに違いない。
   矢印があるで。行ってみようや!」

矢印の方角に進むと、再び木に謎の絵が描かれ矢印がある。
草を分け入りしばらく歩くとまた謎の絵と矢印が。
それを何度か繰り返すと、巨大な矢印が出現した。

弟子「あっ、エロ本が置いてあります」。

小林「ほんまや! これはかなりの上物やで」。

グッと足を踏み込み、エロ本に近づいたその時だった。

「うお〜〜〜!!!!」
ふたりの体は奈落に落ちていった。

弟子「先生、落とし穴です!穴の中には、
   犬の糞がたっぷり入っています」

小林「まだ、出したてほやほややな。
   もしかしたら、人糞かもしれん。
   いったい誰が何の目的で? 
   う〜む、謎は深まるばかりや」。

大の大人がふたり、エロ本につられ
落とし穴にはまっただけの話だ。
謎などではなく、単なる恥である。

1999-02-03-WED

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