KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百九拾八・・・鞄

「今日も何もやることがないな」

「そうでございますね」

「大金を使わずに楽しめることはないんか」

「確か今日は
 『お祭りのない日のお祭り』が
 開かれておりますね」

「そやな。
 ちょいと店を冷やかしに行ってみるか」

先生の町では、
不定期にそのような訳のわからないお祭りが
開催され、道端に数軒露店が出るのだった。

北小岩 「前回わたくしは
 行きそびれてしまいましたが、
 どのようなお店が
 出ていたのでございますか」
小林 「そやな。
 まず、干物屋が出とったな」
北小岩 「それはおいしそうでございますね」
小林 「ある意味おいしそうといえばいえるが、
 そうでもないともいえるな」
北小岩 「先生にしては歯切れが悪いですね。
 どういうことでございましょうか」
小林 「干物と言っても、アジやイワシやない。
 そこにあったのは、
 パンティやブラジャーの干物や」
北小岩 「なんと!」
小林 「代表的な作り方は、
 使用済みのものを、
 天日で何日も乾燥させるんや」
北小岩 「単に下着が干してある風景と、
 かわらない気もいたしますが」
小林 「スケベな奴に盗まれる危険が
 高まるというこっちゃ」

聞くに値しない話はこれぐらいにして、
先に進めよう。
露店の前へ行くと、顔を上気させた若い女性が。

北小岩 「鞄の取っ手を持っているようですが、
 なぜ上気なのでしょう」

店のおやじに聞いてみると。

店の
おやじ
「この取っ手は
 ちんちん型になっていて、
 空気を入れて自由に
 長さと太さをかえられるんだよ。
 ナンパする時は、
 自分のちんちんと同じ長さ、
 太さにして女の子に握らせ、
 納得したらデートするというのが
 暗黙のルールさ」
北小岩 「・・・」
小林 「こっちの鞄は、
 腹のところが
 キャッチャーミットになっとるな。
 男はいきなりキャッチボールが
 したくなる時があるから、
 これは使えるな。
 んっ? なんじゃこりゃ?
 取っ手の部分が伸びるようになっとる
 鞄がある」

店の
おやじ
「ひったくり防止のためさ。
 俺が取っ手を持っているから、
 鞄を強引に持って走ってみな」

何のことやら理解できなかったが、
先生は鷲づかみにすると全力疾走した。

小林 「取っ手がゴムのように
 何メートルも伸びるな」
店の
おやじ
「もっと遠くまで!」

10メートルほど離れただろうか。
突然おやじが取っ手を離した。

グォーン!

取っ手の内側についた金色の砲丸が、
先生の睾丸を目指してうなりをあげた。

小林 「やばい!」

キーン!

ドタッ

避ける間もなく、見事に睾丸を直撃。
先生は気を失い、何もやることがない1日は
静かに終わった。
 

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2012-05-20-SUN

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