KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百九拾六・・・お玉様

パタパタ

「ごほんごほん」

洒落を言うつもりはないのだが、
先生の御本でごほんごほんしているのは、
弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「先生と言えば、
 言わずと知れた病気持ち。
 いえ、蔵書持ちでございます。
 古今東西のあらゆるエロ本、
 そして、古今南北のエロ本。
 イチモツは貧相ですが、
 エロ本のコレクションはご立派です」

パタパタ

北小岩 「隅々までお掃除しなくては」

ググッ

どわ〜〜〜

北小岩 「うわ〜〜〜!」

弟子は崩れたエロ本の下敷きになった。

小林 「帰ったで〜〜〜」

シーン

小林 「おかしい。
 あれほどの暇人が、
 呼びかけに答えんはずがない。
 もしや、
 一人でいやらしいことをしているのでは」

ドドドド

小林 「んっ?
 なんやお前、
 エロ本の山の中で
 エロ本を読んどるのか。
 真正のすけべやな」
北小岩 「そっ、そうではございません。
 今わたくしは、
 窒息死しそうなのでございます。
 しかし、エロ本の山につぶされて
 この世を去ったとなれば、
 父、母に対して申し訳が立ちません。
 ですので、
 何とか生きながらえようと
 しているところなのです」
小林 「遭難した弟子を助けるのは、
 師の義務や。
 待っとれ」

先生はエロ本雪崩救助用の
巨大なスコップ(先っぽがげんこつの形で、
人差し指と中指の間から親指が出ている)を
どこからか運んできて、
それを梃子にし弟子を救った。
 
北小岩 「ふう。
 助かりました。
 あれ?
 何かを手につかんでおります。
 『お玉様』という本です。
 なになに、
 五代将軍綱吉の生類憐みの令では、
 お犬様が有名ですが、
 実はお玉様もありました」
小林 「そやな。
 あまり知られとらんことやが、
 犬以上に金玉が大切にされていたんや」
北小岩 「そうなのでございますか」
小林 「雛壇をつくり、
 赤いじゅうたんを敷き、
 その上に金玉を載せるようにしていた。
 傷つけるもの、
 馬鹿にするものがあったら、
 お裁きにより
 事と次第によっては生命にかかわった」

北小岩 「今は、ややもすれば
 ぶらぶらしている怠け者のように
 思われている節もありますが、
 そこまでお偉い方だったのでございますね。
 持ち主も、敬われたのでございましょう」
小林 「いや、それはまったく別や。
 偉いのは、あくまでも金玉だけや。
 持ち主であっても、
 金玉を手荒にあつかったり、
 イカ臭いままにしとったら、
 木馬責めなどの拷問が待っていた」
北小岩 「木馬責めでございますか・・・。
 自分の一部分だけが
 尊重されるというのは、
 それはそれで辛いものかもしれませんね」

歴史では、
表に出ているものはほんの一部であり、
隠されてしまったことの方がはるかに多い。
お玉様は、果たして明るみに出た方がよいのか。
それは、微妙なところである。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2012-05-06-SUN

BACK
戻る