KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百八拾六・・・人

「わたくしも、
 修行に出立せねばならぬ時かもしれません」

腕を組んだついでに、
意味もなく自分の乳首を揉んでいるのは、
弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「しかし、僧でもないわたくしに
 どのような修行が・・・。
 そうでございます。
 粗大ごみ広場に、ボロボロの三輪車が
 廃棄されておりました。
 それを逆に漕いで、
 バックで隣の隣の隣の隣町まで行って、
 図書館で本を借りてくるのは
 いかがでございましょうか」

弟子は広場に向かった。

北小岩 「それにしても、
 人はいろいろなモノを
 つくり続けるのでございますね。
 ここにございますのは、
 エレクトリック・コケシ・ドールですね」

スイッチを入れると、微妙に反応した気もするが、
それは気のせいであろう。

北小岩 「わたくしの修行の友がございました」

銀色のマットとスケベ椅子に挟まって、
おんぼろ三輪車はなさけない顔をのぞかせていた。

ぎぎぎぎ

北小岩 「ぎりぎり回るようです。
 これから長い旅が
 始まるわけでございます」

ぎ〜こ〜 ぎ〜こ〜

北小岩 「後ろ向きな男の名を
 欲しいままにしております
 わたくしでも、
 バック行進は難儀でございます」

横断歩道で往生し、
高級車に乗ったオヤジから
赤まむしドリンクをかけられたり、
大型犬の巨大な糞を踏み抜いたりしながら、
坂を下れば図書館という地点まで追い込んだ。

北小岩 「急坂です。
 油断すると危険でございます。
 足に力を込めて、ゆっくりゆっくり。
 あっ!」

ガラガラガラガラ

すぐに油断してしまった。

ビューン ドン

「何してんのよ!」

北小岩 「申し訳ございません!」

坂での転倒は免れたのだが、
そのまま平地をバック走行し、
佇んでいた女性の秘所に
後頭部がめり込む形で止まったのだ。

「ド腐れドスケベ野郎!」

ドゴッ ドタッ

電光石火の回し蹴りが後頭部をとらえ、
半刻ほど夢の中を彷徨った。

北小岩 「そうでございます。
 図書館に行かねば」

弟子は著作の大海から、
『この町の人図鑑』を借り、再び三輪車に戻った。

北小岩 「不思議な本でございます。
 この町の名物人が
 紹介されているのですが、
 『フンコロガシ人』などというお方が、
 本当にいらっしゃるのでしょうか」

ゴロンゴロン

「どけどけどけ〜〜〜い!」

北小岩 「うわっ!
 本当にいらっしゃいました」

褌一丁の益荒男が、
運動会の玉ころがし競争のように、
巨大な糞を転がしてきたのだ。

北小岩 「では69ページにある、
 尺取虫人と蜜壺蟻人も・・・。
 わっ!」

電信柱に小便をかけている男たちが二人。
一人のチンチンは尺取虫のように動き、
もう一人の玉は異常にでかく、
蜜壺蟻のように蜜がたまっている気配なのだ。
 
弟子が修行の旅で得たものは、
想像以上に大きかったようである。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2012-02-26-SUN

BACK
戻る